ここ数年、従来の価値観がどんどん変化し、特にジェンダー平等や多様性を認める動きには注目が集まっています。「知らない」ではもう済まされない! 著名人がおすすめする映画・ドラマで、楽しみながら価値観のアップデートを。
ジェンダーなどの社会問題に関心が深く、4歳の子どもを持つ犬山紙子さん&劔 樹人さん。編集ぷーすけ&ライターNがその独特の視点、子どもへの作品の影響について思うことを直撃取材!
(左)コラムニスト 犬山紙子さん
徹底した取材と鋭い切り口で、ジェンダー、夫婦問題などさまざまなテーマを分析。著書に『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)など多数。
(右)漫画家、ベーシスト 劔 樹人さん
大学時代からベーシストとして音楽活動を開始。映画化された『あの頃。男子かしまし物語』(イースト・プレス)など漫画家としても活躍。最新作に『敗者復活のうた。』(双葉社)。

(左)編集ぷーすけ 男性中心のコミュニティで学生時代を過ごし、自戒を込めて今回のテーマを企画。3歳男児、1歳女児の父。
(右)ライターN 育児関係の記事を担当することが多く、最近はジェンダー、性教育の取材多数。8歳女児、6歳男児の母。
ジェンダー不平等への問題提起を良質な作品から感じ取る
N 犬山さん、劔さんはジェンダーや差別、偏見などについて、SNSでよく情報発信している印象があります。映画やドラマなどの作品を見ながら、お2人で話し合うことはありますか?
劔 ありますね。普段から社会問題についてはよく話します。政治や、最近はゴミをどうするかといった消費の話題とか。あとはやっぱりジェンダーについて話すことは多いです。
犬山 最近は社会問題について考えさせられる、良質な作品が増えていますよね。Netflixの『軽い男じゃないのよ』は男女の立場を逆転させることで、その不平等さがわかりやすく描かれています。『ギャビーのドールハウス』もいい。少し前まで主人公は白人であることが多かったのですが、この作品は有色人種の女の子で。
劔 娘が好きなのでよく一緒に見るのですが、こういう作品が子ども向けに作られているのが素晴らしいなと。僕は生涯ベスト映画である『シコふんじゃった。』を推したい。大学の弱小相撲部の奮闘を描く物語ですが、女性が土俵に上がれない、相撲をとれない描写が印象的で、実はジェンダー不平等への問題提起があるのではと……。
犬山 この作品については、語りが止まらない(笑)。私も結婚してから何度か一緒に見ました。最近は、社会の流れもどんどん変わっていますよね。例えば、これまでだったら、女性が男性からの差別を訴えたらヒステリーだとか面倒くさい人だと思われがちだったけれど、昔に比べれば声をあげやすくなった。良質な作品を通して、そういう流れや時代の感覚をつかむことは大切だなと思います。
ぷーすけ 劔さん原作の映画『あの頃。』では、ハロプロ推しの濃い仲間たちとの青春が描かれていました。男同士のいじりとか、僕も同世代なのですごく共感できるのですが……。ああいった男性のホモソーシャルな世界にいた頃は、今のようなジェンダー感覚はありましたか?
劔 そうなんですよ、男ばっかりのところにいたんです。僕がジェンダーを意識したのは、娘が生まれてからなのでつい最近です。娘の将来を考えると、いろいろなことに注意深くなりましたね。
犬山 かつていた男同士の世界や、マッチョな考え方からどうやって脱却したの?
劔 自分のいる世界についてしっかり意識することかな。男性が多いことが実は普通ではないと。例えば、音楽業界はまだまだ男性社会なので、現状を変えるために意識して女性の参加が必要な気がしていて。政治も同じで、まずは女性議員を増やそうよと思います。
犬山 私自身も、20代中頃までは男性中心の社会を自分の中に内面化してしまっていて、テレビを見ても、男性がメイン司会で女性がアシスタントだとか、ストーリーに関係ない女性のお色気シーンがあっても何も疑問に思わなかった。過去の自分の作品では、女性の外見を取り上げたり、ルッキズム発言も多々……。無自覚で、たくさんの人を傷つけてきたんじゃないかなと、すごく反省しています。
ただ価値観のアップデートには、この過去の自分への反省がすごく大切です。ジェンダーの観点で言うと、特に強者の立場である男性には求められると思います。夫は、過去の行いへの反省や自戒を込めて話しているので、信用できるなと感じますね。
劔 変化を受け入れることは大事。ルッキズムの扱い方も、昔とは大きく変わってきているよね。
犬山 私はNetflixの『クィア・アイ』が大好きなのですが、ゲイ5人組のファブ5は、自分を変えたいという相談者の外見に決してダメ出しをしないんです。何が好きか、どこが素晴らしいかを引き出して、肯定感を高めながらいい方向に導いてくれる。これからの時代に合っていると思うし、他者が癒されるのを見て、私自身も癒されるこの作品は、すごく素敵だと思います。
子どもにこそ作品の力を借りて。
多様性を描く『ズートピア』
ぷーすけ 劔さんは赤い服がトレードマークですが、娘さんが「ピンクは女の子の色」と言ったことで、ご自身がピンクの洋服を着続けたと! やはり娘さんへの社会からの影響は感じますか?
劔 最近はピンクと赤を半々ぐらいで着ていますが(笑)、影響は感じますし、難しい問題だなと。
犬山 例えば娘が将来、女性であることで傷ついたときに、私たちの意識が支えになればとは思うけれど。教えるのは本当に難しい。
劔 子どもに対してこそ、作品の力を借りるのは効きそうだよね。
犬山 本当にそう。親の言うことはなかなか素直に聞かないですもんね。娘が初めてハマった『アナと雪の女王』は、男性の力がなくても、自分で道を切り開く女の子が描かれていて、娘に見せても安心だなと思います。
N 昔の作品はどうですか? 娘がプリンセス好きで、王子様を待ち続ける、美しさが大事といった刷り込みがされないかと心配で。
犬山 うちは特に避けずに昔の作品も見せます。そこで、例えば、なんで女性はずっと家にいて家事ばかりしているの?といった違和感を感じたら、それごと大事にしてほしい。違和感って気づきのきっかけですから。理想を言うと、その違和感をアウトプットして伝えてくれるといいんですけどね。
劔 今4歳なのもあって、まだそこには至っていないね。でも、最近のディズニー、ピクサー作品は、どれもすごく気をつけて作られている気がします。
犬山 『ズートピア』は多様性の最たるもので、たくさんの動物たちが登場して、楽しくわかりやすく描かれていて最高! 自分は差別される側だと思っていたら実は差別してしまっていた、みたいな描写もあって、秀逸です。あと、子どもたちの憧れという意味では、アイドルが発するメッセージも効果的ですよね。
劔 僕の推しのアイドルたちは今岐路に立たされていますね……。
犬山 アイドルが異性に注目されるだけの存在ではなく、最近はポジティブなイメージで、リベラルな感覚を持つアイドルも増えている。私は韓国のMAMAMOOというグループのファサさんが大好きで。いわゆる美人ではないとオーディションで言われて「私が新しい美の基準になる」というかっこいい発言をしたんです。強い女性像を見せてくれるのはうれしい!
劔 作品やアイドルからいい影響をもらいつつ、少しずつ家庭で子どもと話せる空気感を作りたいね。
犬山 わが家では夫のほうが料理をするのに、なぜか娘のおままごとでは母親役が料理をしている! 「なんでお母さんなの?」と問いかけることはしています。社会にはいろいろな立場の人がいて、その声を聞く重要性は、娘にも少しずつ伝えていきたいです。
映画 【軽い男じゃないのよ】
男女がこんなに不平等だと理解できる

Netflix映画『軽い男じゃないのよ』独占配信中
女性を見下す無神経な男が、ある日男女逆転の世界に。「トランプはキングではなくてクイーンが一番強い、ピルを飲むのは男性、女性がミニスカートをはくように男性が除毛された足で短パンをはく……。逆転すると今の女性の状況がわかりやすく、男性にも見てほしい作品」(犬山紙子さん)
ドラマ 【ギャビーのドールハウス】
女の子だって実験が得意!

Netflixオリジナルシリーズ『ギャビーのドールハウス』独占配信中
「まず有色人種の女の子が主人公で、多様性への目線がしっかりあるなと。また、かわいい人魚のキャラクターが実験が得意で、女の子は理系が不得意とされるステレオタイプを引き継いでいないのもいい。子どもに見せる作品として信頼できます」(犬山紙子さん)
家族で『ギャビーのドールハウス』を鑑賞中。「娘はただ楽しんで見ているのに、メッセージ性があるのがいいですね」(犬山紙子さん、劔 樹人さん夫妻)
映画 【シコふんじゃった。】
実は相撲と女性が印象的に描かれている

『シコふんじゃった。4K Scanning Blu-ray』¥5280/KADOKAWA
「1992年の作品なのでどこまで意識して製作されたかわからないのですが、マネージャーの女性が男性に扮して相撲をとったり、ヒロインがシコを踏むシーンがあったりと相撲と女性が印象的に描かれている。昔からある風習の理不尽さも感じさせます」(劔 樹人さん)
映画 【ダンガル きっと、つよくなる】
男尊女卑を変えようとする父親と娘に感動
息子が生まれず、2人の娘にレスリングで世界一になるという夢を託す父親。一見スポ根ものだけど……。「実はいろいろな層がある作品。前半は娘を思いどおりにしようとするインドの家父長制の強さが目につくのですが、後半は男尊女卑を変えようと娘をたたえる父の姿が見られる。変化する父親にぐっときます」(劔 樹人さん)
詳しい内容は2021年LEE7月号(6/7発売)に掲載中です。
撮影/フルフォード 海 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
※商品価格は消費税込みの総額表示(2021年6/7発売LEE7月号現在)です。
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