ライター石井絵里がおすすめ!
【7月のおすすめ本】張天翼『雪の如く 山の如く』、本郷和人『こわい日本史』他2編
2026.07.14
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石井絵里さん
ライター
1泊2日で台湾へ。コロナ禍以来の海外旅行だったけど、地元の書店を巡ることができ大満足でした!
『雪の如く 山の如く』
著:張天翼(ジャン ティエンイー) 訳:濱田麻矢 ¥2420/集英社
同じ名を持つ女性たちの、痛みや哀しみに共感必至な話題の中国文学

私の名前「えり」は、わりとかぶりがちだ。とはいえ、漢字にはいろいろなパターンがある。自分の場合は里を間違えられやすいので、書き方を確認されるときは「深津絵里さんの、絵里という字です」と、言うことにしている。深津さんがビッグネームすぎて、なんか申し訳ない気がして、つい小声に……。仕事の現場で「えり」さんに会うことも多い。名刺交換したときに、同じ名前だと親近感が湧くし、漢字を確認し合う流れになるのもおもしろい。そんなときはいつも、世の中にはたくさんの「えり」さんがいるんだなあ。名前は一緒だけど、みんなさまざまな生き方をしているのだなあとしみじみする。というわけで今月は、「リーリー」という同じ名前で別の漢字を持つ、中国の6人の女性たちの姿を描いた短編集をご紹介。
冒頭の作品『ただ座りたいだけなのに』のヒロイン・リーリーは、 ’90年代の大学生。旧正月に実家に帰ろうとするも、養父から「座席なし」の切符での帰省を強いられる。男の子が大事にされていた時代背景も相まって、周りの顔色をうかがいがちなリーリー。故郷に帰るまでの電車の中で、人々の言動に戸惑う彼女の心の機微が描かれる。
『春の塩』のリーリーは、彼氏とともに節約しながらヨーロッパ旅行を夢見ていたが、思いがけず妊娠が発覚。中国での“一般的”な妻と母のレールに乗せられていく。個人としてのリーリーが、尊重されなくなっていく戸惑い、怒り、葛藤が胸に迫る。
『雪山』に登場するリーリーは、一人息子を亡くした中年女性。その心の傷が癒えないまま、地元を離れて暮らしている。
同じ名前を持ちながら、年齢も環境もまったく違う彼女たちが次々と登場する、この作品。通底しているのは、社会や周囲からの圧力や無理解と、それに伴う哀しみ。中国では2022年に出版されるや否や、大きな話題を呼び、女性たちから共感を得ている。「リーリー」は、中国人女性にはわりと多い名前とか。平凡な女性たちの小さな物語。現代中国文学のリアルに触れてみて。
『こわい日本史』
本郷和人 ¥1760/扶桑社

大河ドラマや歴史番組の考証も手がけてきた、人気歴史学者による日本史の解説書。中世から幕末までの時代を〝こわさ〞をキーワードに深掘りした一冊。怨霊のたたりを恐れた平安時代、鎌倉時代は合戦で〝敵方の首〞を巡る執念が行き交っていたなど、具体的なエピソードとゾクゾクするような話がいっぱい。歴史を引き合いに出す雑談や会話のネタ本としても重宝しそう。
『パリの幸せおこもり暮らし』
井筒麻三子 ¥1980/講談社

パリ在住の人気YouTuberの著者による、おうち暮らしをまとめた一冊。〝すっきりしすぎず、でもごちゃつかせない〞インテリアへのこだわり、異国の地で日本食をはじめとした料理を作るコツ、大好きな食器のコレクションとそれを日常使いをするポイントなど。パリの素敵な写真に癒されながらも、私たちが生活のうえでマネできるヒントがいっぱい!
『老いるショック大賞』
編:みうらじゅん ¥1540/筑摩書房

自分が老いたことを痛感したときの衝撃=「老いるショック」。物忘れや体力の衰え、思い込みなど、老いるショッカーたちのくすりと笑えるエピソードの数々に、みうらじゅんさんが深夜放送ラジオのノリでコメント。さらに、オギリマサホさんによるお年寄りイラストで哀愁が倍増。年を重ねることを前向きにもとらえることもでき、LEE世代の予習としても最適一冊かも。
Staff Credit
イラストレーション/SAITOE
こちらは2026年LEE8・9月合併号(7/7発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
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