子どもが習い事に行きたがらない!
今回は、習い事についてのご質問にお答えしたいと思います。日本の親御さんとお話しすると、よく「習い事が続かない」とか「習い事に行きたがらない」といった話を聞きますが、そもそも続ける必要があるのでしょうか。これは国や文化によって異なるかもしれませんね。今回は、私の習い事に対する考え方をお話ししたいと思います。
Q:息子に何かスポーツをやらせたいと思い、これまで野球、柔道をやらせましたが、半年も経たないうちにやめてしまいました。何がやりたいのかよく分からず、また、一つのことが長続きしないことも気になります。(40歳・女性)
習い事は、トライアル
A:冒頭でもお話しした通り、日本では、習い事に関して「続けるか、続けないか」という点で悩んでいる方が多いように見受けられます。でも、なぜ悩むのでしょう? 私は、無理をして続けなくてもいいと思うのです。習い事は、トライアルだと思っています。子どもにとって可能性を試す機会だと考えれば、無理をして続けるより、その機会を増やす方を、私なら選びます。どんどんトライして、嫌ならやめていいんだと。
私の娘が、そうでした。ニューヨークで幼稚園へ通っていた当時、最初にやった習い事は、バレエでした。仲良しの友達がやっていたからです。でも、先生の指導方法が娘には合わなくて、結局半年余りで辞めました。ただし、このとき、娘は自分から辞めたいと言ったわけではありません。ある時期から、レッスンに行く時間になると、浮かない顔をするようになったのですね。レッスン中も、ちっとも楽しそうではありません。その姿を見かねて、私は娘に聞きました。「バレエ、楽しくないの?」。「……うん」。「じゃあ、やめる?」。「うん」。一瞬、買って間もないユニフォームやタイツが脳裏をよぎりましたが(笑)、私は、その日のうちにやめることを先生に伝えに行きました。このとき、もし私が娘の「行きたくない」というシグナルを見逃していたら、娘はストレスを感じながら、そのまま続けていたかもしれません。
その後、娘の習い事は一年ごとに変わりました。ジャズダンス、タップダンス、和太鼓、歌……。まるで飛び石を跳ねるように、はい、次! はい、次!と次々習い事を変えましたが、私はひと言も反対しませんでした。娘が自分で決めたことですし、プロになるわけではないのですから。
「続けて欲しい」は、親の押し付け?
習い事はトライアルだと言いましたが、親が続けてほしいと思うその裏には、「一度決めたことを嫌だからといってすぐにやめると、なんでも中途半端になって大成しないのではないか」という不安があるのではないでしょうか。でもそれは、親の一方的な押し付けではないかと思います。
あるお母さんから、こんな相談を受けたことがあります。歌舞伎に幼稚園児の息子さんを連れていったら、ハマってしまったと。そこで、子ども向けの歌舞伎の習い事に行ってみたそうなのです。しかし途端に、そのお子さんは、気持ちを閉ざしてしまった。もう少し頑張れば次のステップに行けるのにと、お母さんは残念そうでしたが、私はこう尋ねました。「歌舞伎役者に育てたいのですか?」と。よく聞くと、息子さんは「舞台に立ってみたい」と言うのだそうです。だとしたら、彼の真意は歌舞伎に限らず、舞台に立って踊ったり歌ったりしたい、ということかもしれませんね。そう考えると、可能性は、歌舞伎以外のジャンルにも広げていくことができるわけです。
子どもは、幼いほど自分の意思を上手に伝えることができませんし、本人すら、どうしていいのかわからないことがあるのです。習い事においても、子どもの様子をよく観察しながら、続けるのか、やめさせるのか、あるいはもっと働きかけをしていくのか、見極めることが大切だろうと思います。
ちなみに娘は、6歳で始めたピアノだけは、高校3年生まで続けました。ただし、レッスン方法は変わりました。習いたての頃は、あるメソッドに則った本格的なものでしたが、途中で合わなくなりました。しかし、もとを正せば、娘の希望はただ一つ。「ピアノでカーペンターズを弾けるようになること」だったのです。
そこで、私は、ピアノの先生をしている娘の友達のお母さんにレッスンをお願いしました。私が、そのお友達に英語を教えることを交換条件に。というのも、私はそのお母さんが、娘さんに英語を習わせたがっていることを知っていたのです。お互い気が置けない間柄で、しかも授業料はお互い免除というおまけ付き!(笑)。習い事というのは、こういう形でもあり得るのです。ピアノはいま、娘にとって、人生を豊かにしてくれる大切な「友人」。習い事の成果は、こういう形でも現れるのです。
無理やり続けると他のチャンスを逃すことも
月謝を払って通わせるだけが、習い事ではないと思います。トライアルと考えれば、「習う」チャンスは至るところにあります。お絵描きや料理教室などのイベントや、1日限りの講習会、コンサートや観劇などもまた、習う、学ぶ格好の場所になります。そのくらい幅広く習い事を捉えてみてください。そうすれば、親子で楽しめる機会も増えるでしょうし、子どもがどんなことに目を輝かせ、夢中になるのかも分かります。続けることが全てではありません。無理やり続けるということは、逆にいえば、他のことができない=チャンスを逃しているということでもあるのです。
ゆっくり、焦らず、いろんな形で習い事=トライアルを繰り返していってみてください。そして、もっと大らかに。そうすればきっとお子さんの人生を豊かにするものが見つかると思いますよ。
構成/鵜養葉子
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薄井シンシア Cynthia Usui
17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」からラグジュアリーホテル勤務を経て、現在は大手外資系企業で働きながら、講演活動や出版活動も行う。著書に『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたかママ・シンシアの自力のつく子育て術33』(KADOKAWA)、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。
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