子どもの「わがまま」発動前に手を打つ!
親御さんからよく聞く悩み事が、「子どもが言うことを聞かず、ケンカになってしまいます。どうすればいいのでしょう?」というものです。これは、親子間における永遠のテーマと言っても過言ではありませんね。
スーパーで、小さな子が、お菓子売り場の前で地団駄踏んで泣き叫んでいるのを見かけることがありますが、こうなってしまったら、親はひとたまりもありません(笑)。でも、私はこう思うんです。地団駄踏んで泣き叫ぶ前に、できることがあったのではないかと。ある意味で、「地団駄」は、その子にとっての「最終手段」。そこまでに至るまでには、さまざまな可能性があったはずです。
「他の伝え方があったのでは?」と自問してみる
最初に、あなたに質問です。日頃、子どもにこんなことを言っていませんか? あのおもちゃが欲しいとねだる子に、「ダメよ。たくさんおもちゃ持ってるでしょ!」。宿題をやらない子に、「まだやってないの? さっさとやりなさい」。散らかしっぱなしの子に、「片付けなさいっていつも言ってるでしょ!」。つい言いたくなるその気持ち、よく分かります。子どもが親の思い通りにやってくれるとラクなんですけどね。
駄々をこねる子どもを叱責するのも、「なんでも許すと、将来、我慢の効かない大人になってしまうのではないか? 思い通りにいかないと投げ出してしまうのではないか?」と、そんな親心があるからかもしれません。
けれども、子どもの側からすればどうでしょう? 逆に「なんで僕の言うことを聞いてくれないの?」って答えるかもしれませんね(笑)。幼い子どもなりに言い分があります。でも、子どもは、それを十分に伝えることができないのです。言葉も足りないし、感情をコントロールする力もまだ十分に育っていない。だから、自分の思いが通じないと、泣いたり叫んだりすることで、自己主張しようとするのです。
だとすれば、経験がある親の方が子どもの側に立って考えてみることも必要なのではないでしょうか? 「子どもが言うことを聞いてくれない」のではなく、伝え方を工夫してみよう、と。そういう姿勢が、子どもを一人の人間として尊重するということだろうと思います。
トラブル前に手を打っておく。それが、親子間「ルール」
かく言う私も、実は、子どもに反抗されることを一番恐れていました。反抗されて、ぶつかって、娘との時間を不機嫌なまま過ごすのは、何が何でも避けたかった。だから、私は、反抗の理由を与えませんでした。
反抗の理由を与えない、と言うと、ちょっと高圧的なのでは? と思われるかもしれませんが、もちろんそれは、怖いお母さんになって上から押さえつけるというのではありません。かと言って下手に出て、何でも「いいよ、いいよ」と許したのでもありません。
私がやったのは、親子間で明確なルールを作ること。前もって子どもが取りそうな(反抗しそうな)リアクションを想定し、事前に対策を決めておく。それが、「ルール」だったのです。
例えば、おもちゃ売り場であれが欲しいとぐずり出す子どもに、その場で「ダメ」と言っても聞かないでしょう。感情的になっているので、親の言うことを受け入れにくくなっています。子どもからすれば、「前は買ってくれたのに、なんで今日はダメなの?」と思うことでしょう。
でも、事前に決めた「ルール」があれば、頭ごなしに否定しているわけではないので、子どもも理解しやすいはずです。ポイントは、そのルールを子どもと一緒に決めること。そして、きちんと納得するまで、話し合うことです。その場では、「わかった」と言うかもしれませんが、それで安心してはいけません(笑)。繰り返し話し合って、心の底から理解しているかどうか、見極めることが大事です。「これは親の都合でダメと言っているわけではないんだよ。一緒に決めたルールだったよね」ということです。
例えば、我が家のケース。娘がニューヨークで幼稚園に通っていた頃、ビーニーベイビーという小さなぬいぐるみが流行りました。続々と登場してくる新作を、娘は見ると必ず欲しがりました。でも、その都度買っていては、キリがありません。財布だって悲鳴を上げます(笑)。そこで、私は娘と事前に話し合って、こう決めました。「週に一度、ピアノのレッスンの帰り道に、決まった店で一つだけ買ってあげます」と。だから、たまたま通りがかった他の店で、どれほど可愛いビーニーベイビーを見つけたとしても、私は決して買いませんでした。娘のほうも、いくら欲しくても、ルールがある以上、駄々をこねることはありませんでした。特に我が家は当時、夫もまだ若く、稼ぎも少なかったので、家庭の懐事情は正直に伝えました。そこまで伝えることで、子どももちゃんと理解してくれました。
同様に、宿題や部屋の片付け、寝る時間も、あるいは大きくなってからの夜の帰宅時間も、みな親子間で「ルール」を決めて、それをお互いに守りました。
ルール、リーズン、ルーティーン。3つの「R」を心がけて
繰り返しになりますが、ルールは親が一方的に決めたのでは意味がありません。それでは、命令と同じだからです。その上で、子ども自身が「これなら、自分も守れるよ」と納得できる合意点を見出すのです。
合意点を見出すポイントは「理由」(リーズン)です。つまり「なぜ、そのようなルールが必要なのか?」を話し合うことです。
先ほどの例ですと、「なぜ、ビーニーベイビーを一週間に一度しか買ってもらえないのか?」ということです。私は正直に伝えました。うちのお財布に入ってくるお金には限界があるからね、と。もっと言えば、収入支出という家計をすべて見せ、説明してもいいのです。あなたのおもちゃに使えるお金は、これしかないのだと。
ルールの理由を、子どもにもきちんと分かるように親が説明できれば、子どもも合点がいくはずです。同時に、子どもは「自分も関わって決めたことだから」という自覚が芽生えるし、親は、万一子どもがルールを破った場合には「あなたが決めたことなんだから、守らないとね」と、ルールを盾に(笑)諭せます。
そして、もう一つ。ルールを決めたからには、ルール破りはご法度です。どれほど子どもがぐずっても、反抗しても、親は腰砕けになってはいけないと思います。逆に、親の気まぐれで、ルールを適用する日があったりなかったりするのもよくありません。その姿勢は、子どもにもうつってしまいます。
また、ルールだからと言って、ただ守るだけでは長続きしません。続けるためには、工夫も必要です。例えば、ルールを守ったらポイントを与えて貯まったら何かご褒美があるとか。子どもが楽しい、と思える工夫も必要だと思います。
そうして、最終的には、それを習慣化(ルーティーン化)してしまいましょう。例えば宿題を夕食後の30分間でやると決めたなら、必ずそのスケジュールで実行する。もし、親御さんがそばについて宿題を見てあげると決めたなら、どんなに忙しくても、こちらを優先する。習慣にするまでが少し大変ですが、生活に根付いてしまえば、子どもも親もラクになりますよ。逆に、根付かないようなら、スケジュールの組み方に無理があるのかもしれません。無理は禁物です。
このように、子どもの「わがまま」にはルール、リーズン、ルーティーンの「3つのR」で臨むことが重要なのです。
こうしたルールづくりについては、7月に出した新刊本『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたか』(KADOKAWA)でも詳しく触れています。ご興味があれば、ぜひ読んでみてくださいね!
構成/鵜養葉子
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薄井シンシア Cynthia Usui
17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」からラグジュアリーホテル勤務を経て、現在は大手外資系企業で働きながら、講演活動や出版活動も行う。著書に『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたかママ・シンシアの自力のつく子育て術33』(KADOKAWA)、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。
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