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LIFE

重箱を“美しい箱”として普段使い

漆器にはインテリアアイテムとしての魅力も【石井佳苗さんのインテリア名品】

  • 石井佳苗

2024.12.01

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連載

KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items

スタイリスト

石井佳苗の「インテリア名品」

テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は、インテリアアイテムとしても取り入れたい、漆器のお話です。

石井佳苗さん

石井佳苗さん

Kanae Ishii

スタイリスト

「カッシーナ・イクスシー」にて10年間勤務後、独立。雑誌や書籍、広告など多分野にわたる活躍で知られる。住まい作りの感覚を磨くヒントを綴った近著『Heima』(扶桑社)も好評。

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20.

[漆器]Lacquer ware

漆のふたもの

Designer:Osamu Matsuzaki
松﨑 修
Item: Lacquer box
漆のふたもの

重箱を“美しい箱”として普段使い。漆器にはインテリアアイテムとしての魅力も

松﨑さんの手がける品々は、いわゆる“漆”が持つフォーマルなイメージとは一線を画します。それは使い込むほどに愛着が増していく、普段使いにこそおすすめしたい漆。どこか素朴さを残す、生活道具としてのたたずまいが素敵なのです。

その質感は、つやを抑え、木目がうっすらと見えるように仕上げる“拭き漆”の技法ゆえ。さらに、朱漆の上に黒漆(または黒漆の上に朱漆)を重ねる手法で仕上げられているので、道具としての丈夫さも折り紙付きです。手で何度もなでるように触れ、時を経るにつれて、黒から朱地が、朱から黒地が見えてくるという表情の変化を楽しめます。

私が初めて松﨑さんの作品に出会ったのは、旅先の松江市。民藝を中心に扱うギャラリー「objects」でした。そのときはほかのものに気を取られていたのか、なぜか購入には至らず。後日、都内の百貨店に「objects」が出店していたときにあらためて目にし、「なぜ、あのとき見落としてしまったんだろう!」と後悔しきり。一目惚れしたふたものを持ち帰ったというわけです。

漆器ならではの温かい質感、芯にある凛としたもの。その存在を食卓だけに、さらに和のイメージだけにとどめておくのはもったいない。重箱を美しい収納道具に、お盆やお椀をアクセサリートレイに。漆器を気負うことなく新たな生活道具として見つめ直せば、インテリアアイテムとしての魅力が実に大きいことに、皆さんきっと驚くはずです。

二段重ねの重箱を、道具箱として活用。
石井さん私物

二段重ねの重箱を、道具箱として活用。「上段には文房具を、下段にはお香などを入れて。内側も黒地なので、見やすいように傷防止も兼ねた白の布を敷いています」(石井佳苗さん)

昔から、漆のアイテムをインテリアに使うのが好き。松𥔎さんの作品は和に寄りすぎないモダンさがあるので、アクセントになりつつ、空間となじみもいいんです
角盆市松(22.5㎝×22.5㎝ 高さ2.5㎝)¥29700・お重(径16.3㎝ 高さ13㎝)¥82500/objects

「昔から、漆のアイテムをインテリアに使うのが好き。松﨑さんの作品は和に寄りすぎないモダンさがあるので、アクセントになりつつ、空間となじみもいいんです」(石井佳苗さん)

Designer:

Osamu Matsuzaki

Japan, 2010~

素朴な表情を醸す質感と、小さく輝く螺鈿(らでん)。触れるたびにときめきます

木漆工芸家、松𥔎融さんの長男として生まれた松𥔎修さん。通常は木地師、塗師と分業されることの多い漆器作りだが、ほぼすべての工程を自身で担うことでも知られる。

木漆工芸家、松﨑融さんの長男として生まれた松﨑修さん。通常は木地師、塗師と分業されることの多い漆器作りだが、ほぼすべての工程を自身で担うことでも知られる。朱色の作品は、黒漆の上から朱漆を重ねる根来塗、黒色の作品は朱漆の上に黒漆を重ねる曙塗の手法をとっている。作品は島根県松江市の「objects」などで取り扱いあり。12月21日より、同店で個展を開催。https://objects.jp/

猫

Staff Credit

撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2024年LEE12月号(11/7発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。

石井佳苗 Kanae Ishii

インテリアスタイリスト

「カッシーナ・イクスシー」にて10年間勤務後、独立。雑誌や書籍、広告など多分野にわたる活躍で知られる。住まい作りの感覚を磨くヒントを綴った近著『Heima』(扶桑社)も好評。初心者にもわかりやすいオンラインレッスンも行っている。

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