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エッセイ集『大草原の小さな農家』が2026年6月11日発売

中谷美紀さんがオーストリアで田舎へお引越し!古い家の改装も、夫と一緒に、できる限り「自分たちの手で」【インタビュー前編】

2026.06.11 更新日:2026.06.12

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『大草原の小さな農家』中谷美紀・著2026年6月11日発売。(幻冬舎文庫)インタビュー 著者近影(寄り)

女優として活躍する傍ら、旅行記を書いたり、日々のよしなしごとを綴ったりと、エッセイストとしても年月を重ねてきた中谷美紀さん。ときにコミカル、ときにシニカルなその筆致で、いつも読者を楽しませてくれています。

そんな中谷さんの最新作が『大草原の小さな農家』。そこには築130年という古い家に引っ越し、大自然の中での新しい暮らしが綴られています。

Profile
中谷美紀(なかたに・みき)●1976年、東京都出身。1993年に俳優デビュー。『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞。2013年には『ロスト・イン・ヨンカーズ』で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞するなど舞台でも活躍。エッセイにもファンが多く、『インド旅行記』シリーズや『オーストリア滞在記』『文はやりたし』など著書多数。Instagram(@mikinakatanioffiziell)も人気。

オーストリアの新たな地への引っ越し

『大草原の小さな農家』中谷美紀・著2026年6月11日発売。(幻冬舎文庫) 表紙
舞踏会への参加、オペラ鑑賞、継娘とのパリ旅行、畑仕事にフードフォレスト作り……とオーストリアでのめまぐるしい日常を綴った中谷さんのエッセイ集。本人撮影の美しい大自然の写真も魅力的。文芸誌「小説幻冬」の連載『文はやりたし』を収録した文庫オリジナル。2026年6月11日発売。(幻冬舎文庫)

日々の暮らしを綴った中谷美紀さんのエッセイ集『大草原の小さな農家』が2026年6月に出版されました。中谷さんはドイツ人のヴィオラ奏者、ティロ・フェヒナーさんと結婚して以来、オーストリアで暮らしています。そんな海外での暮らしを生き生きと綴った本作。世界最高峰とも言われるザルツブルク音楽祭やウィーンフィルが開催する夢のような舞踏会など、音楽の都ならではの文化的で華やかな生活も魅力的ですが、今回の最大のトピックは、なんといっても「お引っ越し」!

都会から離れた新たな地での暮らしが始まったのです。

「これまでも都会から離れた自然豊かな場所で暮らしていたのですが、最近、周辺の森の住宅化が進んでしまって、静かで美しい環境が損なわれつつあります。それで家を探していたところ、理想の土地に出あうことができました」

田舎の小さな一軒家は、私たちにとって理想の家でした

『大草原の小さな農家』中谷美紀・著2026年6月11日発売。(幻冬舎文庫) 口絵よりトラクターの画像
『大草原の小さな農家』(幻冬舎)より

それは農村地帯の大草原にぽつんとたたずむ一軒家で、築130年の古い農家を改築したという平屋の小さな家。広大な庭には、さくらんぼ、桃、りんご、イチヂクなどの果樹が植えられ、熱資源用の森が隣接していました。

「私も夫も田舎暮らしを求めていたので、まさに運命の出会いでした。ウィーンから車で1時間半くらいのところで、電車も通ってないようなところですけれど、そういう不便さを味わいたいというか、むしろそれを喜びとしています」

大規模な改装工事を自分の手で

『大草原の小さな農家』中谷美紀・著2026年6月11日発売。(幻冬舎文庫)インタビュー 著者近影(寄り)

 古い家は手入れが必要で、庭仕事もたくさんありますが、できる限り「自分たちの手で行う」ことを心がけています

「私はもう少しプロの方にお任せしたほうがいいんじゃないかと思うのですが、夫は創造性豊かで何でも自分でやりたい人なんですね。たとえば雨水を地下の貯水タンクに貯めて、それで樹木に水やりをするのですが、そのためのホースが見えるのは景観的に美しくないから嫌だと。それで地面に何十メートルも穴を掘ってホースを埋めるという作業をしたという写真が、昨日、送られてきました(笑)」

それはかなり本格的。音楽家がそんな肉体労働をして手を痛めたりしたらたいへんでは!?

「そうなんですよ。『ちゃんと手袋をして』『ヘルメットかぶって』と言っているのに、忘れて作業をするので、『トゲが刺さったから抜いてくれ』って。『だから言ったでしょ』と私はあきれながらケアする……そんな毎日です」

そう言って笑う中谷さんですが、何だかとても楽しそう。

「そもそもこの家も住んでいた方のお祖父様がご自分で建てた家なんです。だから屋根が歪んでいたり、壁のレンガが歪んでいたりして、真っ直ぐな線がないんですよ。でも、『その不完全な美を楽しもう』と彼と話しています。とはいえ、穴が開いていて水漏れしたりするので、プロの左官屋さんや配管工の方々のお力を拝借しつつ、夫が床板を自分で貼り替えたり、壁をペンキで塗ったりしています。
 私が原稿の締め切りで忙しいときに、『新しい電気をつけたから、ちょっと見に来て』って自慢げに呼びに来たりするのですが、私はそれどころじゃなくて、全然褒めてあげなくて、申し訳ないと思ったり(笑)」



目指しているのは「フードフォレスト」(食べられる森)

『大草原の小さな農家』中谷美紀・著2026年6月11日発売。(幻冬舎文庫)インタビュー 著者近影(全身)

もちろん中谷さんも日々“野良仕事 ”に精を出しています。 今、目指しているのは、果樹や野菜など、さまざまな植物がバランス良く共生する「フードフォレスト」(食べられる森)作り。

「戦争や温暖化で食糧の価格が跳ね上がったりする時代なので、自分が必要とするぶんは、自分で確保しようという考え方で、今、ヨーロッパで流行っているんです。
 たとえば木を植えるときも、以前だったら木と木は距離を離して植えて、根元の雑草は取って……と、きちんとするところを、フードフォレストの場合は、木の下にもその木と相性のいい植物を植えるんですね。
 酸性の土壌だったらブルーベリーがいいとか、いろいろ考えて。生物多様性を確保すると植物も病気になりにくいし、循環する機能が働くそうです。そんな持続可能な森を目指して日々格闘しています」

土地への愛着は、その視座も大きく変化させています。

「今ここは私たちが住んでいますけれど、自分たちが所有しているという感覚ではないんですね。生涯をかけて二人で森をきれいな状態のまま残して、それを同じ志を持った次の世代に受け渡す。私たちは、その間のつなぎを担っているに過ぎないと思っています」

中谷美紀さんの最新エッセイ『大草原の小さな農家』についてのインタビューは後編に続きます!

Staff Credit

撮影/伊藤彰紀(aosora) ヘア&メイク/下田英里 スタイリスト/田中雅美 取材・文/佐藤裕美

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