連載
KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を毎月1点ずつ紹介します。アートの中でも最近惹かれるのは写真。視覚だけでなく心まで揺さぶられます。
file
36.
[アート]Art

Item:Art photography
アート写真
写真家によって切り取られた一瞬。壁にかければ、もうひとつの窓
写真は“瞬間”です。そのときにだけ漂っていた空気と光が、写真家の目によって切り取られる。まるで、“今、この瞬間”を、写真家がつかまえた一瞬に立ち会えたかのような感覚。私は写真というアートの、そのあり方にロマンを感じています。加えて、写真に惹かれるのは刹那……はかなさという美しさゆえでしょうか。「これとまったく同じ瞬間は、もう二度と訪れない」という、生きていくうえで当然のことではあるのですが、日々忘れがちなこと。それをあらためて目の前に突きつけられる感覚があって、胸に迫ってくるものがあります。
さらに、写真が“アート”として成立する要素として忘れてはいけないのが、額装の力。“写っているもの”の強さを引き立てるのは、余白をどうとるか、どのような素材、色、幅のフレームを選ぶかにも大きく左右されます。例えば、左ページの高橋ヨーコさんの写真は、周囲の白い部分と額まで含めてひとつの作品です。写されたものに余白と外縁を与え、ひとつの世界を作り上げる。そこまで考え尽くされて初めて、“作品”になっているんですね。
飾る場所は選びませんが、実用的な話をすれば、風景写真は“窓”としての役割も期待できます。窓のない部屋に抜け感ある風景写真を飾れば、空間に開放感が漂います。自分の眺めていたい風景を、手に入れる。そんな視点で選んでみると、写真をアートとして飾ることに、気軽に踏み出せるのではないでしょうか。

Louis,T Sugawaさんの作品。「ヨーロッパの倉庫を写したもの。小雨が降っていて、その空気感がなんともしっとりと静謐でいい。カラーなのですが色みもぐっと抑えられていて、“いつまでも見ていたい風景”なんです」(石井佳苗さん)

高橋春織さんの作品は、彼女のセルフポートレート。「若さの中の一瞬を捉えたカットは、まさに人生で戻ることのない美しさ。街の中、水着だけで立つ勇気と、その瞬間にしか出ない表情もリアル。構図のおもしろさにも目を惹かれます」(石井佳苗さん)
Photographer:
Yoko Takahashi
Japan, 2025
まるで自分がそこに居合わせたかのような、空間と時間を旅する気持ちに

昨春、東京・代官山のシソンギャラリーで開催された個展にて購入。「壁とフロアに反射する光、たまたま歩いていたらしき階段を登る人。狙おうとしても狙えない、“何かが奇跡的に一点に集中して生まれた一瞬”のような光景に惹かれました」(石井佳苗さん)。撮影場所は、旧ソ連に属していた沿ドニエストル共和国内のバスターミナル。写真家の高橋ヨーコさんは、たくさんの人が行き交ってきた痕跡を感じる中央駅のような場所が好きで、よく撮影に訪れるそう。

Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2026年LEE7月号(6/5発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。
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