LIFE

時を経て気づく、四季のある風情、丁寧な手仕事 大人はそろそろ「和」を楽しみたい

北欧フィンランド在住で感じる“和”の魅力。テキスタイルデザイナー島塚絵里さん【LEE DAYS】

  • LEE DAYS リーデイズ

2021.12.15

この記事をクリップする

時を経て気づく、四季のある風情、丁寧な手仕事 大人はそろそろ「和」を楽しみたい

近頃、気になるのは「和」の文化。その道の歴史に深く感銘を受け、作り手の想い、職人技のゆかしさをしみじみ実感します。静かで力強く美しい器がそっと教えてくれるのは、なにげない日常の豊かさ。LEE DAYS世代になって、じっくり「和」の心得と向き合ってみませんか。

テキスタイルデザイナー
島塚絵里さん/Eri Shimatsuka

島塚絵里さん テキスタイルデザイナー

2007年フィンランドに移住。アアルト大学でテキスタイルを学び、マリメッコのデザイナーとして就職。独立後、国内外の企業にデザイン提供をしている。著書に『北欧フィンランド配色ブック』(玄光社)など。フィンランド人で建築家の夫と娘(3歳)の三人暮らし。www.erishimatsuka.com

テキスタイルデザイナー 北欧フィンランド在住 島塚絵里さん 「外国暮らしのなかでこそ感じる“和”の魅力」

外国に住んでみて、初めて「日本のよさや文化を深く知ることができた」とよく耳にします。マリメッコのテキスタイルデザインを手がけていた島塚絵里さんも、フィンランドでの暮らしの中に、和のテイストや日本らしさを随所に取り入れています。

「くらしの中に和が自然となじんでいます」

北欧と和のテイストがミックスされた島塚家のインテリア

北欧と和のテイストがミックスされた島塚家のインテリア。象徴的なイサム・ノグチのアカリがダイニングを優しく照らし、アルテックの椅子は生地を張り替えて、長年愛用。室内でも自然を感じる松の木のテキスタイルをデザインしたところ、「これを見ると日本を感じる」と友人からも褒められます。

壁に備え付けられた棚。フィンランドと日本の工芸品が仲良く並びます。

1950年代に建てられた家のインテリアは夫が設計し、リノベーションしました。冬が長い北欧らしい明るい印象です。お気に入りは壁に備え付けられた棚。フィンランドと日本の工芸品が仲良く並びます。

和歌山の老舗、をぐらやさんの雛人形。

和歌山の老舗、をぐらやさんの雛人形。着物の柄をデザインさせていただきました。一年に一度飾るのが楽しみです。今年は娘の友人家族とちらし寿司を食べてお祝いしました。

イッタラの鋳鉄鍋を土鍋代わりに使い、お米を炊いています。

イッタラの鋳鉄鍋を土鍋代わりに使い、お米を炊いています。ふっくらおいしく出来上がり、家族も大満足。夫が子どもの頃、実家に同じものがあったのだそう。鍋の中はホーローなので、洗いやすいのもうれしい。



「仕事柄、日本の民芸やデザインが身近です」

気がつくと、フィンランドに移住してから人生の3分の1以上が経ちました。離れると日本のよいところが見えてくるものですが、中でも食文化の豊かさは他に類をみません。

例えば、「いただきます」という言葉。フィンランドでは「Hyvää ruokahalua」と言いますが、ニュアンスが少し違います。我が家にごはんを食べにきた友人には、「いただきます」には「他の命をいただいて、自分の命につないでいく」という感謝の想いが込められていることを伝えるようにしています。

敗戦した歴史を持つフィンランド。食べ物をなるべく残さないという感覚は日本と通じるところがあり、「もったいない」や「いただきます」という概念もすんなり心に響くようです。

器はアラビアのヴィンテージと沖縄のやちむんをあわせて使います。3年ほど暮らした沖縄は思い出の場所なので、どこかで繋がっているような安心感があるのです。日本の美しい民芸は、フィンランドの機能的でシンプルな食器ともマッチします。

夏はベリー摘み、秋はキノコ狩りといった季節を楽しむ心を持ち続けるようにしています。ひな祭りや節分などの行事は、日本文化を伝えるよい機会なので、時には友人家族を招待して、一緒にお祝いします。一つの価値観に縛られず、異文化に触れることは人生を豊かにすると思うのです。

北欧のシンプルな暮らしに慣れた中、自分の中に根ざす「日本らしさ」を、肩肘を張らずにこれからも伝えていけたらいいですね。

2階の一角にある仕事部屋。

2階の一角にある仕事部屋。窓から見える自然に癒されています。仕事部屋にもカーテンレールがあり、テキスタイルを簡単に掛けられる作りに。日本の文房具のクオリティは素晴らしく、仕事道具は日本製のものを愛用しています。

2階の廊下に長い本棚スペース

2階の廊下に長い本棚スペースがあり、そこは我が家の図書館。柚木沙弥郎さんの本など、民芸やテキスタイル関係の本も並びます。

子どもの頃大好きだった絵本や、友人や母から贈られた絵本も宝物。

子どもの頃大好きだった絵本や、友人や母から贈られた絵本も宝物。この秋は長年の夢だった絵本の仕事を開始します。

「日本の良さを伝えるのは、ずばり食から」

友人を招く時の定番は手巻き寿司。

友人を招く時の定番は手巻き寿司。フィンランドの人は寿司好きが多く、ほぼみなさんお箸も使えます。自分で巻いて食べるスタイルは“目からウロコ”のようで、みな喜んでくれます。食を通した異文化交流は会話も弾んで、楽しいひととき。

手巻きのメインはサーモンやいくら。彩りのある野菜とサーモンを巻いて食べるのが北欧流。

手巻きのメインはサーモンやいくら。彩りのある野菜とサーモンを巻いて食べるのが北欧流。

今日はアイスクリームのあんこ&ベリー添え。

最近はあんこがアジア食材店でも手に入るようになりました。娘の大好物なので、手に入る素材でアレンジして楽しむようにしています。今日はアイスクリームのあんこ&ベリー添え。


撮影/原田智香子 原文/島塚絵里


LEE DAYS リーデイズ LEE DAYS

LEEとともに歩んできて、子育てが一段落。自分に目を向ける余裕の出てきたLEEの姉世代の方に、日々の“ほんとうに好きなものと心ときめく時間”をお届けします。

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる