産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト番組「聴く婦人科診察室」。宋さんとLEEweb編集長・畑江が婦人科系疾患、生理、セックスレス、更年期、女性を取り巻く社会問題などなど、女性の心身の健康について時に赤裸々に、時に為になるトークを繰り広げます。毎週月曜日18時更新です。今回は経口投与の人工妊娠中絶薬について。厚生労働省によると「通常の100倍を超える大量のパブリックコメントの分析が間に合わなかった」として、去る2023年3月24日に予定されていた審議が当日になって異例の見送りになりました。宋さんに「飲む人工妊娠中絶薬」のメリット・デメリットついて解説していただきました。
※本番組の収録は、厚生労働省の審議見送り前の2023年3月上旬に行われました
宋美玄さんの「聴く婦人科診察室」#91
今週のよりぬき
- 経口人工妊娠中絶薬と、緊急避妊薬を混同している人が少なくない。別物です!
- 日本では現時点では人工妊娠中絶は吸引、掻爬など、機械的な操作が必要
- 経口人工妊娠中絶薬は海外では承認されている国が少なくないが、必ずしも「夢の薬」ではない
- 「痛みもなくスッと中絶できると思ってる人がいるけど、痛みは伴います。24時間経って胎児が降りて来なければ、中絶手術に切り替える必要があります」と宋さん
- 現状の人工妊娠中絶手術は街のクリニック等でも可能だが、経口人工妊娠中絶薬についてはどこまでクリニックで対応できるか?という問題も出てくる
- 「費用面も問題。人工妊娠中絶手術は、東京では今ちょっと価格競争気味なので7万円程度で可能。地域によってはもっと高く、麻酔代は別というケースもありますが。一方、人工妊娠中絶薬は薬剤の原価は安いけど、承認まで時間かかるとそれまでの費用を回収するため製薬会社が高く設定せざるを得なくなります」と宋さん
- 人工妊娠中絶は、身体の自己決定権(セクシャルリプロダクティブヘルス・ライツ)にも関わる。そもそも人工妊娠中絶を好きで行う人はいない。中絶方法を選べないばかりに、ハードルが上がるのは問題である
- 「人工妊娠中絶には配偶者同意の問題もあります。自分の身体なのに配偶者の同意が必要。モラハラやDV夫、相手と連絡が取れないケースもあるので改善の余地があるのでは」と宋さん
- 流産された方は保険適用になりますが、人工妊娠中絶は全額自己負担なのも、リプロダクティブヘルスライツ的には問題。経済的な事情による人工妊娠中絶は認められている、なのに自費って……」と宋さん
- 「中絶へのタブー意識や懲罰的な世論があり、『自己責任だしお金払うの当然でしょ』という声もある。でも一人では妊娠できないし、様々な事情を抱えた人が全額自己負担でないと中絶できないのはどうなんでしょう」と宋さん
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LEEweb新米ママディレクターが「手がかかる赤ちゃん、かからない赤ちゃん」について考えてみた【宋美玄さんの聴く婦人科診察室#90】
イラスト/小迎裕美子
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宋 美玄 Song Mihyon
産婦人科医
セックスや女性の性などについて、女医の立場からの積極的な啓蒙活動を行う。メディア出演や著書多数。'17年、丸の内の森レディースクリニックを開業。https://www.moricli.jp/
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