『フィンランド くらしのレッスン』刊行記念! 週末北欧部chikaさんインタビュー【後編】
週末北欧部chikaさんに聞くフィンランド流「頑張らない日の夜ごはん」【レシピ付き】
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ろこも子
2024.10.06
20歳のときに訪れたフィンランドに衝撃を受け「私、ここに移住する!」と決意し、フィンランド通いを13年以上続けた、自他ともに認める「フィンランドおたく」の週末北欧部chikaさん。大学卒業後は会社員として働きつつ「週末北欧部」としてフィンランドについてSNSで情報発信し『マイフィンランドルーティン100』シリーズ(ワニブックス)や『北欧こじらせ日記』シリーズ(世界文化社)等、フィンランド愛を凝縮したコミックエッセイを多数出版しています。移住を目指して寿司職人の修業を始め、2022年にはフィンランドの首都ヘルシンキのレストランに寿司職人として就職が決まり、念願の移住を果たします。
残念ながら勤務していたレストランは倒産してしまいましたが、現在は個人事業主としてフィンランドのビザを取得し、ヘルシンキで暮らすchikaさん。最新刊『フィンランド くらしのレッスン』(集英社)では、フィンランド移住を実現するまでは“仮暮らし”だから大型家具は買わない、住まいもアパートで……と“暮らし作り”を後回しにしてきた結果、念願のフィンランド暮らしを始めたものの「家具すらまともに選べない“暮らし初心者”になっていた」というchikaさんが、少しずつ「自分らしい暮らし」を学んでいく過程が描かれています。出版を記念してヘルシンキのchikaさんをリモートでインタビューしました!(この記事は前後編の後編です。前編を読む)
LEEweb初登場!
週末北欧部 chikaさん
Shumatuhokuo-bu chika
作家
北欧好きをこじらせてしまった元会社員。大阪府出身。フィンランドが好き過ぎて12年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。移住のために会社員生活のかたわら寿司職人の修業を始め、ついに2022年春に移住。モットーは「とりあえずやってみる」。好きなものは水辺、ねこ、酒、一人旅。著書に『マイフィンランドルーティン100』『北欧こじらせ日記』『北欧こじらせ日記 移住決定編』『かもめニッキ』『世界ともだち部』などがある。
長い冬でも病まないため(?)趣味を充実させる。きのこ狩りレッスンは大人気でキャンセル待ち!
緯度の高いフィンランドは冬場の日照時間が非常に短く、しかも冬の期間が長いですが、精神的に参ったりしませんか?
週末北欧部chikaさん(以下chika):フィンランド人の友人に「長い冬で病んだりしないの?」と聞いたら、その工夫として「『病む=考える隙がありすぎる』だから、趣味を持つことでその隙間を埋めてるかもしれないね」と返ってきて。ヘルシンキ市や大学が様々な文化コースを開催していて、私も余暇を上手く過ごすためにも、冬場に病まないためにも、受講して生涯続けられる新しい趣味を探しています。最近は、ポルスカという北欧の伝統的なダンスのワークショップに参加しています。フィンランドの秋の風物詩でもあるきのこ狩りのレッスンにも申し込んだのですが、大人気でキャンセル待ちしています(笑)。それと今月から、社会人向けの夏期講座でフィンランド語のレッスンを受講しています。
『フィンランド くらしのレッスン』でもきのこ狩りについて描かれていましたが、キャンセル待ちが出るほど大人気とは(笑)。フィンランドは社会人向けの学び直しの講座が豊富で、大学や大学院の授業料が無料で社会人の再入学のハードルが低く、キャリアチェンジしやすいことも言及されていました。コロナ禍以前からリモートワークが定着していたり、柔軟な働き方が可能なようですね。現在のchikaさんのお仕事の日の1日のスケジュールを教えてください。
chika:9時頃から仕事を始めて、17時には終えることをルールにしています。日本との時差が7時間(3月〜10月はサマータイム導入につき6時間)なので、午前中に日本の取引先とミーティングを入れることが多いです。個人事業主になり家で働くようになって、初めのうちは長時間働いてしまったり集中できなかったり、となかなかメリハリがつけられず、同僚もいないので社交の場が一切無くて落ち込み気味な時期もありました。そういった悩みもヘルシンキ市のビジネスアドバイザーさんに「皆さんどうしてるんですか?」と相談できました。現在は週の半分は自宅で、半分はシェアオフィスで働くようにしています。シェアオフィスは17時には閉まります。終業後は週に2回はフィンランド語のオンラインレッスン、それと週1で空手のレッスンも受けて、習い事がない日は近所の水辺を散歩して過ごしています。
今すぐ真似したい! フィンランド流「頑張らない日の夜ごはん」
本の中でフィンランド流「頑張らない日の夜ごはん」を紹介していて、えんどう豆のスープ「ヘルネケイット」の缶詰を常備して甘いマスタード「シナッピ」をこれでもか!と加えて飲んだり、スーパーで手軽に買えるマリネされた肉や魚をオーブンで焼いたり、どれもこれもおいしそうでした。生のカリフラワーにヨーグルトをつけて食べるのは、日本でも真似できそうですね。元シェフでもあるchikaさんの最近の「頑張らない日の夜ごはん」を教えてください!
chika:本当に頑張ってない日の夜ごはんですけど(笑)、つい先日フィンランド人の友人に、スープ皿に飲むヨーグルトを注いで、その中にたっぷりのベリーを投入して一緒に食べる、というレシピを教えてもらいました。飲むヨーグルトは腹持ちも良いですし「これ、頑張らない日の夜ごはんになるんだ!」と驚きました。最近ハマっているのは、やはり友人に教えてもらった、IKEAの蒸籠で作る蒸し料理。IKEAには竹製の蒸籠が安く売っていて、それを使ってお好みの野菜や肉を20分間蒸して出来上がり。日本でもIKEAで売っている冷凍ミートボールはフィンランドではどこのスーパーでも手に入るんですけど、蒸籠で蒸すとすごくプリプリに仕上がっておいしいですよ。アジアンスーパーで冷凍餃子を買ってきて、ふかふかに蒸して楽しむことも。蒸籠蒸しはほったらかしで出来るし、失敗しないしオススメです。
chikaさんに教えてもらいました!「ロヒケイット」レシピ
ロヒケイット(Lohikeitto)はフィンランド語で「サーモンスープ」、簡単にできる北欧定番の家庭料理です。
材料(2人分)
- サーモン 切り身1切れ分
- じゃがいも 1個
- にんじん 1/2本
- 白ねぎ 1/4本分
- にんにく 1/2かけ
- 固形コンソメ 1個
- 水 200ml
- 【A】牛乳 150ml
- 【A】レモン汁 大さじ1/2
- 【A】ディル 1本(乾燥タイプでもOK)
- サラダ油 少々
- 塩こしょう お好みで
作り方
- にんにくと白ねぎをみじん切りに、じゃがいもとにんじんは一口大にカットする。
- サーモンは皮を剥いで一口大にカットする。
- 鍋に油を入れ熱し、①のネギとにんにくを香りが出るまで炒め、じゃがいもとにんじんも加える。
- 水を入れ、沸騰したら②のサーモンとコンソメをいれる。
- 野菜が柔らかくなったらAを加え、沸騰しないようにごく弱火で煮込みます。最後に塩こしょうで味を整えて完成!
自分なりの「働き方のロールモデル」を探す・作る
chikaさんの作品はフィンランドのマニアックな情報も満載なのですが、ご自身がなかなかユニークなキャリアを歩まれてきたこと、会社員時代に人材開発会社で働いていたときに得た知識も相まって、「働き方」について発信することにも重きを置いています。
chika:日本で3年間の期限つきで契約社員として働きながら週末にカフェ修業やブログ発信をして「週末ギャップイヤー」をしてフィンランド移住へ通じる道を探していた時期や、フィンランド移住1年目の寿司シェフとして働いていたカオスな時期が、私のキャリアの「川下り」の時期でした。大きな濁流の中、必死で泳いて120%自分の力でやり切れている感じで、それまで見えなかった景色に到達したり、思いもよらなかった道を進んでユニークなキャリア形成に繋がったり。しんどいけど、同時に楽しい時期で、以後も時々こういうカオスを意図的に作っていけたらいいなと思っています。
一方、キャリアの「山登り」は、フィンランド移住前に会社員を続けながら東京で寿司修行を始めた頃。30代になってから寿司学校に入学して、年齢的にワーホリにも行けないし、周りはどんどん結婚や出産をしていて「本当にこの道を選んで、移住できるのかな?」と不安でした。そんなとき、50歳の寿司初心者で入学して、英語も話せないけどその後フィンランドに移住した寿司学校の先輩がいて。同じ境遇で理想的なロールモデルがいたおかげで、山を登り切ることができました。他にもネット上で自分と似たような境遇の、女性でワーホリではなく一から寿司を学んで移住した事例を必死で探して、自分なりのロールモデルを作っていました。
ロールモデルを自分で探す、作るってすごく良いですね!
chika:そうなんです、自分なりにロールモデルを作ることって大事だなと感じます。そして、いちばんしんどかった「キャリアの踊り場」は、新卒1年目に北欧音楽の会社で働いていた最後の方。入社することがゴールになって、その先のやりたいことがわからない、出口のないトンネルにいるような、すごく静かな苦しさがあった時期でした。今となって思えば、「何のため」「いつまで」頑張るのか、目的と期日を設けなかったのが要因。目的と期日があることで、ヘルシーな働き方に繋がります。フィンランドに移住するときに唯一決めたのが「とりあえず3年やってみる」という、自分なりの期日。
初めて4年間のビザが下りた今の目標は「フィンランドでも自分であること」
「とりあえず3年」と自分の中でゴールを決めたとのことですが、今後の見通しや目標について教えてください。
chika:3年という期日を設けたことで、今の生活がいつまでも続くと思わず、1日1日を大事に過ごしています。来年が3年目、その時に見える景色の中から、今後やりたいことを決めようと思っています。実は、これまで1年更新のビザしか下りなかったのですが、先日のビザ更新のタイミングで初めて4年間のビザが下りました。ようやく長期的な計画も考えられるようになった今の目標は「フィンランドでも自分であること」。
chika:去年、フィンランド人の友人の前で日本語で話したら「chikaってそんなに話す人だったんだ。本当のchikaってどんな人?」と聞かれて。私が「ここだと言葉もできないし、生活もわからないし、赤ちゃんみたいな気がする」と言っていたのを覚えてくれていたみたいで。それを機にフィンランド語を学ぶ、フィンランド語で自分の本を出す、そして漫画家のコミュニティを持つ、ここで根を張るために「言葉」「仕事」「コミュニティ」を見つけて作っていきたい、と考えるようになりました。ちょうど先日、フィンランド語の本を自費出版したばかりです。「ここでも私は私でいられるね」と思える環境を自分で作っていきながら、未来の選択肢を増やせるように過ごしたいと思います。
週末北欧部chikaさん最新刊!
『フィンランド くらしのレッスン』
移住の夢をかなえたら、「くらし」が私を待っていた!
北欧好きをこじらせた著者が、フィンランド式スタイル、考え方を学びながら、自分らしい生き方を見つけていくコミックエッセイ。
【目次】
LESSON 1 COMMUNICATION ……言葉にすること、余白を持つこと フィンランド人のコミュニケーション術
LESSON 2 WORK&CAREER ……自分らしい働き方とキャリア観
LESSON 3 CULTURE&NATURE ……自然や文化を知り楽しむ
LESSON 4 TIPS TO HAPPINESS ……心地よく暮らすための秘訣
LESSON 5 INTERIOR COORDINATION ……フィンランド風部屋づくりを学ぶ
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ろこも子 LOCO MOCO
LEEwebコンテンツディレクター
出版社勤務を経てフリー編集ライターに。LEEwebのコンテンツディレクターをしつつ、書籍編集&WEB記事編集・執筆も。アラサーで結婚するも13年後に離婚、バツ1。ハワイ好きっぽい名前だけどハワイには行ったことすらありません。香港映画と1960年代邦画好き。似顔絵は漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんに描いていただきました。
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