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私のウェルネスを探して/能登屋英里さんインタビュー前編

52㎡1LDK築50年の中古マンションを自らフルリノベ。能登屋英里さんに学ぶ、部屋とキャリアの整え方

  • LEE編集部

2025.06.14 更新日:2025.06.16

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能登屋英里さん

今回のゲストは、整理収納アドバイザーでビジュアルコンサルタントの能登屋英里さんです。能登屋さんは、アパレルのディスプレイ業から整理収納アドバイザーになり、個人宅の整理収納アドバイスや企業向けのスタイリングを手掛けてきました。自らデザインしフルリノベーションしたマンションは52㎡を感じさせない解放感とおしゃれさで、多くのメディアに取り上げられています。2022年からはフリーランスを目指す人のオンラインサロン『Ei-RiNOVE』(エイリノベ)を開講し、これまで130名以上の生徒を送り出してきました。

前半では、能登屋さんが整理収納アドバイザーを始めようと思ったきっかけや52㎡のマンションを選んだ理由、仕事を通じて広がった出会いやオンラインサロンを始めた理由について聞きます。「人のリノベーション」と考えるサロンの魅力や今年頑張りたいことについても語ってもらいました。(この記事は全2回の第1回目です)

「片付けられない人の心理を知りたい」と整理収納アドバイザーに

能登屋さんが整理収納アドバイザーの資格を取得しようと思ったきっかけ。それは結婚した時、夫の家にあった山積みの日常品でした。“片付けられない人の心理を知りたい”と思ったのが最初です。

能登屋英里さん

「私自身は小さい頃から物を片付けたり、飾ったりするのが得意でした。夫の家は片付いていて物が少ないのに、実家から届いたジュースが2ケース、トイレットペーパーやティッシュが山積みで出しっぱなしにされていたんです。“人はなぜ片づけられないのか”、また人と暮らす上で片付けられない人の気持ちが分からないと対処法が分からないと思い資格を取得しようと思いました。ちょうど(OURHOME)Emiさんや本多さおりさんといった整理収納アドバイザーが活躍し始めた頃で、そんな職業があると知った頃でもありました」

当時働いていたセレクトショップのディスプレイの仕事を続けながら、徐々に整理収納を仕事にしたいと思うように。ちょうど家探しをしていた時でもあり、今住んでいる52㎡の中古マンションと出会い、自身でフルリノベーションしたことも大きな転機になっています。

能登屋英里さん

「新居を探していた時、郊外の広めのマンションも見たのですが、夫も私も都心部で仕事をしていたこともあり、通勤時間がかかりすぎるのは大変すぎました。決めた予算の中で築浅、新耐震(1981年6月から施行された建築基準法)で探してみると、どこも60㎡以下で良い物件は見つかりませんでした。そこでそれらを一旦無視して探してみると、今住んでいる築50年のマンションに出会いました。マンションの世帯数がそれほど多くなく、何より管理が行き届いていてその築年数に見えませんでした。52㎡にも関わらず角部屋で2方向に窓があり眺望もよく、狭さを感じさせないところも気に入りました。将来的に売却や賃貸を考えた時に、立地的に問題なさそうという点も決めたポイントです」

フリーランスになり、まずは個人向けに整理収納カウンセリングを

お子さんが生まれて3年経った時、フリーランスになることを決意。まずは個人向け整理収納カウンセリングからスタートしました。その後、メディアで紹介されたことや人との出会いが活動を広げるきっかけになりました。

「『整理収納を仕事にする 片づけのプロ10人に聞く、暮らしと人生の整え方』(翔泳社)で紹介されて、Instagramのフォロワー数が増えて、同業の知り合いも増えました。その本を編集していたのが竹村真奈さん。当時はデザイン性やおしゃれさを重視した整理収納術が少なかったせいか、私をとても気に入ってくれ、今では竹村さんとは親友のような存在です。『北欧、暮らしの道具店』のモーニングルーティン動画で取り上げられたことでもフォロワーが増えました。

能登屋英里さん

私の師匠は整理収納アドバイザー1級認定講師の大熊千賀先生ですが、同じように大熊先生から教わって今活躍しているのがRoomStylistのひでまるさん。ひでまるさんは先出の本『整理収納を仕事にする』を愛読書にしていて、私を気に入ってくださったことがきっかけで親交が深まりました。『自分時間を作りだす 5倍速家事』(Gakken)を出したばかりのNagisaさんは整理収納アドバイザー仲間から紹介いただいて、一緒にライターの仕事をしたり、相談に乗ったりしていたのですが、あれよあれよと売れっ子になりました」

参加者自身の考えややりたいことをアウトプットして強みに気づいてもらう「マインドを養うオンラインサロン」

活動を続けるにつれ、暮らしやインテリアのことをもっとたくさんの人に届けたいと思うように。そのためには自分と同じように暮らしの発信をしたり、整理収納の仕事をやってみたいと思うプロの方を増やして、裾野を広げたい。そんな思いからオンラインサロン『Ei-RiNOVE』(エイリノベ)をスタートします。

「フリーランスになってしばらくしてすると、“英里さんって、人の良いところを見つけるのが上手だね”と言われることが多かったんです。動けずに悩んでいる人って、自分自身を認められていないだけで実はすごくできる人が多くて。自分の考えややりたいことをアウトプットしてもらい、強みに気づいてもらう。私は“マインドを養うサロン” と考えています。ある意味、人のリノベーションでもあります。自分の軸を活かして、価値を見出していく。家のリノベーションにも改造して付加価値を高めるという意味がありますが、それと同じですよね。“まず一歩踏み出してみては”と声をかけて背中を押す、そんな役割ができたらと思います」

最初は暮らしやインテリアに興味がある人が多かったのですが、少しずつ幅は広がり“フリーランスになりたい”“何か始めたいけれど何をやればいいのか分からない”という人も増えていきます。少人数制からスタートしましたが、参加できない人が多かったことやメンバー数の飛躍が著しかったことから定員を大幅に増やしプランを見直し、より多くの人が参加できるように。現在までに130人以上が参加しています。

「看護師、元保育士、料理やパン教室の先生、ファッション関係などさまざまな職種の方が参加しています。推し活が流行っていますが、私の推しはサロンのメンバーなんです。頑張りたい、何かを始めたいと思っている人がかわいくてしょうがない(笑)。人からは“おせっかいの極みだね”と言われるんですが、大人になると改めて人から言われること褒められることってあまりないんですよね。“いいじゃない、やってみたら”“こうしたらいいんじゃない”、その人の良さを引き出すための声掛けをしてあげたいんです。やってみたら“意外と簡単にできた”という方も多いんですよ」

能登屋英里さん


「築50年、52㎡ のこの家で本を作る」という目標を達成

能登屋さんは整理収納アドバイザーとして活動し始めた時に、「この家で本を作る」という目標を掲げました。その夢は実現し、2023年に『築50年52㎡ 物が多いのに片づいて見える家』(KADOKAWA)、2024年に『インテリアの基本がわかる 小さなスペースで楽しむ模様替え プロが教えるセオリー&アイデア』  (翔泳社)を出版しました。

「本を出すのが夢でしたが、この家で2冊も出せました。しばらくオンラインサロンに比重を置くことが多かったのですが、今年はもう少し整理収納とインテリアに力を入れられたらと思います。その他にも、企業やブランドとコラボしてアイテムを開発したり、企業やハウスメーカーと一緒にリノベーションにも挑戦したいです。また今年からオンラインインテリアレッスン『EIRI INTERIOR-labo』をスタートしました。月1回で5ヶ月かけて空間作りを学べるレッスンです。こちらも頑張りたいです」

能登屋さんの強みと言えば、ディスプレイの仕事を通じて学んだおしゃれで実用的な整理収納術。仕事や旅先で訪れた海外のディスプレイやインテリアセンスを効かせながら、機能性やデザインにこだわったアイテムを使い、気持ちも上がるバランスの良い収納術を教えてくれます。実用的なのに心地よくておしゃれ、これまでの人生経験を凝縮した空間づくりは誰もが憧れます。

能登屋英里さん

「インテリアの色やアイテムを揃える、収納は一箇所に集中させる、映えスポットを作る。窓にカーテンでなく、ロールスクリーンや布を使う。グリーンや雑貨、季節の飾りを足してみる。模様替えして、部屋の印象をがらりと変えることもできます。家って、実は簡単に変えることができるんです。私がディスプレイの仕事を通じて学んだこと、整理収納から知ったことを多くの人に伝えて、自分の家をもっと好きになってもらいたい。インテリアの力で住む人がワクワクする空間にする、家が好き・帰るのが楽しみになる家づくりのお手伝いができれば嬉しいです」

後編につづく)

My wellness journey

私のウェルネスを探して

能登屋英里さんの年表

1980

大阪府生まれ

2002

神戸芸術工科大学工業デザイン学科ファッションデザインコース卒業。(株)ユニクロ入社

2008

(株)ユニクロ退社。ニューヨークへ留学し、英語を学びながらディスプレイを学ぶ

2009

ユニクロフランスのパリ オペラ店に所属。ディスプレイチームのアシスタントマネージャーに

2010

(株)サザビーリーグ エストネーションカンパニーに入社。VP(ディスプレイ)チームに10年間所属

2011

結婚

2015

52㎡のヴィンテージマンションに出会い、自身でデザインしリノベーションを行う

2016

長女を出産

2019

会社を辞めて、フリーランスに。整理収納アドバイザー・ビジュアルコンサルタントとして活動を開始

2022

オンラインサロン『Ei-RiNOVE』をスタート。無印良品で業務委託として一部店舗の店内ディスプレイ業務を担う(現在も)

2023

『築50年52㎡ 物が多いのに片づいて見える家』(KADOKAWA)を出版

2024

『インテリアの基本がわかる 小さなスペースで楽しむ模様替え プロが教えるセオリー&アイデア』 (翔泳社)を出版。法人化

2025

オンラインインテリアレッスン『EIRI INTERIOR-labo』をスタート

能登屋英里さん

Staff Credit

撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
仕事や子育て、家事に慌ただしい日々でも、LEEを手に取れば“好き”と“共感”が詰まっていて、一日の終わりにホッとできる。
そんな存在でありたいと思っています。
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