児童精神科医に聞く“子どもの学校行きたくない”・・・本音は?休ませる?読者アンケートも!
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LEE編集部
2020.02.03
どんな声をかける?学校は休ませる?
わが子の「学校へ行きたくない」に親ができること
わが子が「学校に行きたくない」と言いだしたら、親は「なぜうちの子が」「友達は行けているのに……」と焦り、悩むはずです。
今回は、登校をしぶる程度のものから、本格的な不登校まで、数多くのケースを専門家に取材。
子どもが「学校に行きたくない」と言う真意や対処法を、さまざまな面から考えてみました。
●この記事は2019年10月7日発売LEE11月号の再掲載です。
イラストは・・・
漫画家 小林 薫さん
イラストを担当してくれた小林薫さんは、娘が中学生のときに不登校に。フリースクールに通ったり、私立へ転入をしながらも、現状への不満や将来への不安も……。著書には、親子の思いが赤裸々に描かれています。
読者アンケート
「学校に行きたくない」と言われた経験、ありますか?
LEEweb会員、LEEメンバーに、わが子の学校の悩みについてアンケートを実施。子どもや親の悩みの程度から背景まで、状況は様々で・・・。
●2019年8月1日~9日に、LEEweb会員、LEEメンバーに実施。452人が回答。
Q あなたは子育てについて悩んでいますか?
「とても悩んでいる」「悩んでいる」を合わせると半数以上。
「親の希望と子どものやりたいことが合わない。子どもを尊重したい気持ちもあるけど、親のエゴもあって難しい」「クラスが学級崩壊し、子どもの心も不安定に」などさまざま。
Q 子どもに「学校に行きたくない」と言われたり、子どもが学校に行かなくなったことはありますか?
ある・・・55%
ない・・・45%
なんと半数以上が「ある」と回答!子どもが「学校に行きたくない」と言いだすのは珍しいことではないよう。
ただ、「ママと離れたくない」というぐずりから、いじめなどの深い問題が潜むケースまで、年齢や個人によって差は大きい。
Q なぜ学校に行きたくないのか、子どもに理由を聞きましたか?
約8割が「理由を聞いた」と回答。
でも、子ども自身も理由をよくわかっていないことや、理由を言いだすまでに時間がかかること、特に思春期になると、親に素直に理由を言えないことも多いよう。
Q 子どもが「学校に行きたくない」と言ったときに、学校に行かせましたか? 休ませましたか?
行かせた・・・51%
休ませた・・・49%
「行かせた」と「休ませた」がほぼ半々。その対応の難しさが浮き彫りに。
「本当に深刻で休ませたほうがいいのか、ただの甘えだから厳しく接したほうがいいのか、判断に困る」「一度休むと休みグセがつきそうで心配」と親の葛藤が。
児童精神科医に聞く
子どもの「学校に行きたくない」のきっかけと本音
子どもの「学校に行きたくない」の言葉の裏には、どんな真意が隠れているのでしょうか?児童精神科医、齊藤万比古(さいとう かずひこ)さんにお話をうかがいました。
児童精神科医 齊藤万比古さん
母子愛育会愛育研究所 児童福祉・精神保健研究部部長。愛育相談所所長。児童精神科医として、多数の登校しぶりや不登校の子ども、家族を診療。著書に『ひきこもり・不登校から抜けだす!』(日東書院本社)など。
● 児童精神科とは
児童、思春期を対象に、子どもの心の問題を診療。登校しぶりや不登校を通じて、ASDやADHDなどの発達障害が見つかることも。学校に行きたくないという子どもに、落ち着きのなさ、極端なパニック状態などがあればぜひ受診の検討を。不登校の相談窓口のひとつとしても活用できます。
社会でのプチ挫折のサインが「学校に行きたくない」
子どもが「学校に行きたくない」と言いだした原因を考える前に、まずは「子どもの心の成長過程を知ってほしい」と齊藤さん。
「子どもは幼児期~思春期にかけて、将来自立するために、心を発達させます。幼児期に、自分と他人を信じる能力、一度嫌いになっても信頼を回復できる能力などを親とのかかわりから獲得します。
例えば、イヤイヤ期は、ママなんていや、嫌い!と言っても必ず愛してくれることを確認しながら成長します。そして、思春期になると、親離れをするために、離れる対象である母親にかえってコンシャスに。ここでも、反発したり甘えたりを繰り返しながら、自立していくんです」(齊藤万比古さん)
● 子どもの心の発達
子どもは母親とのかかわりの中で"アタッチメント"といわれる愛着を形成。
その過程で大切なのが、イヤイヤ期や思春期などの親に反発する時期で、ママなんて嫌い、うざいと言いながら、親の自分への気持ちが壊れないことを確認して、心を強く成長させていくのだそう。
※このやりとりを何度も繰り返して心が自立していく
この過程の中で、まだ未熟な子どもにはさまざまなプチ挫折が。
「『学校に行きたくない』という言葉は、外の世界で頑張ったけどうまくいかなかったというサインのことが多い。特別な状態では決してないので、深刻になりすぎずに、話を聞いて。
学校を休ませるかどうか、判断に悩むときはまず話を聞くと、疲れただけか、いじめなどの重大な問題が隠れているか見えてくるはず。
プチ挫折で登校をしぶっている場合は『お母さんも子どものときに同じことがあったな』などと会話をするうちに、自然と学校に行く子が大半です」(齊藤万比古さん)
過剰適応で我慢していると本音を言えないことも……
「むしろ小学校低学年で本音が話せるのはいいこと」だと齊藤さんは言います。
「子どもは赤ちゃんの頃から、忙しい親に適応しています。小学校高学年以降で不登校になる子どもは、幼児期に手がかからない子どもだったケースも多い。
これは、子どもがかなり我慢していて、成長してから不登校という形として表れたと思っていい。低学年の傷が浅いうちに素直な気持ちを話してくれるのは、むしろよかったと思っていいんです」(齊藤万比古さん)
親は「学校に行きたくないなんて、甘やかしすぎた!?」などと心配してしまいますが……。
「子どもが心細い、親に甘えたいと思っているときに受け止めることは“甘やかし”ではありません。それは十分にするべきです。親が子どもがかわいくて仕方ないという一方的な思いで離れないのは“甘やかし”になりますので、そこは履き違えないこと。
ただ、子どもが『学校に行きたくない』と言いだしたことで、親子関係のほころびや、家庭での問題が浮かび上がることもあるので、その場合は、見直すことも必要です。
できるだけ夫婦で一緒に、子どもにだけ原因を求めるのではなく、家の中でどんなことがあったのか、何十年の間にどこが変わったかなど振り返ることをおすすめしています」(齊藤万比古さん)
SUMMARY
●幼児期~思春期を通じて、親に甘えたり、反発したりしながら心を強く成長させる
●小中学校の9年間で「学校に行きたくない」と思わない子どもはほとんどいない!
●低学年で素直に弱音が吐けるのはいいこと。
●高学年まで我慢すると、突然不登校になることも子どもが求める"甘え"は受け止めて。親が不安だから「登校しなさい」はダメ
撮影/細谷悠美 イラストレーション/小林 薫 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
この記事は2019年10月7日発売LEE11月号『わが子の「学校へ行きたくない」に親ができること』の再掲載です。
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