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藤本こずみ

『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』著者・土屋礼央さんインタビュー

2021.03.27

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お悩み相談を通して綴られる家族との向き合い方

3月3日に発売されたエッセイ『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』。このタイトルに、思わず目を奪われるLEE読者も多いはず! 著者は、アカペラグループ・RAG FAIRのメンバーで、現在はラジオ出演やコラム執筆など幅広い分野で活動している、土屋礼央さん。プライベートでは妻と小学生の息子と暮らす土屋さんが、身近な人たちの悩みに答える形で綴った自身の経験や工夫には、家族関係をよりよくするためのヒントがいっぱい。今回は、LEEwebのためにじっくり語っていただいた、土屋さん流・家族との向き合い方についてのインタビューをお届けします。

RAG FAIRの土屋礼央さん

PROFILE●土屋礼央(つちやれお)1976年9月1日、東京都生まれ。2001年、RAG FAIRのメンバーとしてメジャーデビュー。2011年よりソロプロジェクト・TTREをスタート。音楽活動以外にも、ラジオ出演やコラム執筆など、多方面で活躍中。TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』他に出演中。

 

夫婦で話し合う時間を最優先に

本書の中には、タイトルにもなっている「食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった」をはじめ、「子どもをお風呂に入れる時のキーワードは、『帰るまでが遠足』」、「『家族サービス』という言葉はNG。週末の仕事は趣味だと考える」など、気になるフレーズが満載。家事や育児に奮闘している多くの妻たちが「そうそう!」「まさにそれがモヤモヤの原因!」「うちの夫にも分かってほしい!」とうなずいてしまうであろう数々の問題をクリアしていく土屋さんの試行錯誤ぶりに、思わず笑わされ励まされます。

「僕自身、結婚して10年弱経つんですが、最初は夫としても父としてもダメダメで、妻によく怒られていたんです(笑)。今でも日々模索中ではありますが、ひとつ良かったと思うのは、何事も夫婦でしっかり話し合ってきたこと。喧嘩になっても、翌日早朝から仕事でも、結論が出るまで、とことん議論してきました。喧嘩は、エネルギーも使うし、重い空気にもなるし、もちろんイヤなもの。でも僕は、“夫婦喧嘩は人生の予防注射”だと思っているんです。ちょっと痛いけれど、後々のことを考えると、きちんとやっておいたほうがいい。せっかく夫婦になったんだし、この先も長い時間を一緒に過ごすことになるでしょう? それなら、いい関係でいた方が、絶対にお互い快適に生きていけるはずですよね。『そんなの綺麗事よ!』と思うなら、ここは打算的に、『自分にとっておトクな道を選ぼう』と考えるのもあり(笑)。または、事務的に、『何曜日の何時からは夫婦で会話する時間』とスケジュールを組んでしまうとか。とにかく、何よりも、どんな手段を使っても、夫婦で話し合う時間は大切にするべきだと思うんです」

一番大事な人へのリスペクトが足りなくなっているのかも?

結婚生活における様々な悩みに対するアドバイスは、柔軟かつユーモアたっぷり。土屋さんならではの、ちょっとした発想の転換や視点の切り替えが、問題解決の糸口になっています。この1冊に改めて気づかされるのは、“物事は自分の考え方次第”だということ。

「僕は常々、“相手を変えるより自分を変えるほうが、早いしラクだしメリットも大きい”と考えているんです。イライラ、ムカムカする前に、まずは自分の考え方を変えてみる。それは、すぐにできるし自分の成長にもつながる方法だと思うんですよね。一方で、相手に対して心がけているのは……期待しないこと(笑)。こう言うと冷たく聞こえるかもしれませんが、『あれもこれもやってくれるはず』と思っていると、そうじゃなかった時に不満を感じてしまうじゃないですか。でも、期待していなかったら、ご飯作ってくれた、洗濯してくれた、ひとつひとつのことに『ありがとう』って感謝できる。周りを見ていると、結婚した途端に『夫婦なんだからやってくれて当然』と相手に期待してしまうケースが多いような気がして。誰よりも大事なはずな人へのリスペクトが、足りなくなってしまっているのかな、と。僕も、一番近くにいる価値観の合う人たち、つまり家族の前でこそ、最高のプロでいようと自分に言い聞かせているんです。僕の場合、不思議なことに、家族を喜ばせることを意識すればするほど仕事も充実してきた実感があるので、この考え方は家庭においてもビジネスにおいても役に立つかもしれません」



育児における役割も“妻のサポート”

夫として、妻から「世の中の夫がみんな土屋礼央のような考え方をしていたら、世界は平和になると思う」とまで言われたという土屋さん。本書の中には、「もうイクメンの時代は終わりました。もう時代はイクツマです。いくらでも一緒に走るよ、妻。の略です」という印象的な表現も。父として、育児において重視していることを尋ねてみると、即座に「やはり妻のサポートです(笑)!」との答えが返ってきました。

「わが家では、普段、育児をより多く担っているのは妻。学校から急な連絡があれば迎えに行ってくれるのも、熱を出せば病院に連れて行ってくれるのも、基本的には妻です。仕事の関係上、僕が同等に育児をこなすことは難しい。この時点で、まず妻に感謝ですよね。僕にできることは、妻を最大限にサポートすることじゃないか、と。育児を野球に例えると、家族はチーム、子どもは選手。監督は、現場のすべてを把握している妻に任せて、僕はその方針に沿ってチームをサポートするコーチを務めている感覚です。もちろん、妻から相談されることもこちらから意見を言うこともありますが、自分の価値観を押しつけることはしないようにしています。僕自身が、親に意志を尊重して育ててもらったので、『愛さえあれば子どもは育つ』と思っているのも大きいのかも。子どもと接する時も、『こうしなさい』『ああしちゃだめ』ではなく、『どう思う?』『一緒に考えよう』と同じ目線から声をかけることが多いですね。僕にとっても育児は初めての体験なので、息子と一緒に成長していけるのが楽しくて仕方ない! 家事に育児、どんなことでも、『やるからには楽しまなきゃ!』というのが、僕の人生のテーマなんです」

日常的な実体験を交えながらの言葉の数々が胸にストンと落ちて、肩の力が抜け、前向きな気持ちになれる1冊。夫婦のコミュニケーションのきっかけにするのもおすすめです。明日からの“夫婦で会話する時間”のおともに、選んでみてはいかがでしょうか?

『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』土屋礼央・著 書影

『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』土屋礼央・著 1430円 /KADOKAWA

 

 

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