LIFE

映画ライター折田千鶴子のカルチャーナビアネックス

俳優・桐谷健太の“懐の深さと大人の色気”を感じる4選/「彼らが本気で編むときは、」公開記念!

  • 折田千鶴子

2017.02.28

この記事をクリップする

映画『彼らが本気で編むときは、』でまたも役幅をグッと広げる!

ぽかぽか春の空気を吸い込んだ時の、優しい幸福感が胸一杯に満ちてくるような映画『彼らが本気で編むときは、』がもうすぐ公開に!第67回ベルリン国際映画祭でLGBTがテーマの37作品のなかから、 テディ審査員特別賞を受賞し話題の本作。LEE本誌では、3月号で桐谷健太さんにご登場いただきました。

桐谷さんと言えば、今や目にしない日はないほどの超売れっ子。それなのに、とっても丁寧で腰が低い‼ 真っ直ぐ目を見て「取材してくれてありがとう」的な態度を醸してくれるんです。

『彼らが本気で編むときは、』
祝‼ 第67回ベルリン国際映画祭 テディ審査員特別賞受賞(パノラマ部門、ジェネレーション部門 正式出品作品)
監督・オリジナル脚本:荻上直子『かもめ食堂』『めがね』
2月25日より丸の内ピカデリーほかにて全国一斉ロードショー http://kareamu.com/

 

小さなエピソードを面白おかしく語ってくれるのは、さすが大阪の血と納得したくなるテンポと歯切れの良さ! でも真面目な話をする時は、考えながらゆっくり静かに言葉を紡いでいきます。

さて『彼らは本気で編むときは、』で桐谷さんは、自分らしく生きたいと性別適合手術を受けた女性・リンコ(生田斗真)を愛する、マキオを演じています。2人が暮らす部屋に、母親に育児放棄されたマキオの姪っ子トモ(柿原りんか)が転がり込んで来るのです。

リンコがトモのために作ったお弁当。実の母親にこんな可愛いお弁当を作ってもらったことのないトモは、もったいなくてなかなか食べられない。それが何とも切ない! 主演3人の他、ミムラ、門脇麦、小池栄子、りりィ、田中美佐子らが出演。

マキオとリンコはトモを優しく迎え、日常のあれやこれやを通して互いを思いやる、温かな家族のような関係を築いていきます。人と人の繋がり、自分らしさ、多様性を認める寛容性、そして家族って何だろうなど色んなことを感じさせられます。

上品で母性に満ちたリンコを演じた生田斗真さんも素晴らしい。気の利いたことは言えないけれど、リンコさんが悲しい思いをしないよう、隣で常に心を配っているマキオを演じた桐谷さんの、静かな演技が感動を深めてくれます。

実はこのマキオ、荻上直子監督がご自分の旦那様のイメージを元に書かれた人物像でもあるんですって。「どこでこんなセンスの悪いパンツ買ってくるのかしら」とリンコとトモに笑われる、ちょいダサな面も可愛いんです!

果たして彼らは何を本気で編んでいるのか……。ちょっとビックリ、でもウフフフと笑いながら3人のこれからの人生を祝福したくなるハズです。ぜひ、劇場で確かめてください。

 

『彼編む』のマキオは、社会通念や誰かの物差しで人の価値を測るのではなく、人間そのものを見て丸ごと愛する男の懐の深さで、観る者を魅了します。

7年前に桐谷さんが『オカンの嫁入り』で演じた研二も、それと通じる人間性かも……と思わず頭によぎった青年でした。映画が始まって間もなく、この研二君、大竹しのぶさんが演じる15歳年上の女性・陽子に、ある晩、“お持ち帰り”されてくるのです。

15歳年上の女性を丸ごと愛し、結婚しようとする若者を熱演!

 

『オカンの嫁入り』(2010)
監督:呉美保 『そこのみにて光輝く』(14)『きみはいい子』(15)
出演:宮崎あおい、大竹しのぶ、桐谷健太、絵沢萌子、国村隼ほか
●DVD発売中 ●価格:4,700円+税 ●発売元: 角川映画 販売元:東映・東映ビデオ
東映ビデオオンラインショップ⇒
https://shop.toei-video.co.jp/products/detail.php?product_id=6304

 

酔っぱらった陽子が連れ帰ってきた金髪リーゼントの研二に対し、宮崎あおいさん扮する娘の月子が、呆れて怒り出す気持ちに、最初は共感せずにはいられません。ところが中盤あたりから、研二がほんの出来心ではなく、色々あって陽子を本気で愛していることがジワジワ伝わってくるのです。そして本気で結婚しようとしていることも。

中心は“母と娘の物語”ですが、私の中では、研二の懐の深さが最大の肝であり、最大の号泣ポイントでした。当時『ROOKIES』シリーズや『クローズZERO』シリーズなどで人気が出始め、“勢いのある若手俳優”だった桐谷さんの印象を、決定的に私の中で“演技派”に変えた映画でもありました。

見た目や年齢や社会が決めた“価値観”に縛られることなく、その人の真の価値を見出せる人間のすばらしさ! そして人を愛し愛し合う喜び、自分らしく人生を生きる勇気を出す大切さを教えてくれる本作。母娘の絆に涙しながら、同時に桐谷さんの演技力が倍増させてくれる感動を、ぜひ味わってください。

 

縁の下の力持ちを自ら進んで引き受ける男気に感涙‼

大人気のコミックを映画化したこの『バクマン。』。佐藤健さん、神木隆之介さんが演じる主人公の漫画家コンビの、漫画家仲間・福田を演じているのですが、これがまた上手い! そしてまたも、桐谷さんが醸し出す味が相当の肝になっていました。

 

『バクマン。』(2015)
監督:大根仁/『モテキ』(11)、『SCOOP!』(16)
出演:佐藤健、神木隆之介、小松菜奈、桐谷健太ほか
「バクマン。DVD 通常版」   DVD発売中   ¥3,800+税   発売元:集英社&アミューズ   
販売元:東宝

 

漫画家同士というと、ライバル意識や売れている相手に対する嫉妬、そんな才能への羨望など、みんながみんな互いに色んな感情を持ち合っている複雑な関係でもあります。そういうものをしっかり感じさせながら、困ったときの仲間の絆、仲間の才能に惚れているからこそ、協力して助けようとする男気で一肌脱ぐ福田の姿に、思わず惚れ惚れ!

こういう人物の内面をジワっと感じさせる演技って、少なからず肉体を使って体現する役者自身の中身も注入されるからこそ、リアルになるものだと思うのです。さすが、共演者みんなに好かれる桐谷さんの人間力!

映画そのものも、“漫画家”という非常に動きのない文科系な人間たちを描きながら、すごい疾走感、躍動感に満ちた映画で、女性も大興奮必至です。大根仁監督の勢いのある映像でパワフルさをもらいながら、桐谷さんの男気をじっくり楽しんでください。

 



スーツが似合う大人な男に女は弱い!な2作

桐谷さんと言うと、『ROOKIES』シリーズや『クローズZERO』、そして『BECK』などで演じた役柄のイメージが強いせいか、いつまでも青春を駆け抜けている元気な男というイメージを持つ方が多かったりしますが、どうしてどうして、スーツが似合う大人の男が実に似合う!

 

連続ドラマW メガバンク最終決戦 ¥11400(税抜き)
発売中/発売元:WOWOW 販売元:カルチュア・パブリッシャーズ 販売協力:TCエンタテインメント

まずは近年、演出に映画監督を配し、実力派キャストを揃え、映画作品と比べても遜色のない硬派なドラマを連発しているWOWOWドラマ。この『メガバンク最終決戦』も、見応えのある“経済エンタテインメント”ドラマです。

桐谷さんが演じるのは、巨大なメガバンク=銀行を舞台に、椎名桔平さん扮する敏腕ディーラーの桂と相棒を組んで史上最大の買収合戦に挑む、気配り総務部員・二瓶です。

銀行同士が合併すると社内はこうなるのか……といった金融業界の内部事情にも興味津々になりますが、そんな中で陰謀に立ち向かう桂=椎名桔平さんのカッコ良さ、二瓶=桐谷さんの人間味に痺れてしまいます。

国まで出てくる、いやアメリカの金融界まで出てくるストーリーは、少々難しかったりもしますが、完全には分からないなりにハラハラは存分に味わえます。それに大なり小なりサラリーマンの方々って、こんな風に葛藤しながら頑張っているに違いない、わけですよね。そんなことを感じて、いつもより旦那様や恋人に優しくできちゃうかもしれませんよ。

 

前半のデキスギ副社長、後半の優メンと2度美味しい!

最後にチラリと。Hey!Say!JUMPの山田涼介さんと桐谷さんが兄弟に扮した月9ドラマ「カインとアベル」が、もうすぐDVD-BOX化されます!

カインとアベル DVD-BOX ¥19000(税抜き)
17年5月10日発売/発売元:フジテレビジョン 販売元:TCエンタテインメント
(C)2016フジテレビ

桐谷さんが扮するのは、お父さんが社長の企業で副社長を務めている優秀な兄の隆一。ダメの烙印を押された弟にも優しく、誰がみてもカッコ良いい理想の男性像。でも時に、「俺は持ってる男だ」と勘違い発言もしちゃったり。

そんなわけでご想像通り、弟と立場が逆転し始めると、隆一に嫉妬という感情が沸き上がり、挙句の果てに失脚するのですが、その挫折を経て人間味が加わった新たな魅力に転じていく後半も桐谷ファンにとってはお楽しみが待っています。

ストレスが溜まる役に同化して、撮影中は肌荒れしちゃった、と語っていた桐谷さん。「撮影が終わるとパッと役から抜けるタイプですが、少なからず役が体調に影響を及ぼすこともあるんやなぁ、と思った」そうです。

1つのドラマで2度、違った桐谷さんの魅力を楽しめるドラマ。是非、桐谷さんお大人なスーツ姿に惚れ~っとなってください!

『彼らが本気で編むときは、』公式サイト

http://kareamu.com/

折田千鶴子 Chizuko Orita

映画ライター/映画評論家

LEE本誌でCULTURE NAVIの映画コーナー、人物インタビューを担当。Webでは「カルチャーナビアネックス」としてディープな映画人へのインタビューや対談、おススメ偏愛映画を発信中。他に雑誌、週刊誌、新聞、映画パンフレット、映画サイトなどで、作品レビューやインタビュー記事も執筆。夫、能天気な双子の息子たち(’08年生まれ)、2匹の黒猫(兄妹)と暮らす。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる