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松崎のり子

東日本大震災から6年。まだある地震保険への思い込み

  • 松崎のり子

2017.03.07

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震災の1年後に東北に向かう途中で撮った桜。

東日本大震災から6年が経ちます。

個人的な話ですが、たまたま震災の前年に東北沿岸部を旅行し、まだその記憶が新しかった場所が次々津波の被害に遭ったと聞いて、驚いてネットで情報を探したことを覚えています。ドラマ「あまちゃん」の舞台にもなった三陸鉄道にも偶然乗っていたため、鉄路が震災で途切れたというニュースも衝撃でした。震災後、同じ場所を数回訪れましたが、山間のわずかな平地や、元は施設の駐車場だったとわかる場所にも仮設住宅がひしめき合っていて、復興のスピードの遅さにがく然とさせられたものです。住まいを失うことは生活の基盤を失うこととも言えます。昨年の熊本地震でも多くの家屋が倒壊しました。

地震による倒壊や火事、津波、噴火の被害は、地震保険に加入していないと補償されません。このことはもうずいぶん認知されてきたと思いますが、いまだに「地震保険は高いから」という声が多く聞かれ、加入率が上がっていないといいます。ひどい話では「巨大地震が来たら、被害が大きすぎて保険会社にだって払えないはず」と金融機関が言ったとか。身近な人に聞いた話ですが、本当に無責任な発言だと思います。

地震保険はもったいないの?

駅舎も線路も流されてしまった三陸鉄道・北リアス線の島越駅。2012年に撮影。2014年に復旧しました。

では地震保険について私がこれまで取材してきたことを簡単にまとめたいと思います。

「地震保険は高い?」

地震保険は、火災保険とセットで加入し、火災保険の補償額の50%までしか原則入れません。もし補償額が2000万円の建物なら1000万円まで。その場合、東京だと1年の支払いは3万6300円(木造など非耐火構造住宅の場合、割引前。2017年時点)となります。なお地震保険の保険料は地域で異なり、最も安い地域で1万1400円(非耐火構造。保険金額1000万円)です。東京の例を月額で計算してみると3025円。これって、医療保険ならこの程度支払っている家庭はあるのではないでしょうか? 地震保険だけが特別高いわけではないとわかりますよね。

「地震が来るかどうかわからないのにもったいない?」

取材で聞いた専門家のコメントで印象的だったのは「では、警備会社と契約して払うお金をもったいないと思いますか? 泥棒が入ってくれたら元が取れたのに、と思いますか? リスクに備えるお金とはそういうものです」という言葉です。本来、保険は元を取ろうとして入るものではないのです。

特に、地震は他の保険ではカバーされない大きな災害です。昨年強い地震に襲われた熊本は、地震保険のリスク想定では最も低い地域の一つでした。さらに言うと、2017年1月から地震保険の保険料は値上げされており、今回を含め三段階の値上げが予定されています。なぜ、値上げされるのか。医療保険でも生命保険でも、年齢が上がると保険料が高くなりますよね。それは病気や死亡のリスクが上がるから。地震保険でも、同じことが言えます。起こるリスクが高くなれば保険金の支払いの可能性も高まるので、保険料を上げる必要が出てくるのです。

東日本大震災のあの日を思い出す時は、過去のある瞬間に起きたことではなく今の時間につながっているのだという意識をもって、誰もが地震に備えていくべきではないでしょうか。

松崎のり子 Noriko Matsuzaki

消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。

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