【坂本美雨さん×犬山紙子さん】里親制度が子どもにとって大切な理由は?まずは興味を持って知ることから
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LEE編集部
2022.04.04
児童虐待を減らすための活動、"こどものいのちはこどものもの"の発起人である、犬山紙子さん&坂本美雨さんのお2人。
取材と啓蒙を続ける中で感じた、里親制度の必要性とは?活動のきっかけや想いなど、お話をうかがいました!
坂本美雨さん
音楽活動に加えて、執筆、ラジオパーソナリティなど多方面で活躍。児童虐待を減らす活動のほか、動物愛護もライフワークに。アルバム『birds fly』が発売中。
犬山紙子さん
コラムニスト。鋭い観察眼と語り口が同世代女性の絶大な支持を集める。最新の著書に『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)。
この記事は20222年2月7日発売LEE3月号の再掲載です。
近所での虐待事件に落ち込みできることから活動を開始
犬山 美雨さんとはもともと親しく、私が出産後に先輩ママに育児の話を聞きたいなと思い、イベントに出てもらったりしていて。2018年からは、児童虐待防止のための“こどものいのちはこどものもの”で一緒に活動しています。
坂本 活動のきっかけは、近くに住んでいた子どもが虐待により亡くなってしまった痛ましい事件。それまでも虐待の事件を見るたびにつらかったけれど、私がその子どもの家の近所に住んでいたことでより生々しさを感じました。
すぐ見えるところにベランダがあったし、もし前を自転車で通っていたら泣き声が聞こえたのではないか、と考えては落ち込み……。そこで連絡を取り合って、苦しいね、現状をどうにかしたいという気持ちを分かち合って。
専門家とSNSを見てくれている人たちの"手をつなぐ"役割ができれば
犬山 虐待防止のためにできることとして、みんなで一緒に勉強したり、取材したり、本を読んだり、厚生労働省を訪ねて実情を聞いたり。私たちが、専門家とSNSなどを見てくれている人たちの手をつなぐ役割になれればと。その中で、虐待をされた子どもの受け皿として里親制度についても知りました。
最初は特別養子縁組との違いもわからなかったのですが、養子縁組里親には希望者が多いのに、一定期間養護する養育里親は数が足りていないんですよね。
坂本 家族と暮らせない子どもたちが45000人もいる。事件が起きると児童相談所や養護施設に注目が集まり解決を求めてしまいがちなのですが、実の親と暮らせない子どもたちが施設に入るのではなくて、家庭で養護してもらえる里親制度が日本でももっと浸透してほしいと思いました。
犬山 私は最近、児童養護施設の職員さんをサポートする方にお話を聞く機会があって。本当に大変だと、大人1人で20人の子どもを見ているケースもあるそう!
職員さんがどんなに熱意を持って子どもたちに愛情を届けたいと思っていても、時間的、体力的に無理があることも。施設の充実と並行して、里親さんが増えることが必要です。
家庭で"えこひいき"されることで子どもの心は満たされるのでは
坂本 虐待経験がある子どもたちの話を聞くと、1人でも自分のことを特別に見てくれる大人がいるかどうかが大切なんだなと痛感します。1人の大人にどっぷりと愛されて、“えこひいき”をしてもらうことで子どもの心は満たされるのでは。
犬山 何があってもこの人は自分のことを見捨てない、絶対愛してくれる、という安全基地が欲しいんですよね。
坂本 それがやはり家庭であり、実親と暮らせない子どもにとって里親さんがそういう存在であるといいなと思います。あともうひとつ感じるのは、家庭で過ごす日常が子どもにとっては生きていくための情報に満ちあふれているのだということ。私自身、小さい頃にベビーシッターさんが来てくれていて、風邪をひいたらどこを温めてどこを冷やすとか、手紙の出し方とか生活の知恵を教えてくれたんですね。
暮らしの中で、外ではあえて教わらないようなことが自然と身についていく。血のつながりのある実親でなくても私のようにシッターさんでも、里親家庭でもそういう環境は作れる。子どもが幼い頃に家庭で生活する意味はとても大きいと思います。
毎年10月の里親月間には里親のサポート団体を紹介
犬山 最近では、設立当初から続けている“こどもギフト”という虐待防止のためのさまざまな取り組みに寄付を募るクラウドファンディングの活動をしたり、子どもの問題を縦割りでなく一元化するために必要な“こども家庭庁”の設立に向けて頑張る厚生労働省の方にお話を聞いたり。細々とでも長く続けることを目標にしています。
坂本 里親制度については、厚生労働省が“里親月間”と位置づけている毎年10月に取材や啓蒙を。私がパーソナリティを担当するラジオに、日本こども支援協会代表の岩朝しのぶさんを毎年ゲストに迎えてお話を聞いています。
日本こども支援協会は里親さんのサポートを行っている団体で、岩朝さん自身も養育里親として、4歳の頃から10年間も、⼀緒に暮らしている⼦どもがいます。
犬山 私は先日、岩朝さんと中学生の娘さんにお会いしたんですよ!2人はものすごく仲よしでずっと手をつないでいて。
坂本 娘さんのほうから「私たち血はつながっていないけど親子だよね」と言われるそうなんです。里親は、子どもが思春期になっていろいろとわかる年齢になると難しいともいわれるのですが、こうして一緒に過ごす時間で親子になっていくんだなと。ひとつの真実だと思うので、こういった里親さんの喜びの部分はぜひ知ってもらいたいですね。
一緒に過ごす時間で親子になる里親さんの喜びを伝えていきたい
犬山 本当に、どの里親さんに聞いても、喜びの体験、エピソードが印象的なんですよね。岩朝さんのような長期の養育里親はもちろん、短期で小学生から高校生まで複数人を預かっている養育里親さんのお話も興味深かったです。
里子のための部屋をひとつ用意していて、短期間でもその子たちが過ごしやすいように環境を整えて。子どもが笑いながら学校であったことを話してくれたり、友達を連れてきたらうれしいなどと、子どもを通してもらえる気持ちを大切に語られていました。短期の養育里親なら将来自分にもできるかもしれない、と考えるきっかけに。
坂本 そこは本当に実子の育児と何も変わりがないんだなってわかるよね。
犬山 私は今忙しいから里親のことはいいわ、ではなくて、こうしてまずは興味を持って実情を知ったり、調べてみてほしい。それだけでも社会は変わっていくと思います。
あとは、私がこういった活動をしているからといってめっちゃ善人とかではないんですよ!聖母みたいな清廉潔白な人だけが啓蒙活動をしたり、里親になるべきなんてことはなくて。欲にまみれて洋服を衝動買いしたり、誰かに対してムカつくと思うこともあるけれど(笑)、そんな私みたいな人間でも、自分なりに社会課題に向き合えばいいと思うんですよね。
坂本 社会活動って自分のすべてを投げ打ってやらなければと思いがちですが、それでは何もできなくなってしまう。ハードルはぐっと下げてみていいんじゃないかなと私も思います。
坂本美雨さん×犬山紙子さん対談
NPO法人 日本こども支援協会とは?
里親制度の啓発と支援を行っている団体。特に、一度里親になっても定着が難しいという現状に向き合い、里親同士が悩みを相談し合えるオンラインでの里親会を開催。里親が安心して養育に専念できるよう、環境を整えているそう。
"里親制度"対談まとめ
●忙しいから無関心になるのではなく、まずは興味を持って知ること
●里親家庭での生活は、子どもが生きていくための情報にあふれている!
●誰が里親になってもいい!社会貢献へのハードルをぐっと下げて
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/布施ほのか(坂本さん) 杉山えみ(犬山さん) 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2022年2月7日発売LEE3月号『子育てをしながら"里親になる"という選択』の再掲載です。
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