50〜60代を生きやすくする“筋トレ期間”と思って!
【40代の壁を乗り越えるための心得5】“ワーママはるさん”こと、尾石 晴さんも40代に悩んだ?
2024.04.26
『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』の著者
尾石 晴さんが考える
「揺れる40代」の乗り越え方とは?
音声メディアVoicyのパーソナリティとして人気を集め、著書も話題の尾石晴さん。自身が提唱する「40歳の壁」への対処法を、ご自身の経験談とともに教えてもらいました。
教えてくれたのは
尾石 晴さん 42歳
発信、文筆業、ヨガ講師、大学院での研究など幅広く活動。Voicyのトップパーソナリティとして『学びの引き出しはるラジオ』を配信中。多くの人が感じながらうまく言葉にできないモヤモヤの解決、思考分解が得意。11歳、8歳の2児の母。
尾石さんの これまでヒストリー
2004年
外資系メーカーに就職
16年勤務し、転勤5回、管理職の経験あり
2013年
第1子出産
2016年
第2子出産
2019年
音声メディアVoicyで『学びの引き出しはるラジオ』を開始
2020年
長男が小学生になり「小1の壁」にぶつかる
退職、独立
サバティカルタイムに入る
2021年
スタジオ・オンラインでヨガレッスンを行う(株)ポスパム代表に
母と子のシェアコスメ・ちつケアブランド「ソワン」を運営
書籍執筆、メディア出演も
2022年
大学院へ進学。今年春から博士課程へ
「40歳の壁」とは?
40歳を迎える頃に多くの女性に起こりがちなキャリアの迷い、育児の落ち着き、子どもの成長に伴う悩みの変化、体力の衰えなどの出来事。ひとつひとつは小さくても、まとまって現れることで行き詰まりを感じる現象を、尾石さんは著書の中で「40歳の壁」と表現。
『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』¥1650/ディスカヴァー・トゥエンティワン
尾石さん流 壁を乗り越えるための心得5
「書く+人に見せる用にアウトプット」すると自分の問題点を俯瞰できて、成長が早く
人生100年時代、“第2の職業”を選ぶときがくる。知力も体力もある40代で、キャリアの方向性を変えてみても
悩んだら“サバティカルタイム”を取るのも手。長期間は難しくても、週末だけ目的を決めずに休むのも○
「人に言われなくても時間をかけていること」は新たな仕事やキャリアにつながるかも
自分のフレームワークから出て、価値観を更新していくことも学び直しのひとつ
“小1の壁”がきっかけで、さまざまな問題に気づく
著書では鋭い分析力で、女性がぶつかりがちな“40歳の壁”について解説。尾石さん自身が、その壁の存在に気づいたきっかけは?
「長男の“小1の壁”で実感しました。保育園時代は、自分も30代で体力があったし、キャリアアップに挑戦したり、家事・育児も時短術や外注などを活用して何とかやりくりできていたんです。でもちょうど長男が小学生になるタイミングで、行き詰まりを感じるように。大きかったのが、子どもが保育から学習のフェーズに入ることで、わが子に合った対応が必要になるのでアウトソーシングできなくなったこと。帰宅後の私の負担が大きく、これは現状を変えるべきなのでは、と。一見子どもや時間のやりくりなどプライベートの問題に見えて、実は働き方の問題、私が長時間勤務であることが大変さの原因なのかもしれないと考えました」
その気づきに一役買ったのが、ずっと続けている“書く”こと。
「以前から、その日やったこと、起きたことや結果をただ記録する“行動のログ”と、それに対して思ったこと、考えたことを書く“思考のログ”を取っているんです。書き続けていると『私、毎日のように仕事が終わらないと言っているな』『走りに行く予定だったのにまた行けなかった』などと、不満や問題点が可視化され、俯瞰できるように。だんだんつながりがわかってきて、私個人の問題でなく、“40歳頃に特有の壁”である部分が大きいととらえるようになりました。
私は、取ったログの内容をブログや記事などにアウトプットする際、もう一度まとめ直すので、そのときに気づくことも多いんですね。反響が大きいVoicyも、発信することで聴き手からのフィードバックがあるので、ここで私の中で内省が起こる。成長スピードを上げたいのであれば、書いたことを発信するのはおすすめです。ブログやSNSが怖ければ小さなコミュニティ内でもいい。例えば私のVoicyのコメント欄でだけアウトプットするというユーザーさんもいるので、自分に合った発信方法を探してみても」
“40歳の壁”にぶつかり、あらためて将来について考えたそう。
「もともとは新卒で入った会社を辞めるつもりはなく、60歳まで勤め上げたいと思っていました。でも、そうなると悩みの種になっていた長時間労働が続くし、転勤も視野に入れなくてはならず、育児との両立はいよいよ厳しいと感じるように。また、周りを見ると65歳を越えても働く人がほとんどで、どこかのタイミングで誰しも“第2の職業”を選ばなくてはいけないときがくるんじゃないかと。そう考えると、まだ知力も体力もある40代でキャリアの方向性を変えて、60歳以降も働けるような基盤を作りたいと考えました。
私の場合は、労働時間のこともあったので会社を辞めましたが、退職がすべてではないので、人によっては今の仕事を続けたまま、またはその延長線上で、新たなキャリアに向かうことはできると思います」
退職してできることを模索し、仕事と学びを両方選択
壁に立ち向かうのは苦しいことも。
50〜60代を生きやすくする“筋トレ期間”だと思って!
尾石 晴さん
退職してまず選択したのが、“サバティカルタイム”を取ることだったと言います。
「サバティカルタイムとは“使途を決めない休暇”のこと。欧米企業ではこの制度が設けられていて、目的なく一定期間休む人も多いんですね。自分に何ができるか模索したいと思ったので、私も2年間自主的にサバティカルタイムを取りました。その2年間で、ずっと続けていたヨガのレッスンを深めたり、デリケートゾーン用のケア用品を開発する方法を考えてみたり。興味のあることで、第2の職業につながりそうなことはないかと試行錯誤していました。私のような長期休暇が難しい場合も、例えば『この週末だけは予定を決めずに、自分の興味のあることをやろう』というのも、十分サバティカルタイムになると思います」
そこで気づいたのが、時間を割いていることには、“自分に合う仕事”のヒントが隠れていること。
「私だったら、ヨガは会社員時代からずっと好きで続けていて。仕事にしたいと思ったわけではなく、ただただおもしろくて勉強するようになり、ヨガ講師の資格を取得したんです。また、年間200冊以上の読書をしていることが、今は書くこと、情報発信することにつながっています。誰に頼まれてもいないのに時間を費やしているものは、職業になる可能性を秘めているのかなと感じますね」
現在は文筆業、Voicyパーソナリティ、ヨガ講師、ECショップの運営など数々の活動をしながら、大学院にも在籍。“サバティカルタイム”を経て、学び直しを決めた理由は?
「ヨガに集まる人たちや、私が書いたものを読んでくれる人たちなどさまざまなコミュニティに触れるうち、『なぜここに人が集まってくるんだろう?』と考えるように。そのメカニズムを勉強するほうが、単一の肩書きを極めていくよりも有益なのではと思い、大学院で心理学を専攻することにしました。これが私にとってはとてもよくて、勉強だけだと学問を突き詰めて終わってしまうのですが、半分は仕事もしているので、学んだことをすぐにビジネスに生かせるんです。理論と実務を並行してやっていけるのは、社会人学生の強みだと思います」
とはいえ、「学びの方法は人によって違っていい」と尾石さん。
「リカレント教育やリスキリングといった言葉も最近よく聞きますが、大学に行ったり資格を取得するだけが学びではなくて、経験や読書、人と話すことも十分学びになると思います。大事なのは自分が今いるフレームワークから少し出て、体験してみること。自分が当たり前だと思っている価値観や考え方を少しずつでも更新していくことが、本当の意味での大人の学びなんじゃないかなと思います。もっと言うと、40歳の壁にぶつかって悩んだり、どうしたらよりよく生きられるか真剣に考えることで得るものはあるはず。壁に立ち向かうことは苦しいけれど、50〜60代を生きやすくするための筋トレ期間だと思って、ポジティブに受け止めたいですね」
壁を乗り越えるヒントになる
\ 学び直しのキーワード /
リカレント教育
学校教育から離れて社会に出た後も、必要なタイミングで教育を受けて、仕事と学びを繰り返すこと。知識はもちろん、教養などもあわせて学ぶことを指します。
リスキリング
技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、自分が持っているスキルを一度棚卸しして、新しく必要な知識やスキルを学ぶこと。資格取得などもリスキリングのひとつ。
サバティカルタイム
勤続者に対し、目的を問わず与えられる長期休暇のこと。尾石さんはキャリアを模索、試行錯誤するための時間だと定義。日本企業では制度はあっても、進学、留学、介護などの理由がないと取得できないことも。
Staff Credit
イラストレーション/西田磨由 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2024年LEE5月号(4/6発売)「揺れる40代、小さくて大きな“種まき”ストーリー」に掲載の記事です。
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