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KANAE’s MASTERPIECES────Interior Items
スタイリスト
石井佳苗の「インテリア名品」
テイストの変遷や引っ越しを重ねた今も、手元に残る大切なもの。石井さんのスタイルを形作る名品を、毎月1点ずつ紹介します。今回は石井さんが愛してやまない身近なオブジェ、ピッチャーについて。
file
22.
[陶器]Ceramics

Made in: USA etc.
Item: Pitchers
ピッチャー
あくまで実用品として作られながら不思議と漂う、オブジェのような存在感
植物の水やりに使ったり、花器にしたり、時にはすました顔で棚の特等席に鎮座していたり。ピッチャーは実用品でもありますが、私にとってはオブジェの感覚。イメージとして近いのは、椅子でしょうか。要素としてはどのピッチャーもそんなに違いはないのに、ちょっとしたデザインや質感の個性に惹かれて、つい手に入れたくなってしまう。さらにまた、そんなに場所を取らないものだから、椅子以上につい自分に甘くなって、増える一方のアイテムです。
注ぎ口と、持ち手。この2つの要素が合わさった途端に、単なる“器”から一歩進んで、オブジェのような存在感を漂わせます。「アートとしてのオブジェは、なかなか選べない」という方は、お気に入りのピッチャーを見つけるところからはじめてみるのもおすすめ。口の大きいもの、シュッとスマートなもの、つるりとした質感、ゴツッとした武骨さ……さまざまなピッチャーを目にするうちに、自分の好きなテイストが、きっと見えてくるはずです。
ちなみに私の手持ちのピッチャーは、ご覧のとおりデザインも質感も生まれた国も見事にバラバラ。まさに「みんな違ってみんないい」。雰囲気や大きさが全然違うものを組み合わせて飾っても、不思議とまとまりがあるのは、“注ぎ口と持ち手”という、共通項あればこそ。細かいことを考えず、「好き」で買い集めてもちゃんとさまになってくれるところも、実に頼もしいのです。

2年ほど前に訪れたギャラリーで出会った、陶芸家・黒田泰蔵さんの初期作品。「迷わず大小2つを購入。晩年の作風とは味わいが少し違っていて、趣のある白の質感とフォルムを見て触れるたびに、その美しさに感動します」(石井佳苗さん)

水を入れるだけでなく、リモコンをしまうという使い方も! 「細長いものをちょっと隠しながら収納するのにも便利なんですよ。消毒液のボトルを入れて玄関に置いていた時期もありました」(石井佳苗さん)。こちらはイギリスのヴィンテージのもの。
Item:
Pitchers
Japan, USA, Finland
個性あふれる手仕事のピッチャー。その表情の違いを楽しみながら飾ります

(右)一見海外製かと思う個性的な柄の1点は、島根の窯元で購入した、湯町窯4代目の福間庸介さん作。「美しいだけでなく、水差しとしてすごく使いやすいんです」(中央)10年ほど前、アメリカ・ポートランドのヴィンテージショップで見つけたもの。「色ムラの感じがなんともよく、一目惚れでした」(左)15年ほど前にフィンランドで購入。「ミニマルな形と、シックな質感の黒。静かな存在感が好き」

Staff Credit
撮影/宮濱祐美子 取材・原文/福山雅美
こちらは2025年LEE3月号(2/7発売)「スタイリスト石井佳苗さんの「インテリア名品」」に掲載の記事です。

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