皆さんはお笑い、好きですか? 好きな芸人さんはいますか? 私は年末年始もたくさん放送されたお笑い番組やネタ番組を録画し、仕事に煮詰まると観直して、また仕事へのモチベーションをアップさせているほど、お笑いが大好きです。もちろん、好きな芸人さんもたくさんいて、大好きな芸人さんのライブに足を運んでいます。
とりわけ好きなコンビがコントも漫才も一級品のネタを届けてくれる「さらば青春の光」。芸人さんたちが毎年しのぎを削って闘うコンテスト、「キングオブコント」や「Ⅿ-1グランプリ」の上位常連ですが、それって、とてもすごいこと。コントと漫才の二刀流で、どちらも勝ち残るなんて、まさに実力者の証です。毎回すぐに完売してしまう単独ライブの打ち合わせの合間に、LEEWebのために時間を作ってくれたお二人。カフェでじっくり話を聞いてきました。「僕らは女子にワーキャー言われる芸人じゃないから」とおっしゃいますが、いやいや、実物はめっちゃキュートなアラフォー男子。バシバシ写真を撮りまくっても、前のめりで質問し続けても、嫌な顔ひとつせず、笑顔で協力してくれた、さらば青春の光なのでした!
同じネタでも、ライブとテレビで味わいが全く変わる
――年末の番組で東ブクロさんが「賞レース以外で僕らをテレビで観ますか?」、森田さんが「俺、毎日、いつ売れんねんって思ってる」とおっしゃっていて、思わず笑ってしまいました。でも、裏を返せば、賞レースではいつも目立っているわけですから、すごいことですよね。それに、最近はテレビでもよくお見かけします。お二人にとって理想的な活動というか、ゴールとはどういうものですか。
森田:僕らはテレビでスターになる、売れたい!という思いも強いコンビです。でも、やみくもにそこを目指すだけではダメというのもわかっているので、地に足をつけて、まずはライブやDVDなどで自分たちにお金を使ってくださるお客さんに向けて、一生懸命ネタをやる。その原点をしっかりやったあとに「テレビで売れる」がついてくるもんだろうと思っています。
東ブクロ:ありがたいことに最近は、おっしゃる通り、テレビの仕事も増えていますしね。
――単独ライブを観る醍醐味のひとつはネタをフルバージョンで観られること。さらば青春の光のオリジナルのコントは長尺ネタも多いですが、テレビで同じネタを拝見すると、ギュッと短縮されている。でも、それも面白い。テレビ番組の場合、いわゆる“テレビサイズ”にネタを縮める必要があると思いますが、同じネタを伸び縮みさせる面白さと難しさをお話しいただけますか?
森田:テレビはなんとはなしに観ている人も多いですから、長尺でネタを披露しても、なかなか集中して観ていただくのは難しいですよね。
東ブクロ:4、5分のネタを観て「面白いな」と思ったら、ライブに足を運んでいただけたらいいな、と思っています。「ライブだったら、もっと長く面白いネタが観られるんや」と思っていただけるように、短くても面白さは伝わるよう、工夫して縮めています。
森田:もちろん、めちゃくちゃ悩みますよ。ライブの尺がベストのつもりで作っているわけですから。でも、短くしたネタをやってみると、こっちの尺のほうがベストなのかな、と思うこともあります。
東ブクロ:そぎ落とされて洗練された感じになることもあるね。
森田:ライブと賞レースやテレビの違いは大きいです。ライブは多少すべっても、あるいは、伏線のために笑いがしばらくなくても、ちょっと観ていてね、というのが許される空間。賞レースやテレビは一言一句、笑いが起きなければダメなんです。その意味で、ライブサイズのほうが遊びやすいし、自分たちがやってみたいことを全部試してみられる、というのはあります。
東ブクロ:ちなみに、最近は短い尺のバージョンは賞レースでぶっつけ本番、というケースが結構あります。
――えっ。賞レースでぶっつけ本番?
森田:以前は雑多なライブというか、たくさんの芸人が集まってやるライブなどで、短いバージョンを試すことが多かったんですが、最近、あまりそうした機会がなくて。何組か集まってやるライブも長尺でやれるようになった。昨年のキングオブコントで準決勝に行く時にやった「ヒーロー」は12分のネタですが、5分に縮めたバージョンはぶっつけ本番でした。
――昔は短いネタも多かった気がするんですが、年々、長尺ネタが増えていませんか。
東ブクロ:そうそう、そうなんですよ。昔は、4分、5分なんて長すぎて困っていたくらい(笑)。それがいつの間にか、前振りが長くなっていって、10分、15分、と伸びて行きました。
――テレビで売れたい、という気持ちを持ちながら、テレビでできない長尺のネタが増えていくジレンマ(笑)。
森田:はははは、いや、ほんと、そこっすよね。難しいもんです。
東ブクロ:昔は賞レースに向けてネタを作っていたけれど、今は単独ライブに向けて作っています。ただ、5分もらえれば、僕らがやりたいことは伝わると思うんで、それがもし気に入ってもらえたら、ぜひライブに足を運んでください。
――テレビを観ているから親しみはあるけれど、お笑いの単独ライブは音楽のライブ以上にハードルが高いと感じる人もいると思います。そうしたライトな(?)ファンに支持されることも大切ですよね。なかなかライブは行けないけれど、応援したい気持ちはある。そういう場合、どんな応援をされたら、うれしいですか?
東ブクロ:お笑いの単独ライブなんて、僕もこの世界に入るまで行ったことがありませんでした。お笑い自体はすごく好きだったんですよ。でも、行く機会がなかった。だから、ライブにはなかなか行けない、というのはよくわかります。
森田:たとえばショッピングモールでやるイベントに買い物ついでに寄ってもらったり、僕たちは公式のYouTubeチャンネルを持っているので、そこでネタを観てもらってチャンネル登録していただけたら、とてもありがたいです。
東ブクロ:それでさらに面白いコンビだと思っていただけたら、単独ライブのDVDを借りたり、買ったりしてもらえるとうれしいですね。
日常の中からネタの種を拾い集める
――さらば青春の光のネタは社会風刺的な設定でちょっとせつなさを感じさせるのが興味深いです。私が最初に衝撃を受けたネタは「工場」ですが、公式に上がっているネタでいうと、「タイ料理屋」「更生」「楽屋挨拶」にも通底していると思います。主にネタを書いている森田さんは日常の中でも俯瞰した視点でその場を眺めているんですか。
森田:うーん、どうなんすかね? いや、意外とブクロのほうが俯瞰していると思いますね。ふだん、黙っているぶん、こういうインタビューの場で「こいつ、こんなこと思ってたんか!」と初めて知ることが多いんですよ。今日、めっちゃ喋ってるし、そうだったんか!って今、俺は思っています(笑)。
ブクロ:そんなん言われたら、喋りにくくなるわ(笑)。育ちか性格かわかりませんが、僕は僕で、森田からネタを聞くと「そういう人にそんなことを思っていたんだ!」と驚きます。見方によっては性格がひねくれていると思われるでしょうが、僕らは生身のキャラクターで見せるタイプの芸人ではないし、コントとしてそれでいいと思っています。
森田:ほお、そんなふうに思ってたんや(笑)。
東ブクロ:「この前、こういう人がおってなあ」とドキュメンタリー番組を観た感想を聞いた後に、その人を彷彿とさせるネタができてきたりするので、具体的なきっかけがあって着想を得ることもあると思います。だから、森田もやっぱり日常的に俯瞰した視点で眺めているんじゃないですか。
森田:ブクロは打ち合わせでもマスクを外さず、何も喋らない男なんで、こちらから訊ねないと何も出てこないんですけど、ライブ前に僕が煮詰まって「ブクロ、何かいい設定ない?」と訊ねると、めっちゃいい設定を出してきたりするんですよ。それおまえいつから思いついていたん? おまえから早く出してくれていたら、俺はこんなに煮詰まらないで済んだよ!ってことがある。もうほんと、思いついたらすぐ言ってほしい(笑)。
――ブクロさん、思いついたらすぐ森田さんに言ってあげてください(笑)。お笑いのネタというのは、一度観たネタでも、面白いものは何度観ても面白いです。セリフもほぼ覚えているし、オチも知っているのに、なぜでしょう?
森田:一度目はなんとなく観ていたフリが後になって効いていることを、二度目に観た時に気づいたりするからじゃないですか。僕ら自身も後から「ここが面白くなるのか」と気づくこともあるんですよ。たとえば、昨年のキングオブコント決勝でやった「予備校」で、僕が演じた「鼓舞する人」が窓の向こうでゆ~っくり歩くと笑いが起こるんですが、あれはいろんなライブで披露していくなかで、自然に笑いが起こった部分で、それがわかってから、意識して動くようになりました。そうしたパターンもあります。
――さらば青春の光は、コントと漫才、どちらも賞レースの決勝戦に行くほど、クオリティが高い作品を作りますよね。そうした“二刀流”のコンビはお二人の他に、中川家、かまいたち、ジャルジャルなど、本当に数少ないと思います。とはいえ、お二人の軸はコントですよね?
森田:そうですね、コントです。漫才のネタはM-1の前に作るぐらいですから。どちらも出られるなら出ておこう、といった気持ちで両方出ていたんですが、やはりM-1に向けて一年間、劇場で漫才の舞台をたくさん踏んだ人たちに勝てるほど、甘くないですよ。
東ブクロ:漫才も面白いと言っていただけるのはありがたいですが、もう僕らがM-1で勝つ可能性はないです。これ、書いてもらっても大丈夫ですよ。本当にそう思っているんで。
森田:昨年の決勝を観て、いよいよ僕らが勝てる時代ではなくなった、と痛感しました。一つの発想を最初から猛スピードでやってずっと笑わせないと勝てない。僕らのように前フリが長いタイプが勝てる賞レースではないんだろうと思う。今年はもうM-1は出ないかもしれません。そのぶん、本領発揮できるコントに集中するつもりです。
売れなかったら、すべて自分たちの責任
――漫才もまた観たいので、どこかでやっていただけたらと思いますが……。ところで、さらば青春の光は大手事務所ではなく、個人事務所でこれだけ活躍している、というのも稀有な例です。なんやかんやあって大手から独立したあと、またなんやかんやあって……なんやかんやの内容については読者の皆さんにググっていただくとして(笑)。
森田:はははは、ググったらきっと、LEE読者さんが眉をしかめますね(笑)。
東ブクロ:いや、まあ、その、ご迷惑をおかけしました。
――それでも、といったら失礼ですが、それでもこれだけ活躍していらっしゃるのは、本当に実力がある証だと思います。独立して、よかったですか?
森田:うーん、もちろん、苦労もありますよ。僕らには常に出演できるような劇場がありませんし、いろいろあったんでCMの話もきませんし(笑)。ただ、老若男女にウケるネタを作っている自信はある。これで売れなかったら、自分たちの責任で、誰のせいでもない、とシンプルで言い訳のきかない状況ですから、ある意味で、清々しい気持ちではあります。
東ブクロ:最初の一年くらい、仕事がほとんどなかったですけどね。
森田:ただ、食えてはいて、その延長でここまでやれてきたから、自分らでやってよかったんじゃないかな、と今は思っています。
東ブクロ:楽やなあ、と感じることはないし、今も自転車操業です。事務所仲間がおったら楽しいやろな、と思うことはあります。でも、そうですね、個人事務所で困るのはそれくらいかな。やりたい、と思ったことを自分たちで決定して、すぐになんでもやってみられるのはいいですね。
――依頼者から直接受けた“言い値”でCMを制作する「森東広告堂」という企画もすごいですよね。
森田:さっきも言ったように、僕らにはなかなかCMの話はきませんから(笑)、直接、CMをとっていこうと始めた企画です。本当に安い“言い値”もありますし、それなりに出してくださる企業もあります。値段によってCMの長さやかける経費は変わりますが、いずれにしても、僕たち自身がCMの内容を考えて制作します。
――フットワークの軽さも個人事務所ならではですね。今日は長時間、おつきあいくださって、ありがとうございました。ライブ、楽しみにしています。
森田:いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました。
東ブクロ:また、よろしくお願いしますね!
シャープな切り口のネタが豊富な「さらば青春の光」。お会いする前は緊張していましたが、素顔のお二人は物腰やわらかで、インタビューしやすい雰囲気を作ってくれました。大好きな芸人さんがますます好きになりました!
取材・文=中沢明子 撮影=細谷悠美 取材協力:SALTY SUNNY BONDI CAFE
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中沢明子 Akiko Nakazawa
ライター・出版ディレクター
1969年、東京都生まれ。女性誌からビジネス誌まで幅広い媒体で執筆。LEE本誌では主にインタビュー記事を担当。著書に『埼玉化する日本』(イースト・プレス)『遠足型消費の時代』(朝日新聞出版)など。