奈良で開催! ニューノーマルなアートイベント
芸術の秋…と言っても、今年は人の多いところを避けつつ楽しみたい…。そんな思いを、見事に汲んでくれたアートイベントが奈良の奥大和、吉野で開催されています。【MIND TRAIL 奥大和】 は、世界遺産に認定されている吉野の山を、5~6時間歩きながらアート作品と出会う、まさにニューノーマルな企画なのです。
プロデューサーはあのライゾマティクス・アーキテクチャー代表の齋藤 精一氏。
今年、多くの芸術祭はコロナの影響で中止もしくは延期になっています。
県をまたいで美術館に行くことも容易ではなくなった今、自分を写す鏡もなくなってしまい、何かが足りない感情になっている人々が多いのではないでしょうか。
芸術祭や美術館はそこに行かなければ体験することができません。
でもこんな未曾有な状況であるからこそ、自分がいる場所=心の中に美術館を作ることができるのではないか。
アーティストたちがこの未曾有の自粛期間に貯めたエネルギーを、奥大和の自然や大地と共に展示できないだろうか。そんな思いとともにこの芸術祭を始動していきます。
自然から、そしてこの土地に住む人々から、この芸術祭を訪れたみなさんは多くのことを気づかされるかもしれません。MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館 プロデューサー MIND TRAIL 奥大和
多くの芸術祭が中止やオンライン開催になっていますが、こんな時だからこそ大自然の中を自分で歩き、アートを通じて新しい何かに出会うことができるのかもしれない!そして吉野は父の故郷でもあるので、ゆっくりトレッキングをしながら子どもたちと自分たちのルーツを味わうのもいいな、と思い参加してきました。その時の様子をお伝えします。
メインの舞台は桜で有名な吉野山、旅の相棒を見つけてスタート
今回は吉野山、天川(てんかわ)村、曽爾(そに)村、この3エリアで開催されています。メイン会場である吉野山は、3万本の咲き誇る日本屈指の桜の名所ですが、今はまさに紅葉のピーク!中央に見える金峯山寺・蔵王堂界隈からスタートし水分神社〜如意輪寺と山道をぐるっと巡る5時間のコース。子どもたちもトレッキングシューズを履いていざ出発です。
スタート地点には菊池宏子+林敬庸『千本のひげ根』がズラリ。こちら、修験道の歴史がある奥大和にインスパイアされた作品で、奥大和のヒノキを磨いて1000本の杖を制作されたそう。「今日の旅の相棒、どれにする?」子どもたちも持ち手や長さ、カーブなどをいろいろ試しながら、自分の手にしっくりくる一本を選びました。
サクサク歩き進めたいところですが、お昼時ということもあってまずは腹ごしらえから…。金峯山寺界隈は旅館はじめ、名物である柿の葉寿司やあゆの塩焼きが味わえるごはん処、吉野葛をはじめ和菓子を楽しめる茶屋が軒を連ねています。始まってもいないのに食べてばかり!
町のいたるところに作品が展示されています
吉野エリアは町歩きとアートが共に楽しめるよう、展示されています。白い小さな看板と矢印がアートポイントの目印なので、子どもたちも見つけやすく「あった!」と足を止めます。こちら中﨑透『色眼鏡でみる風景』は古民家を一軒丸ごと使った作品。今回、せっかくなので子どもたちにもデジカメを持って、自分たちの好きな角度で撮影しながら歩きます。
8キロ5時間というコースですが、多くが金峯山寺周辺に多くが集約されています。谷川俊太郎のインスタレーション『あさ』や松田大児『海のギャラリー』など、小さいお子さん連れのご家庭でしたら、お寺巡りと周辺のアート巡りだけでも十分楽しめそう。アクティブなわが家はもちろん、MIND TRAILのコンセプト通り、自然の中を自らの足で歩くことに。
紅葉を楽しみながら水分神社まで歩くと…そこには…!
次第に喧騒から離れ、坂道を30分ほど登ると、見晴らしの良い花矢倉展望台に到着しました。春には吉野山一面の桜を見ることができるので、写真スポットとしても有名です。眼下に広がる紅葉が素晴らしく、ここで少し休憩することに。水の神様がいる吉野水分(みくまり)神社を目指します。
水分神社は創建されたのが不明なほど古く、今、現存している社殿自体も1604年豊臣秀頼によって再建されたもので、重要文化財に指定されています。「みくまり」がなまって「みこもり」になり、子授けの神様としても信仰されています。こんな山深い場所ですが、一般の参拝者があとを絶ちません。
こちらに展示されていたのが上野千蔵『水面-minamo-』です。奥大和の美しい水の映像を集めて、本殿に対峙する形で展示されています。表情がコロコロと変わる水面を、こんな形で表現できるなんて。水の配分を司る神様の元で、美しい水の世界に、しばらく酔いしれてしまいました。ここまで登ってきた心地よい疲労感と、この空間の趣も相まって、なんとも言えない、充足した時間。
いよいよ森の中へ。トレッキングしながらアートを堪能
水分神社を後にして、いよいよ後半。ここからは本格的に山歩きスタートです。林の中に突如現れたのが、力石咲『力石咲のワイルドライフ』。編み物をコミュニケーションメディアとしているアーティストで、ソーシャルディスタンスが保てる山の中での生活をテーマにしています。山の素材を使って生活拠点を作り、GPSの数値を住所としてamazonで必要なものを調達したり…現代のワイルドライフを過ごす作品。とっても面白い空間。
時折、風に揺れる杉の木の音にドキッとしながら歩いていると「かわいいー!」と木村充伯『鹿が見てる』は、吉野山のヒノキを用いて、鹿を彫り上げられたそう。本物さながらの佇まいで、すっかり癒されました。
途中、岩肌が出て滑りやすそうな場所もあり、ロープをつたって歩くことも。しっかりと山の中を歩く予定でしたら、時間と装備、あと心づもりを万全にしておいた方が良さそうです。デフォルメされたマップだけではなく、YAMAP(山歩き専用のアプリ)を事前にインストールして歩くことが推奨されているので、お忘れなく!
スタートからゆっくり5時間半ほど、夕暮れが美しい時間に金峯山寺まで戻ってきました。途中の作品や寺社仏閣、美味しいものも堪能したければ、もう少し時間が欲しかった…!
コロナだからこそ企画された今回のMIND TRAIL。自然の中でトレッキングをしながらアートを巡る、という逆転の発想は功を奏して、今までにないアート体験に。この企画がなければ吉野の山を子どもたちと歩くことはなかったですし、久々に自然の中で、ゆっくりと自分と向き合えた時間でした。
次回はもう一つの舞台、天川村エリアへ。吉野エリアからさらに1時間ほど車を走らせた秘境中の秘境。そちらの様子もじっくりお伝えします!
MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館
会期:2020年10月3日(土)~11月15日(日)
会場:奈良県 吉野町、天川村、曽爾村
入場料:無料
主催:奥大和地域誘客促進事業実行委員会、奈良県
協力:株式会社ヤマップ
プロデューサー:齋藤精一(ライゾマティクス・アーキテクチャー代表)
キュレーター:林曉甫(特定非営利活動法人 インビジブル 理事長)
参加アーティスト:井口皓太、上野千蔵、oblaat(覚和歌子、カニエ・ナハ、谷川俊太郎、永方佑樹、則武弥、松田朋春)、菊池宏子+林敬庸、木村充伯、毛原大樹、齋藤精一、佐野文彦、力石咲、中﨑透、ニシジマ・アツシ、細井美裕 他
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飯田りえ Rie Iida
ライター
1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。