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津島千佳

ものづくりのまち・高岡市がアツい!【後編】間近で熟練職人の技術と前向きな姿勢に触れよう

  • 津島千佳

2019.12.27

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400年前に7人の腕利きの鋳物師が招かれたことで、ものづくりの歴史が始まった富山県高岡市。ものづくりが根づいている土地だからこそ、古くからの工房が多数あり、見学・体験ツアーを行っているところもあります。3つの工房見学を通し、高岡の技術力のすごさを間近で感じてきました!

ぬかで模様を作る!? 「モメンタムファクトリー・Orii」で高岡銅器の着色体験!

国内の銅器生産額の約95%を占めると言われている高岡銅器。日本の銅像のほとんどが高岡銅器といっても過言ではありません。分業制が高度に進んでいる高岡銅器の中で、着色を手がけているのが「モメンタムファクトリー・Orii」。東京にあるキャプテン翼、両さん、サザエさんの銅像もOriiさんが着色を担当したそう。
着色と言っても塗装ではなく、銅や真鍮が持つ腐食性を利用して薬品や炎で鮮やかな色彩を発色させる伝統技術。その色がめちゃくちゃ美しいんです。

様々に着色された高岡銅器のパネル。提供:高岡市

こちらでは工場見学で職人さんの作業を見学できるほか、ぬか焼きによる伝統着色体験もできます。ぬか焼きとは生地にぬかみそを塗り、バーナーで焼くことでぬかみその燃えたあとが模様になる技術。

まずは銅のコースターにぬかを塗ります。提供:高岡市

それを強力なバーナーで炙る! 提供:高岡市

ぬかを使う先人の発想に驚き! 他にも梅干しや日本酒など身近な食材を使って新たな表現を日々模索しているそう。
高岡銅器をもっと身近に感じてもらうため、アウトドアグッズやバッグブランドなどとのコラボレーションも積極的に行っています。

モメンタムファクトリー・Orii社長の折井さん。東京で会社員をした経験を取り入れるアイデアマンです。提供:高岡市

最近ではテキスタイルに高岡銅器の模様を転写する技術を開発。高岡銅器を纏う日が来るのもそう遠くないかもしれません。

「モメンタムファクトリー・Orii」
住所:富山県高岡市長江530 折井着色所
電話:0766-23-9685
伝統着色体験料金:¥2,000(税込)〜

※工場見学、着色体験は予約制

「シマタニ昇龍工房」で全国に10人もいない職人の技にホレボレ

いきなりですが、これはなんでしょうか?

提供:高岡市

これは仏具の一つ、おりんです。手打ちのおりん工房があるのは高岡市と京都だけで、おりん職人は10人もいません。その人数で全国に約5500ある寺院のおりんを製作・修復しているそう。そんなおりん職人の一人が島谷好徳さんです。

「シマタニ昇龍工房」代表の島谷好徳さん。250年も前のおりんを修復したことがあるとか。提供:高岡市

「シマタニ昇龍工房」ではおりんの製作工程を見学することができます。真鍮の板を叩いて完成を目指すおりん作りのハイライトは調律。優れたおりんは、ぐわんぐわんと鳴り続けます。そうなるように金槌で調整していくのですが、本当に繊細な作業。こつが掴めるようになるには10年ほどかかるのだとか。
「シマタニ昇龍工房」では、おりん作りの金鎚で叩く技術を活かしたプロダクツブランド「syouryu」も展開。

本当に紙のように薄い「すずがみ」。

「すずがみ」は、錫(すず)を紙のように薄くし、自由に曲げられるお皿。大皿として使える24cm角〜取皿サイズの11cm角まで様々なサイズを揃えています。

「シマタニ昇龍工房」
住所:富山県高岡市千石町4-2
電話:0766-22-4727

※工場見学は予約制

0.1mmの薄貝で華やかな図柄を描いていく螺鈿細工の「武蔵川工房」

高岡市は、国の伝統的工芸品に指定されている高岡漆器も有名。漆器を彩る技法も発達し、色漆を塗る彫刻塗、錆漆(さびうるし)で絵や模様を描く錆絵、貝殻で装飾する螺鈿(らでん)などの技術が今も受け継がれています。
「武蔵川工房」では、夜光貝やアワビなどの貝類を彫刻して漆器や木地にはめこむ螺鈿細工の一種である青貝塗(あおがいぬり)を手がけています。

武蔵川工房に展示されていた、約50年前の「青貝塗 木瓜卓 唐山水図年前」。気が遠くなるほど、細かな装飾がなされています。

螺鈿は主にアワビの貝殻の内側、パールのように光る部分を0.1mmの薄さに研磨し、それを型で抜いていき、はめこんでいく技法です。0.1mmってめちゃくちゃ薄いですが、熟練の技術を持つ職人さんなら触っただけで何mmかがわかるそう。すごい。

研磨された貝殻は、青貝と呼ばれています。提供:高岡市

図柄は受け継がれたものもあれば、オリジナルで起こしたものもあり、職人さんらしさが出る部分だとか。「武蔵川工房」4代目の武蔵川剛嗣さんは緻密なもの方が得意だそうで、さすが研鑽を積んだ職人さんは違いますね。

「武蔵川工房」の武蔵川剛嗣さん。レディー・ガガのシューズを収める箱を螺鈿で装飾したこともあります。提供:高岡市

武蔵川さんの作品。古典柄以外にも現代風俗を取り入れた図柄にも挑戦しています。これはスケボーにスカルを装飾。提供:高岡市

図案を描き、貝の裏に色を塗り、貝を切り抜き、板に貝を貼っていく青貝塗を体験することもできます。かなり薄い貝を型で抜くのは、割れそうで怖い……。

「武蔵川工房」ではこれまでに作った型はすべてアーカイブとして保存してあります。

箸やペンダント、様々なアイテムを装飾できるので、経験や思い出作りだけでなく、お土産にしてもいいですね。

「武蔵川工房」
住所:富山県高岡市地子木町1-23
電話:0766-26-0792
青貝塗体験料金:¥3,000(税込)〜

※工場見学、青貝塗体験は予約制

職人さんは気難しいイメージがありましたが、みなさんもとてもフレンドリーで純粋にものづくりが好きなことが伝わってきました。
生産額は下がり続けている伝統工芸品業界は、決して芳しい状況とは言えません。それでも職人さんたちが持つ技術を最大限に活用して業界に新しい風を入れようとする意気込みが感じられ、人知れず勇気づけられたりもしました。
AIに代替されることのない職人さんの技術を間近で見学・体験できるだけでなく、職人さんの前向きな気持ちにも触れられる高岡市の工房見学、ぜひ体験しに行ってください。

津島千佳 Tica Tsushima

ライター

1981年香川県生まれ。主にファッションやライフスタイル、インタビュー分野で活動中。夫婦揃って8月1日生まれ。‘15年生まれの息子は空気を読まず8月2日に誕生。

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