
中谷美紀(なかたに・みき)●1976年、東京都出身。1993年に俳優デビュー。『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞。2013年には『ロスト・イン・ヨンカーズ』で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞するなど舞台でも活躍。エッセイにもファンが多く、『インド旅行記』シリーズや『オーストリア滞在記』『文はやりたし』など著書多数。Instagram(mikinakatanioffiziell)も人気。
エッセイにもファンが多い、中谷美紀さんの最新作、『大草原の小さな農家』が2026年6月に発売されました。そこには、オーストリアで築130年という古い家に引っ越し、大自然の中での新しい暮らしが綴られています。
インタビューの前半では、新たな土地での家づくり、庭づくりに奮闘する日々についておうかがいしました。後半は、夫のフェヒナーさん同様、本作にたびたび登場する継娘のJさんについても聞きました。
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確実に成長している継娘。彼女は我が人生のミューズです。

Jさんのことを「我が人生のミューズ」と語る中谷さんの言葉がじんわりと胸に響きます。
「エッセイの中では、わかりやすく説明するために“継娘”と表記していますが、私は無理に母親の代わりをしようとも思っていないんです。親戚のおばさんくらいの感覚でつきあっていますし、彼女も私に母親の役割は求めていないと思うんです。それでも、私にとって、やはりかけがえのない存在ですね」
休暇を中谷さんとともにすることもあり、一緒にパリを観光したり、音楽フェスに行ったりと、その関係性は、前作のときより親密になっているようでしょうか。
「じつは距離感はそんなに変わっていないんです。思春期なので、こちらは少々気を遣うこともありますが、あちらは全く遠慮がなく、ストレートな物言いは小さい頃から変わりません。
ただ、彼女も14歳になり、以前は私がドイツ語がうまく話せないことに理解がなかったんですけれど、自分が英語やフランス語を学ぶようになって、私が重ねてきた努力を想像することができるようになったんだと思います。以前よりやさしくなりました」
教えられること、学ぶことが多いです

「Jが通うインターナショナルスクールにはいろいろな国籍の生徒がいて、ウクライナから難民として来た生徒などもいます。その土地の言葉を自由に話せない相手がどこまで理解しているかということを慮りながら話すことができるようになったんですね。成長していますね」としみじみ。
中谷さんを通して日本への興味もわいているようです。
「日本にはまだ一度も来たことがないのですが、私のいないところで、ものすごく日本通、お鮨通、みたいな話をしているんです(笑)。それがとってもかわいくて。仕事でたびたび留守にするため、誕生日や大切な記念日を一緒に祝えないことも多く、私の仕事のこともわかっているようです。
SNSに子どもの写真を載せることには注意も必要ですが、載せると彼女が喜んでくれるので、危険にならない程度に、ちょこっと載せたりしています」
一方、中谷さんは、Jさんに教えられることも多いと語ります。
「昔からあるドイツの慣用句を私が使ったら、『今はそれは差別的な表現でもあるからダメだよ』と言われたり、家族との会話の中で『今の発言はボディシェイミングだ』とダメ出しをしたり。エシカル消費が身についているところも、学ぶことばかりです。
Jの学校でもディベートの授業があって、選挙や世界情勢の話を、ときには喧嘩になるくらい熱くやりあうらしいです。食卓でも普通に政治の話題になったりするので驚かされます。
また、こう続けます。
「日本はまだまだ戦争が遠い国の話かもしれないですけれど、ヨーロッパはウクライナやガザにも近いので、それだけ危機感を抱いているのかもしれないですね。
我が家の庭仕事を手伝ってくださる方もコソボからの難民ですし、必要なときに家事などのお手伝いをお願いしている方はウクライナからの難民で、戦争の犠牲になった方々の悲しみを身近に感じることがあります。戦争だけでなく、天災や環境破壊など、今は世界のどこにいても安全な場所はないと感じます。きれいごとかもしれませんが、少しでもみんなが平和で穏やかに暮らせるように願うばかりです」
農作業から家族、そして世界情勢へと思いを馳せ、切実な言葉で綴る中谷さん。エッセイを読むことで、私たちも遠く思索の世界へと連れていってくれそうです。
Staff Credit
撮影/伊藤彰紀(aosora) ヘア&メイク/下田英里 スタイリスト/田中雅美 取材・文/佐藤裕美
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