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LIFE

「突然のわがまま」を、お金の大切さを学ぶチャンスに!【薄井シンシアさんの「育児書を捨てよ、子どもを見よ!」第12回】

  • 薄井シンシア

2020.08.23

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突然の「おもちゃ買って!」にどう対処する?

前回は、子どものわがままの対処法を「3つのR」でお話ししました。今回は、これに関連して、読者の皆さんからお寄せいただいた具体的なお悩みにお答えしたいと思います。

Q:6歳の息子はミニカーが大好きで、見つけると必ず欲しがります。この前も、電気屋さんに行ったら、たまたまおもちゃコーナーがあって、目にしてしまいました。欲しい、欲しいとぐずられ「今日はダメ。また今度ね」と言い聞かせましたが、「イヤだ、今日買って!」と大泣きされました。周囲の目も気になり、買ってしまった方がラクなのですが、どんどんエスカレートしそうで・・・。こういうことが、しょっちゅうあります。どうすれば、聞かない息子を説得できるでしょう?(33歳 女性)

転ばぬ先の杖=「おもちゃを買うルール」を

A:子どもは、おもちゃが好き。絶対、欲しがりますよね。でも、いつも買ってあげられるわけではありません。家計にも限度があるし、ねだられるたびに買ってしまうのは、甘やかしにつながるという不安もあるでしょう。

そこで、お子さんとの間で、「おもちゃの買い方のルール」を事前に決めておいてはいかがでしょうか。前回もお話ししましたが、例えば、親子間でこんな話し合いをしてみてはどうですか? 

「あなたは、おもちゃが欲しいよね。でも、うちのお金には限りがあるから、何でも買うというわけにはいかないの。だったら、おもちゃを買ってもいいルールを決めましょう」と。

残念ながら、あなたと息子さんの間には、この「おもちゃを買うルール」がなかったんですね。であれば、息子さんが電気屋さんで泣きわめいてしまうのも、無理もありません。育児書にはよく、「頭ごなしに『ダメ』と言わず、理由をちゃんと説明しましょう」と書かれていますが、これってタイミングが重要だと思います。騒ぎになってからでは遅いのです。場当たり的にダメな理由を言われても、納得できない。子どもは、そう感じます。双方とも感情的になっているし、この段階で説得するのは、どんな理由をつけても難しくなります。

「おもちゃ予算」を決める

ただ、発想を変えると、こういうクリティカルな局面が、むしろルールを作る絶好のチャンスになることもあります。例えば、私だったら、こんな提案をしてみるでしょう。

「わかったわ。じゃあ、あなたには、これから毎月これだけの『おもちゃ予算』をあげましょう。この『おもちゃ予算』をどう使うかはあなたの自由で、もし、今日ここで、このおもちゃを買うために全部使ってしまったら、今月はもう使えなくなるよ。それでもいい?」

さらに続けて、こんなことも付け加えておきます。「もし、あなたの欲しいおもちゃがとても高かったら、今月と来月我慢すれば、買えるよね」。でも、もっともっと高額だったら、子どもにも、すぐには手が届かないフラストレーションがたまるでしょう。だったら、そんな場合は、「副業」をしてもらうのです。つまり家のお手伝いです。

「あのおもちゃが欲しければ、お手伝いをしてお小遣い稼ぎをしたらどう? お手伝いを一生懸命やれば、お金も早く貯まって、早くおもちゃを買えるかもしれないね」と。きっと、お子さんのモチベーションも上がるのではないでしょうか(笑)。そして、これを機会に、「おもちゃを買うルール」を実行することが、息子さん本人にとって楽しく、ポジティブなものに変わるかもしれません。

ものを買うとき、なぜルールが必要なのか?

「おもちゃを買うルール」を守るとは、つまりお金の使い方のルールを学ぶことです。ひと月いくらのお小遣い制が年齢的にまだ早いと思えば、親御さんがおもちゃの年間予算を立てて、管理するのもいいでしょう。いずれにしても、子どもには、使えるお金には限度があるということを明快に伝えておく方が、買い物のたびに、いざこざを起こさずにすみます。

例えば、おもちゃ予算の金額を棒グラフにして、いま、ここまで使ったよ。今年はあと、このくらい残ってるね、と分かりやすく見せて理解させるのでもいいかもしれません。こうした習慣の中で、子どもは自然にお金やものの価値を学んでいくのだと思います。

Cute asian little child girl putting coin into glass bottle in the garden. Kid saving money for the future concept

お金の大切さを学ぶ機会に

娘がニューヨークから戻って、8歳で日本のアメリカンスクールに通い始めたときのこと。初年度のアメリカンスクールの学費は、入学金を含めて300万円を大きく上回りました。これを納めるために、銀行へ行って引き出したのですが、そのとき娘もそばで見ていて、さすがに目を丸くしていました。

と、そのとき、気がついたんですね。大枚のお札の価値がわからないまま、ただすごい、という強い印象だけを与えるのは娘にとってよくないと。そこで、私は、当時、まだ若かった公務員の夫の年間のお給料を全部引き出して(お給料は学費とどっこいどっこいでした!)、家に持ち帰り、娘と一緒に数えました。そのうち、300数十万円を「これがあなたの学費ね」と言って見せ、「残りで私たちは生活するのよ」と教えたのです。

娘は、頭の中で計算機を叩いたのでしょう。「ママ、私の学費は1日1万円くらいするんだよね」。続けて、こうも言いました。「じゃあ、私が学校に行ってちゃんと勉強しないともったいないよね」と。娘は、ここでお金の価値というものを理解し始めたのだと思います。

お金の話は生臭いし、シビアです。しかし、遅かれ早かれ、お金の価値を学ぶということは、生きる上で避けては通れない重大事。「おもちゃを買うルール」という小さな習慣から、お金について学ぶことを始めてみるのも、悪くないのではないでしょうか。

構成/鵜養葉子

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薄井シンシア Cynthia Usui

17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」からラグジュアリーホテル勤務を経て、現在は大手外資系企業で働きながら、講演活動や出版活動も行う。著書に『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたかママ・シンシアの自力のつく子育て術33』(KADOKAWA)、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。

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