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飯田りえ

聖地トレッキングでめぐる、新しいアートの楽しみ方 【MIND TRAIL奥大和 心のなかの美術館】天川村編

  • 飯田りえ

2020.11.13

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前回記事に引き続き、【MIND TRAIL 奥大和】天川村の様子をお伝えします。コロナによって多くの芸術祭が中止やオンライン開催を余儀なくされている中、大自然の中で作品をめぐるアートイベントが開催されています。世界遺産にも認定されている奈良の奥大和・吉野を中心に、3~5時間歩きながらアートに触れる、まさにニューノーマルな展覧会です。今回この企画をプロデュースされたのはライゾマティクス・アーキテクチャー代表の齋藤 精一氏で、全21組の新作が約60点発表されています。父方の故郷でもある奥大和でこんな企画があるなんて!と子どもたちと参加して来ました。

いざ秘境中の秘境、天川村へ!まずは、旅の相棒を探すことから

今回吉野、天川、曽爾村、この3エリアで開催されていて、吉野から車でさらに1時間。標高2000mの大峯山系の山々に囲まれている秘境の地、天川村コースは、「みたらい渓谷」はじめ紅葉で有名な地で、ドライブ中も歓声が上がるほど美しい景色。スタート地点のある「洞川温泉」の標高も820mと高く、街場と3度〜5度ぐらい違うのか、ぐっと冷え込みます。アウターを着て、トレッキングシューズを履いて装備します。吉野エリア同様、菊池宏子+林敬庸『千本のひげ根』が出迎えてくれました。修験道の歴史がある吉野のヒノキを杖にした作品で、子ども達も「あ!杖あった!」とすっかり慣れてきた様子。今日の相棒を選んで(これが意外と悩むのですよ…)いざ出発。

…とまたもやここでトラップ。スタート地点である洞川温泉は、かつて「行者宿」と呼ばれていた場所。霊峰を目指す修験道達の定宿があり、今では温泉町としてレトロな旅館や喫茶店、ご飯屋さんがズラッと連ねています。アマゴ(東京でいうヤマメ)や鮎、柿の葉寿司にお団子に…と、またもや寄り道スタートに(苦笑)。

いつもの登山とは違う、修験道のスピリチュアルな雰囲気に

洞川エコミュージアムを過ぎたあたりから、登山道に入っていきます。登山道というよりは修験道ですね。ここ、天川村は修験道の聖地として1300年以上の歴史があり、今でも白装束をきて修行体験をするために訪れる方も多い特別な場所。(大峯山は未だ女人禁制を貫いていて、稲村ケ岳は女性の登山修行体験の方も可能です)そんな神聖な地に家族で来ることになるなんて!一歩入ると、まさに霊峰。あたりの雰囲気もピリリと張りつめた、普通の登山とは全く違った趣きです。今回のMIND TRAILがなければ、この地を訪れることがなかったので、思いがけない出会いに感謝ですね。

美しく整備された登山道とは違って、杉の林道を進んで行くのでここはYAMAP(山岳用のアプリ)がなければ不安なエリア。(事前のダウンロードをおすすめします!)コースの距離としてはそこまで長くないので、家族でできるプチ修験道体験に。

中間地点の「母公堂」を目指して歩き進めると、突如、鍾乳洞の入り口が現れツアー参加者達と遭遇。昭和4年に発見された「五代松鍾乳洞」だそうで、子どもたちの冒険気分がむくむくと出て来てしまい「え?鍾乳洞?! 入りたい!」と…。MIND TRAILのコースではありませんが、入るとものすごい迫力。これも自然が作り出した完全にアートですので、時間の許す方はぜひ。(入場料要)

エメラルドグリーンの渓流に色鮮やかな紅葉…、来てよかった!

母公堂に到着し、そこから少し下ると山上川に出ました。なんて美しい光景なのでしょう!エメラルドグリーンの鮮やかな渓流に、カジカの滝はじめ小さな滝や吊り橋もあって、最高のロケーション。秘境とはまさにこのこと。東京から6時間かけて奥大和まで来た甲斐がありました…!しばらく落ち葉を拾ったり、石を積んだり、思い思いに過ごしました。なんて贅沢な時間なのでしょう。

天川エリアは作品数も10点ほどなので、アートとしては他のエリアより少なめですが、これだけの非日常の大自然を独り占めできるので、また違った充足感です。渓流釣りに憧れている兄弟は、橋の上からもずっと川魚ウォッチングをしながら「いつかここで釣りやりたい〜!」と妄想を膨らませていましたよ。(残念ながら禁漁区域ですが)コースとしてはさらに大原山展望台まで登るのですが、タイムリミットが近づいていたので、川沿いを歩いて帰ることに。赴くままに自由に巡るのも、MIND TRAILならでの楽しみ方ですね。

天川村を訪れたのも初めてでしたが、修験道の神聖な空気を味わえ、何よりも、人里離れた秋の大自然を堪能できた1日になりました。ソーシャルディスタンス保ち放題のアートイベント、最高に楽しませていただきました。会期時期としてはもうすぐ終わってしまいますが、ぜひ、関西圏の方は訪れてみてください。今まで感じたことのない、新しい体験が待っていますよ。

MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館
会期:2020年10月3日(土)~11月15日(日)
会場:奈良県 吉野町、天川村、曽爾村
入場料:無料
主催:奥大和地域誘客促進事業実行委員会、奈良県
協力:株式会社ヤマップ
プロデューサー:齋藤精一(ライゾマティクス・アーキテクチャー代表)
キュレーター:林曉甫(特定非営利活動法人 インビジブル 理事長)
参加アーティスト:井口皓太、上野千蔵、oblaat(覚和歌子、カニエ・ナハ、谷川俊太郎、永方佑樹、則武弥、松田朋春)、菊池宏子+林敬庸、木村充伯、毛原大樹、齋藤精一、佐野文彦、力石咲、中﨑透、ニシジマ・アツシ、細井美裕 他

飯田りえ Rie Iida

ライター

1978年、兵庫県生まれ。女性誌&MOOK編集者を経て上京後、フリーランスに。雑誌・WEBなどで子育てや教育、食や旅などのテーマを中心に編執筆を手がける。「幼少期はとことん家族で遊ぶ!」を信条に、夫とボーイズ2人とアクティブに過ごす日々。

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