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私自身の手から生まれたアート

【石井佳苗さんのインテリア名品】「掛け軸」墨をすり、言葉を描く。余白をはかり、私らしく仕立てる

  • 石井佳苗

2026.09.27

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連載

KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items

スタイリスト

石井佳苗の「インテリア名品」

テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。最近は自分の手から生まれるアート、「書」に魅力を感じています。

石井佳苗さん

石井佳苗さん

Kanae Ishii

スタイリスト

雑誌や書籍、広告など多分野で活躍するインテリアスタイリスト。住まいづくりの感覚を磨くヒントを綴った近著『Heima』(扶桑社)も好評。オンラインレッスンは今年で7年目に。

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38.

[表具]Mounting

掛け軸

Made in:Japan
Item:Hanging scroll
掛け軸

墨をすり、言葉を描く。余白をはかり、私らしく仕立てる

書は、墨一色の芸術。そしてわが家で唯一、私自身の手から生まれたアートといえるでしょう。

実は、書道は幼い頃から親しんでいる趣味。小学生から高校生まで長く習い、ここ2年ほど、書家の鈴木猛利先生について学び直しています。以前はかっちりとした楷書しか書かなかったのですが、今は草書や行書を自分が納得のいくように書くことが目標。書道のおもしろさは、字の形だけでなく、紙の選び方ひとつ、墨のすり加減ひとつで、作品の空気が大きく変わること。お稽古は短冊で、発表会では半紙に文字を書いていますが、墨の濃淡、余白の取り方……自分で決めるとなるとすべてに意識を向ける必要があります。

最近、「よく書けたな」と思えたものを、好みの布を使って表装し、掛け軸の形にしています。

骨董の印象が強い掛け軸は、インテリアアイテムとして取り入れるには難しいと感じるかもしれません。けれど、自分で書いたものを仕立てれば気軽ですし、ひとつ壁に掛けてみるだけで自然と床の間に似た雰囲気が出て、空間が静かに締まります。

布の色、質感、書とのバランスをどう取るか。さらに、「軸先」と呼ばれる部位もポイントになるので、色や素材にこだわって選ぶのもまた楽しいもの。何よりじっくりと墨をすれば、その香りにどこか懐かしさと安らぎを感じるはず。字は人を表すといいます。まずは気軽に硯に向かって、書いてみたい言葉を探してみることから始めてはいかがでしょう。

玄関を入って前面の壁に、春の光を意味する造語を。表装の布はシルクの藍染。

玄関を入って前面の壁に、春の光を意味する造語を。表装の布はシルクの藍染。「私はいつも安曇野にある『御表具 田(でん)』の岸野 田さんにお願いしています。相談しながら生地を決めるのも楽しい時間。すべてを自分で選ぶ“おあつらえ”が贅沢です」(石井佳苗さん)。下に“床の花”のようにグリーンを生けることで空間がいきいきと。

短冊掛けをひとつ持っておけば、入れ替えが手軽にできる。

短冊掛けをひとつ持っておけば、入れ替えが手軽にできる。「お稽古では、そのときに響く言葉を書きます。知らなかった言葉の意味を知るのも楽しい」(石井佳苗さん)

Item:

Hanging scroll

Japan

自分の内面に合う言葉は、その人らしいインテリアにもなじみます

ある日に書いた「沁」の文字。表装に使った布は、ペルーに住むシピボの人々による泥染の布。

ある日に書いた「沁」の文字。「意味を調べながら、その瞬間の心にぴたりと寄り添う言葉を探し当てることから始めます。どのくらい墨をすれば思った濃さになるか、美しくにじむか。文字一点に集中できる時間は貴重です」(石井佳苗さん)。表装に使った布は、ペルーに住むシピボの人々による泥染の布。「たくさん布をストックしているのですが、なかなか活用できず。掛け軸に生かす方法を知って、うれしくなりました」(石井佳苗さん)

猫

Staff Credit

撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2026年LEE10月号(9/7発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。

石井佳苗 Kanae Ishii

インテリアスタイリスト

「カッシーナ・イクスシー」にて10年間勤務後、独立。雑誌や書籍、広告など多分野にわたる活躍で知られる。住まい作りの感覚を磨くヒントを綴った近著『Heima』(扶桑社)も好評。初心者にもわかりやすいオンラインレッスンも行っている。

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