私のウェルネスを探して/福田麻琴さんインタビュー前編
【福田麻琴さん】順調だったキャリアを中断しパリ留学したのは「失恋したから」!? 唯一無二のスタイルが確立するまで
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LEE編集部
2024.05.03
今回のゲストは、スタイリストの福田麻琴さんです。福田さんはLEEをはじめ雑誌やウェブマガジンで人気のスタイリスト。スタイリングのみならず、ファッションアイテムのプロデュースやコラボレーションやバイイング、エッセイ連載や書籍の執筆に加え、LEEのオリジナルポッドキャスト『Stylist福田麻琴の「おしゃれって何さ!?」』では飾らないトークを毎週披露し、全方位で活躍しています。福田さんはスタイリストとして活躍していた2009年、フランスへ留学。パリで学んだファッションの価値観や生き方は、人生を変える経験になりました。
前半では、福田さんがスタイリストになりフランス留学するまでと、2024年4月に出版した最新刊『PARIS MANIAQUE 寝ても覚めてもパリが好き』(イースト・プレス)について話を聞きます。スタイリストの仕事が順調な中、失恋から決意した留学。そして再び日本に戻り、変化と挑戦を楽しみながら前へと進むパワフルな生き方。福田さんのしなやかでポジティブなメッセージに元気がもらえるはずです。(この記事は全2回の第1回目です)
師匠からは日常の小さなことに気を配ること、生活の中で美意識を高めることを教わった
福田さんは高校卒業後、服飾の専門学校に進学。その後アパレル販売員を経て、スタイリストになります。販売員の先輩から「向いてるんじゃないかな」「会ってみたら」と、スタイリストの師匠を紹介されたことがきっかけでした。
「洋服が好きだったし接客も好きでした。職場の同僚や先輩とも仲が良かったし、販売員の仕事に何か不満があったわけじゃないんです。あるとすれば、勤務先がデパートの中で、働いている時に外の様子や景色が見えなかったことと、働き方が早番・遅番とルーティンで、その生活に少し窮屈さを感じていたくらい。ボス(スタイリストの師匠)と一度会ってみたら、すごく気が合ったんです。少し仕事を見せてもらうと、毎日会う人や行く現場が違って楽しそうだなと思って。プロフェッショナルが集まってアイデアを出し合いながら、一つの作品を作ることに魅力を感じました」
師匠はCMを中心に、女優さんのスタイリングが多かったそうです。福田さんの仕事はアシスタント業務に加えて、師匠の家の手伝いをすることもありました。
「今考えると、スタイリング以外のこともたくさん学ばせて頂いたなぁ、と。ファッションやアート、音楽などのカルチャーに詳しく、バイタリティがある人でした。私の母は専業主婦だったので、自分にとって一番身近な働く女性として憧れる存在でした。アシスタントは常に2、3人いたのですが、みんなで分担して家仕事をするのも楽しかったです。私は虫が平気だったので、庭仕事を担当することが多かったです!」
食事の場面では、料理に合う器、季節の取り入れ方など、たくさんのことを教わりました。もちろん料理も! 庭仕事では芝の張り替え、花壇の植え替えもやりました。彼女が好きな白い花だけの花壇を作ったら、とても喜んでくれたことを今でも覚えています。
「ファッションがメインの仕事とはいえ、日常の小さなことに気を配ること、生活の中で美意識を高めることを教わったのは彼女からです。ファッションやインテリア、彼女の真似をして買ったものも多くあります。たくさんの影響を受けました」
スタイリストとして独立し仕事は順調だったが…失恋を機に「人生は一度きり、やりたいことをやろう」とフランスへ
3年ほどのアシスタント期間を経て、ずっとやりたいと思っていた雑誌の仕事に挑戦します。ファッション誌でのスタイリングをベースに、トレンドの最先端を追いかけ、リアルな着こなしを提案する楽しさを味わいながら充実した日々を過ごしますが、ある日大きな転機を迎えます。
「失恋でした。結婚するかどうかの微妙なタイミングでそうなってしまったので、とてもショックでしたね。ちょうど30歳の時です。何があるかわからない。人生は一度きりだから、やりたいことをやろうと思いました。そこで思い立ったのが留学です。実は子どもの頃、ぼんやりと外国での生活に憧れていました。仕事は充実していたし、軌道に乗っていたスタイリストの仕事を離れることに不安もありましたが、仕事は好きなことやらせてもらっているんだから、まだやっていないことに挑戦しようと思って」
留学先は、当時の福田さんの年齢でワーキングホリデービザが取れる3つの国から、ファッションの国=フランスということで即決。語学を勉強しながら、ファッション関連の仕事に関われればと、フランスへ旅立ちます。
「向こうに知り合いがいたこともあり、現地のコーディネーターさんの手伝いや日本から来ていた撮影チームの手伝い、パリのファッションスナップなどをしました。日本から来たチームはアシスタントが不在なことも多かったので、スタイリストのアシスタントもやりましたね。パリはもちろん、南仏まで足を伸ばすチームもいたので、いろいろな場所に行けて本当に楽しかったです」
パリジェンヌ達のファッションへの意識の高さに驚き!“人生で何を一番大切にするのか”を考えるように
留学していた1年間は「価値観が180度変わるような経験をした」と当時を振り返ります。一つ目は、撮影の現場のフラットさ。現場では上下関係がなく、スタッフが対等にやり取りしていました。
「日本では上下関係がちゃんとあって、それはそれでいい面もあるのですが、向こうでは、基本本人に任せてるんですよね。スタイリストやカメラマンのアシスタントも師匠と対等な関係で、“あなたはどう思うの?”“どっちがいい?”とアシスタントも意見を求められます。日本では観たことない状況にとても驚きました」
何より驚いたのが、パリジェンヌ達のファッションへのこだわり。それまで雑誌で仕事をしてきたこともありトレンドを意識してきましたが、フランス人はそれぞれが好きな服を着ます。ある人は古き良きものを大切にし、ある人は自分のテーマカラーを決めていたりして。パリでスナップ撮影した人が、祖母から譲り受けたバッグや母親が愛用していたジャケットを着ていることもよくありました。また、それまで靴は「足がきれいに見えるからヒール一択」だった福田さんですが、パリに来てからフラットなシューズもよく履くようになったそうです。
「美しく見せたい、という思いからヒールを履いていましたが、パリではすべてが自由。誰かのために洋服を着るという感覚がなく、服を着るのは自分のため“個”を大切にした着こなしを楽しみます。日本では“自分のために何かをする”と、昔はわがままだと受け取られがちでしたが、パリではそれが普通。歳を重ねたマダムがミニスカートを履いている、なんてことも普通です。仕事への意識も違っていて、何より休暇を大事にしているんです。バカンスのために仕事をしている人もいて、“人生で何を一番にするのか”考えるきっかけにもなりました」
みんながフラットな関係で現場の雰囲気がいいと、それだけで仕事が楽しいしスムーズに進む
ファッション、生き方。すべてにおいてみんな違っていい自分を尊重する生き方。留学を終えて東京に戻った福田さんにも、仕事をする上で変化があったそうです。
「いい意味でこだわりがなくなり、図々しくなりました。一方で、ここだけは譲れないというこだわりがクリアになったと思います。帰国してからの現場ではアシスタント達が意見を言いやすい雰囲気作りを心がけるようになりました。最新のアプリの使い方なんかは全部彼女達から教わっています。みんながフラットな関係で現場の雰囲気がいいと、それだけで仕事が楽しいしスムーズに進みます。それぞれが力を出し合って、一番いいものができればベストです」
そんなパリでの経験を書いた本『PARIS MANIAQUE 寝ても覚めてもパリが好き』が4月に出版されました。今回はファッションのハウツー本ではなく、パリをテーマに21人のパリ好きがエッセイを執筆するスタイル。それぞれのパリの好きなところ、思い出を詰め込んだ一冊です。
「パリの話をしていると、“あの店行った?”“あそこいいよね”と、盛り上がることが多いんです。私と同じくパリ好きのライターさんと一緒に“みんなのパリの話を聞きたいね”と盛り上がったことが本を作るきっかけ。最初はウェブ連載でやろうと思ったのですが、ちょうど今年はパリオリンピックが開催されるオリンピックイヤー。そんな気持ちの高まりを込めて本にすることになりました。パリの街並み、ファッション、食、アート。ガイドブックに載っていない、21人の街案内をぜひ楽しんでください」
My wellness journey
私のウェルネスを探して
福田麻琴さんの年表
1978
埼玉県で生まれる
1998
文化服装学院を卒業
2000
販売員を経てスタイリストアシスタントに
2003
独立
2009
失恋、フランスに留学
2010
帰国
2012
結婚、出産
2018
『38歳から着たい服 本当に似合うものだけ少量持つ』(すばる舎)、『THE FRENCH STYLE BOOK カジュアルで女性らしいパリジェンヌな着こなし』(KADOKAWA)を出版
2019
『大人気スタイリストがすすめる コスパのいい服』(すばる舎)を出版
2020
『ただ着るだけでおしゃれになる ワンツーコーデ』(西東社)を出版
2023
『私たちに「今」似合う服~新しいベーシックスタイルの見つけ方』(大和書房)、 『MY BASIC,MY ICONS 10年後も着たい服』(イースト・プレス)を出版
2024
『PARIS MANIAQUE 寝ても覚めてもパリが好き』(イースト・プレス)を出版
Staff Credit
撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
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