今週も産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載「宋美玄さんの聴く婦人科診察室」の時間がやってきました！　女性ならではの心や体のお悩みを解決したり、性にまつわる最新事情を解説したりと、充実の内容でお送りします。今回は「アフターピル（緊急避妊薬）」について取り上げます。

72時間以内に服用すると84％程度の避妊率

コロナ禍になってから若い世代の予期せぬ妊娠や、妊娠への不安に対する相談が増えたというニュースをよく見聞きするようになりました。宋さんは「ドクターたちの話を聞くと、実際にはコロナ禍になってから地域差なく中絶数は減っているようですが……。どうしても対面での出会いが減ってるでしょうし、感染するリスクの高いセックスを避ける人も多いと思いますしね」と指摘しますが、これらの報道とともに、アフターピルも注目を浴びるようになってきました。

アフターピルとは黄体ホルモンの薬剤で、服用することによって排卵を遅らせたり着床を防いだりする働きがあります。日本ではレボノスゲストレルという薬が認可されています。性行為後72時間以内に服用すると84％程度の避妊率があります。日本ではアフターピルを入手するためには、必ず医師の診療を受けなければなりません。

アフターピル服用は時間との勝負

アフターピルは避妊率は高いのですが、時間との勝負が肝心になります。性交以後なるべく早く服用しないと、避妊率は下がるからです。しかし土日祝日は休診の病院がほとんど。もしも週末に避妊に失敗しても、月曜まで受診できないことが想定されます。

近頃はオンライン診療できる病院も少しずつ増えてきました。コロナ禍以降は初診からもオンライン診療を利用することができるようになりましたが、それ以前は再診でないとNGでした。国はオンライン診療を拡大したいのですが、医師会が反対し続けています。

医師がオンライン診察に後ろ向きな理由

「医者って多分、他の業界に比べてだいぶ競争が少ない状態だと思うんです。医者よりも患者さんの方が多くて、各地域に色んな町医者がいて、その地域の患者さんを診ることによって成立してる。だけど初診からオンライン診療解禁になってしまうと、例えば地方在住の患者さんでも東京の病院に最初からかかれるようになる……というわけで、お医者さん的にはオンライン診療のせいで安泰じゃなくなる！と感じる人もいるので、医師会は乗り気ではないんです。オンライン診療のやる気を無くすべく、診療報酬の点数がめちゃくちゃ低く設定されてますし」（宋さん）

しかし一方で、コロナの影響でオンライン診療の初診が解禁されてから大手のフェムテックサービスがアフターピルの処方も開始したところ、2020年のゴールデンウィークだけでも700件近くの処方があったそうです。そして、薬局でも買えるよう法整備を進めるべく、議論が進められていますが、医師会はやはり基本的に消極姿勢です。

アフターピルは女性が自分の身を守る手段

「産婦人科医が対面診療してアフターピルを処方したところで世の中どうしても便利な方に流れていくだろうし、薬局で売っても一緒だと思うんですけどね。並行輸入品を買っちゃう人もいるし、逆にそっちの方が危険なんじゃないかと。薬局での販売が解禁されても薬剤師さんが対面で販売しますから安全性は担保できるでしょうし。意志決定のトップにいるのが、避妊に関して当事者意識の薄い世代の男性ということも関係ありそうですね」（宋さん）

とはいえ、アフターピルは男性の協力が得られなくても使える避妊方法であり、女性が自分の身を守る手段の一つ。ピルと併せてぜひ読者の皆さんにも知っていただきたいものです。

（次回は11月26日（金）18時配信です、どうぞお楽しみに！）

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イラスト／鹿又きょうこ