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ヨシタケシンスケさんのもとへ菊池亜希子さんが「おじゃまします!」

【ヨシタケシンスケさん×菊池亜希子さん】アトリエにおじゃまして初対談!創作のこと、子育ての事、生き方から死生観まで語り合いました!

2026.09.14

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お互い気になる存在、共通点も多い2人が初対談

ヨシタケシンスケさんのもとへ菊池亜希子さんが「おじゃまします!」

ヨシタケシンスケさんと菊池亜希子さん
(菊池さん)シャツ¥49500・パンツ¥52800・衿¥19800/キタン ピアス¥61600/マリハ ソックス/スタイリスト私物

愛らしいのにシュール。シンプルなのに哲学的。絵本作家・ヨシタケシンスケさんのそんな世界観にお子さんとともに魅了されているという菊池亜希子さん。作品が生まれる場所で、創作のこと、子育てのこと、生き方から死生観まで、じっくりと語り合いました。

Index
  1. ヨシタケシンスケさんのもとへ菊池亜希子さんが「おじゃまします!」
    1. ヨシタケシンスケさん
    2. 菊池亜希子さん
  2. 出会うべきタイミングで出会うべき作品を読むと「考える子」になりますね
  3. 僕の本を読んだ子はたいてい親を困らせる。だから、よく謝ってます
  4. きれいじゃない。おりこうじゃない。だから読むたび、ハッとさせられる
  5. 親や先生が伝えられないことを表現する義務があるんじゃないか
  6. 自分に都合のいい理屈を、いつまでも考え続けていたい
  7. 何年後になっても答え合わせができればそれでいいんですね
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ヨシタケシンスケさん

ヨシタケシンスケさん

SHINSUKE YOSHITAKE

絵本作家

1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。2013年に絵本作家としてデビュー以降、著書は15カ国以上で翻訳、出版されている。近刊に絵本『まてないの』(ブロンズ新社)、『お悩み相談 そんなこともアラーナ』(白泉社)など。

菊池亜希子さん

菊池亜希子さん

AKIKO KIKUCHI

モデル、俳優、文筆家

1982年、岐阜県生まれ。ファッション誌のモデルを経て俳優、文筆家に。『絵本のはなし』(白泉社)など、著書ではイラストも。最近の出演作にNHK連続テレビ小説『風、薫る』、Netflix『九条の大罪』がある。

出会うべきタイミングで出会うべき作品を読むと「考える子」になりますね

KIKUCHI

僕の本を読んだ子はたいてい親を困らせる。だから、よく謝ってます

YOSHITAKE

菊池 (封筒を2つ差し出して)これ、うちの子たちから預かったファンレターです。小3の娘と小1の息子から。

ヨシタケ えーっ! (手に取り)うわ、かわいい。ありがとうございます。……へぇ、お姉ちゃんは『このあと どうしちゃおう』がいちばん好きなのか。すごい。センスがいい。

菊池 娘は特に大ファンで、『ころべばいいのに』も共通の愛読書です。イヤなことがあったときに〈かわいそうポイント〉がたまるのがいいよねって言い合ってて。ほかの本も、ほぼコンプリートしてるんじゃないかな。そういえば彼女が1年生の頃、『わたしのわごむはわたさない』(PHP研究所)をすごく読んでいて、どうしてなんだろうと思ったんですが、どうもその頃、彼女の内面世界がグッと濃くなったみたいで「それはママの好みでしょ? 私は私だから」なんて言ってたので、手に取るべきタイミングで本と出会ってたんでしょう。

ヨシタケ うれしいですね。でも、読んでくれた子どもたちの話を聞くと、だいたい親を困らせてるんですよ(笑)。「教育によくなかったかもしれません」って、よく親御さんに謝ってます。

菊池 ふふふ。でも、考える子になりますよ。考えることを諦めない子に。

ヨシタケ 考えるって、「考えてもいいんだ」という発見だったりしますよね。『このあと〜』も、死について身近な人と笑って話し合える、そのきっかけを作りたいというのが描いた目的でした。読んで悲しくなったら失敗で、読みながら「自分だったら、こういうのがいいなぁ」と思ってもらいたかったんです。

菊池 最近、おじいちゃんが亡くなったこともあって、娘にとってはまさに!という時期だったんですが、楽しそうに読んでましたよ。『ちょっぴりながもち するそうです』は、私が大好き。これは、けっこう大人向けですね。

ヨシタケ そうですね。ちっちゃい子だと、キョトンとするページが多いかな。

菊池 確かに。〈たったひとつの真実は この世で見つけなくてもいいそうです〉に「わかるわー」って言われても……。

ヨシタケ ハハハ。でも、大人になってもう1回読んで「こういうことだったのか!」と思い出してもらえたらなと。だから、あえてキョトンとしてもらって、その人の中にずっと残る、そんな本を作りたいんです。絵本って、人生で2回出会うことができるメディアで、そこがすごくいいところだと思うから。

菊池 ヨシタケ家のお子さんたちも、やっぱりヨシタケさんの絵本を読んで?

ヨシタケ うちは男子2人で、上は大学2年、下は中3です。小さかった頃は読んでましたけど、いまは「うん、おもしろかったよ」って褒めてくれます。棒読みで(笑)。最初の本を出したのが40歳のときなので、上の子が生まれた段階では、まだ絵本作家じゃなかったんです。

菊池 記事で読んだんですが、2人とも絵を描くのが好きだそうですね。そういう方面に進みそうなんですか。

ヨシタケ うーん、どうだろう。特に、上の子の尊敬している作家さんは、みんな美大卒じゃないんですよね。僕も始めるのが遅かった人間なので、表現はいつになってもできるから、専門の道に進まなくても、とはよく言っていて。だから彼らも、そのときそのときに興味のあることをやっているという感じです。

菊池 ヨシタケさんご自身も、ずっと絵を描いている子どもだったんでしょうか。

ヨシタケ それが、まったく描いていなくて。2つ上の姉は何をやってもめっちゃうまくて、文章や書道で賞をもらって絵も褒められていたので、僕は何をしてもかなわなかった。唯一、工作だけはできたので、僕が何か作るたびに、母が一生懸命褒めてくれるんです。

菊池 「この子には工作が!」って。

ヨシタケ そうそう。だから、ものを作るのは好きになりました。その後、大学で美術系に進むんですが、先生から「こんな絵でよく大学に入れたな」と大勢の前で言われて。そのときから描いたものを人に見せるのはやめて、一人で描くようになりました。それが、作品のもとになっているスケッチの始まりです。

菊池 誰かに見せるための絵ではなく?

ヨシタケ ええ、自分をおもしろがらせるためだけの。「人に見せない、お手本を見ない、ペンで描く」の3つをルールにしました。絵本は家にいっぱいあって、母から読み聞かせてもらったりしたことはあったんですが、まさか自分が絵本を描くことになるとは思いませんでした。

菊池 私も、これまで何かをするために何かを学んでというやり方をしてきたわけではなくて……。でも、子どもの頃から絵本が大好きで、いまも子どもにというより自分のために読んでいて、絵本に支えてもらっているような気がしてます。

ヨシタケ (本棚から洋書絵本を取り出して)僕はこういう、図鑑みたいな絵本が好きだったんです。リチャード・スキャリーの作品(『スキャリーおじさん』シリーズ。日本語版はBL出版刊)のような。

菊池 わぁ、年季が入ってる! 何かを探す絵本って、楽しいですよね。かこさとしさんの『とこちゃんはどこ』(松岡享子作・加古里子絵。福音館書店)とか。

ヨシタケ 『からすのパンやさん』(偕成社)も。僕がいちばん好きなのは、いろんなパンがずらっと並ぶ見開きで、「絵本を描きませんか?」と言われたときに思い浮かべたのが、まさにそのページでした。デビュー作の『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)には、そんな、自分が好きだった絵本の要素を全部入れたんです。

菊池 へぇー。私も絵は好きだったんですが、クラスには美術部で描いているような上手な子はほかにいたから、教科書のすみっこにちょこちょこと描くくらい。絵の方面に進もうとはまったく思いませんでした。でも、いま子育てをしていると、子どもにはどうにかして得意なことを見つけてほしいと思いますね。得意なことがあれば、人生、楽しく過ごせるんじゃないかって。自分だって何かを明確に見つけたわけでなく、いまだに行ったり来たりしている状態なんですけど。

ヨシタケ 僕はスケッチをしていたことで、それがわかりやすくなったのかな。描いたものを見て「俺、これが好きなんだ」と、自分の興味や関心を客観視できたというか。絵である必要はぜんぜんなくて文章でも写真でも、やり方は人それぞれ。とにかくいいなと思ったものをコレクションしておくと、そのときどきに自分の中でアツいものがよくわかるし、人にも説明しやすかったです。

菊池 うーん、確かに。私も日記みたいなものをつけていたんですが、忙しくなって、なかなかできなくなっていて……。自分はできていないのに、この間、「好きなものを描いてみたら?」って、子どもにまっさらなノートを1冊ずつ渡してみました。タブレットを使えるのもいいけど、やっぱ紙でしょ!と思うところがあって。でも、子どもは人から言われて何かをやるのって、イヤなんですよね。

ヨシタケ イヤですよね。特に親から。

菊池 自分もそうだったのに、気がつくと何かにつけて「なんでやらないの!」って注意したりしている自分がいて。

ヨシタケ 「ああいう言い方する必要ないよな」とか思ってたのにね(笑)。でも親としては立場上、言わなきゃいけないこともあって、どうにか平和に伝えられないかと考えるんだけど、目の前にいるとこっちもイライラするし。で、気がつくと目の前の子どもは、あの頃の自分と同じ顔をしてるんです。ぜんぜん納得してない顔。あー、そうなるよねって。

菊池 うちも! まさにそうです。ちょっと正論めいたことを言うと、「お勉強の時間みたいだね」ってピシャッと言われて。

ヨシタケ アハハ。だから、絵本作家という仕事の時間に「こんなふうに答えたらどうだろう?」「こういうとらえ方があってもいいんじゃないか」ということを自分のためにも提案して、行動の選択肢を少しずつ増やしていけたらいいんじゃないかと……。絵本を通してそのあたりをおもしろくはぐらかしていけないかということがモチベーションになってます。

ヨシタケシンスケさんと菊池亜希子さんの対談

きれいじゃない。おりこうじゃない。だから読むたび、ハッとさせられる

KIKUCHI



親や先生が伝えられないことを表現する義務があるんじゃないか

YOSHITAKE

菊池 ヨシタケさんの作品には、きれいごとじゃない部分やおりこうじゃないこともちゃんと書かれているから、ページをめくるたびにハッとさせられますね。どうしても苦手な人はいるし、いたっていいんだよと書かれていると、読み聞かせながら私のほうが「……そっか」って。

ヨシタケ 「叶わない夢って、あるからね」なんて、親や先生としては言えませんよね。でも実際は、叶わない夢のほうが多かったりする。じゃあ子どもはどこで本当のことを知るのかというと、やっぱり絵本だったり、漫画や映画、アニメの物語だったりするわけで。夢が叶わないこともあるし、お父さんとお母さんの仲が悪いこともある、そんな実際の姿を学んでいくんだろうなと思うと、絵本には、親や先生や教科書が触れられないものを表現する義務があるんじゃないかな、と。「そうそう、昔、近所に変なおじさんがいてね……」くらいの立ち位置で。

菊池 そういえば、私の義理の伯父が、まさにそういう人でした。自称・絵描きだったんですけど、本棚の感じとかが、ちょっとヨシタケさんと似ているような(笑)。ヘンテコだったんですけど、あの頃、訪ねたおじさんの部屋の、ふんわりと光で満たされた感じなども含めて、いまもよく覚えています。

ヨシタケ いいですね。僕も僕の作品も、そんな存在でありたいです。健全な青少年の育成に実は必要な、不健全なものに。

ヨシタケシンスケさんと菊池亜希子さんの対談

自分に都合のいい理屈を、いつまでも考え続けていたい

YOSHITAKE

何年後になっても答え合わせができればそれでいいんですね

KIKUCHI

菊池 『メメンとモリ』(KADOKAWA)の中の〈思ってたのとちがうから、世界はつらいし、きびしいし、たのしいし、うつくしい〉という言葉も、すごく心に残ってます。確かにそうだなぁって。

ヨシタケ よく「人生、楽しんだもん勝ちだぜ!」って言われるけど、どんなに頑張っても楽しく生きられない人もいますよね。だったら、人生の目標を「思ってたのと違う!」ってびっくりすることにしておくと、得か損かみたいな考え方から少し自由になれる気がしたんです。そういう、自分にとって都合のいい理屈を、ぐるぐると考えているのが好きです。

菊池 理屈は、フッとひらめくものなんですか? 私のイメージだと、ヨシタケさんは目に留まったものを書き留めて、それを頭の中でこねて発酵させて……だからボーッとされることも多いのかなと。

ヨシタケ ボーッとすること、多いですね。で、窓際のベンチで寝ています。

菊池 寝ている間に考えていたことが淘汰されて、起きたら何かがひらめく?

ヨシタケ うーん、寝かせることは必要で、それも1回じゃ無理で……だから「とりあえず、来世かな」と(笑)。生まれ変われるって大発明ですよね。考えた人、ほんと、天才だと思う。

菊池 アハハ! ヨシタケさん、お坊さんに向いていそうです。

ヨシタケ 見た目もね(笑)。確かに、いまの世の中を信用してないところは、ある意味仏教的というか、東洋思想に近い部分があるんじゃないかと。絵本が描けなくなったら、仏門に入るか! でも、お経覚えるのが大変そうだなぁ。

菊池 (声をひそめて)あの、全部放り投げたくなることとか、ないですか?

ヨシタケ (同じく)あるんですよ。昔から、破滅願望が。描いたものが全部燃えて、嘘もバレて、みんなから糾弾されて、もうダメだ!ってときに、初めて僕は安心できるんじゃないか?と。

菊池 そうしてまた生まれる!的な。

ヨシタケ そうそう。「人ってそういうものだよ」みたいなことを、生き様を通じて表現できる人に憧れますね。一人の人の中にはいろんな考えが混ざっていて、すごく軸のぶれた存在なんだというのが、本当は正しいような気がしていて。それを物語にするとしたら、何にたとえればいいだろう?とぐるぐる考えて……やっぱり、ここで寝てしまう(笑)。

菊池 ふふふ。読者の側も、物語がずっと頭を巡っていて、ふと「そうか、ちょっぴり長もちすればいいか」と腑に落ちたりします。読んだときに答えにたどり着けなくても、ぜんぜんいいんですよね。何年後かに答え合わせができたら……私もそうだし、子どもたちが、この先、反抗期になったときとかに「これだ!」って見つけてくれたらいいなぁ。

Staff Credit

撮影/田尾沙織 ヘア&メイク/草場妙子 スタイリスト/石上美津江 取材・文/大谷道子
こちらは2026年LEE10月号(9/7発売)「ヨシタケシンスケさんのもとへ菊池亜希子さんが「おじゃまします!」」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。

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