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【書評】『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』離れていた心をつなぐ“モノ”が詰まった6つの贈り物ストーリー

2021.11.21

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『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』
原田ひ香 ¥1760/中央公論新社

離れていた心をつなぐ“モノ”が詰まった6つの贈り物ストーリー

『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』 原田ひ香 ¥1760/中央公論新社

実家から送られてくる小包。意表を突かれるようなものが入っているときもあるし、離れて暮らす家族の思いやりや優しさに感謝することも多いはず。そんな小包を軸に、人の心の機微をすくい取った6つの短編小説が収められているのが、今月のおすすめの一冊だ。

第一話の「上京物語」は母親の反対を押し切って、東京の短大へ進学した美羽(みう)が主人公のお話。彼女の母親は地元の岩手が一番いいと考えている40代後半の女性。美羽にも地元で進学と就職をし、信金勤めをしている自分の夫みたいな“手堅い”伴侶と結婚し、岩手の中で安定した人生を歩んでほしいと願っている。そんな母親の愛情に感謝を感じつつも、自分らしい生き方をしたいと東京行きを決めた美羽。一人暮らしや都会の人間関係に戸惑う間に、彼女の上京をあれだけ反対していた母親が、東京生活に強い憧れを抱いていた過去を知り、ショックを受ける。

そんなささくれ立った母娘関係をつなぐのが、美羽の母親が送ってきた実家のおいしいものが詰まった小包だ。懐かしい味に触れて、美羽は母親への理解を深め、同時に東京で生活する手がかりも得ていく――。思いの込もった贈り物を受け取ると、日常に喜びが増し笑顔になれたりする。実家からの小包に流行りやおしゃれさはないけれども、特別なパワーがあるのだなと思い知らされてしまう。

また第三話「疑似家族」では、業者から買った野菜を「実家の畑から送られてきた」と彼氏に言ってしまう女性、第五話「北の国から」では、亡き父親が住んでいた家のもとに、死後も送り続けられる送り物に疑問を感じる息子など、モノと人との関係が複雑に絡む話も登場する。受け取る側、そして贈る側の心の動きが丁寧に描かれ、どの物語にも人生の温かみと切なさの両方を噛みしめてしまうはず。

基本的には一話完結のお話だから、忙しい日々の合間にゆっくり読み進めるのがおすすめ。ラストのお話にたどり着いたら、自分も、大切な人に「何を贈ろうかな?」と思いを巡らせているかも!

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
ブレイディみかこ ¥1430/新潮社

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ ¥1430/新潮社

ロングセラーとなっているイギリス・ブライトンの元底辺中学に通う「ぼく」の物語の続編。

13歳になった「ぼく」が学校や地域で政治・経済、人種やジェンダーから貧困問題などのさまざまな事柄に接することで悩み、行動し、成長していく姿に心を動かされる。大人の階段を上っていく「ぼく」に共感しつつ、世間に対する問題意識もアップデートできる一冊。

『ベビーシッターは眠らない 泣き虫乳母(ナニー)・茨木花の奮闘記』
松田志乃ぶ ¥814/集英社

『ベビーシッターは眠らない 泣き虫乳母(ナニー)・茨木花の奮闘記』 松田志乃ぶ ¥814/集英社

プロベビーシッターの花が依頼されたのは、離婚がささやかれる政治家夫妻の娘・七海。真摯にお世話をする花だが、七海の誕生日当日、ある事件が起きる。一方、七海と同じスイミングスクールに通う葉山櫂(かい)の家にも秘密がありそうで……。

どの家庭にも事情がある。そう思いつつ、子どもの笑顔を守るために奔走する花を応援し、感動できるヒューマンドラマ。

■詳細はこちら



『相米慎二という未来』
【編】金原由佳、小林淳一 ¥2970/東京ニュース通信社

『相米慎二という未来』 【編】金原由佳、小林淳一 ¥2970/東京ニュース通信社

『セーラー服と機関銃』など、1980年代~1990年代にかけて数々の映画を撮った相米(そうまい)慎二監督。没後20年に当たり、彼の仕事にかかわったり、触発された人の声を集めたインタビュー本。

佐藤浩市、浅野忠信など大御所俳優からスタッフまで大勢の人たちが、相米さんの作品作りの裏側や、日本映画について考える。作品鑑賞のよいガイド本となりそう。


取材・原文/石井絵里


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