働けば、自由に生き方を決められる
「“はたらく”と好き勝手に生きられるよ」ヨシタケシンスケさんインタビュー【後編】
2024.03.24
子どもに聞かれても、
うまく答えられない!
自分もよくわかってない!?
ヨシタケシンスケさんと考える
「はたらく」ってなんでしょう?
なぜ私たちは、働かないといけないの? お金のため? それとも夢のため? 実はあまりわかっていない、“はたらく”意味。ヨシタケさんは、どう答えてくれるでしょう。
ヨシタケシンスケ
1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。独自の視点で描かれる、絵本、装画、イラストエッセイなどが大人気。高校2年生、小学校6年生の息子の父として、時々は悩むこともある。
公式サイト:https://yoshitakeshinsuke.net/
向いている仕事なんて、考えたってわからない
「好き」も大切だけれど、「きらいなもの」も、これでなかなか役に立つ
ヨシタケシンスケさん
前編の記事でもお話を伺いましたが、私たちが子どもと“おしごと”について話すとき、どうしてもあれこれと言わずにはいられません。自分がやりたいと望む仕事に就いてほしい。楽しいと思える仕事に就いてほしい。「好き」を仕事にしてくれたなら、最高! だから、あれこれ口を出してしまうのです。「ねえ、まずは好きなことを見つけてみたら?」。それは、まさに親心でもあり……。
「でも大人が求める“好きになってほしいもの”の幅って狭いじゃないですか。あわよくば、高尚なものを好きにさせようとするでしょ? 自分は子どもの頃、そんなものを好きだったかっていうと、決してそうじゃないのに。なんですかねえ、親となった途端に生まれる、その考えのあさましさ(笑)! まあ、親としての僕も含めての話ですけどね。基本、親がやっていることなんて、自分を棚に上げることだけなんですけれど。だいたい、趣味なんて役に立たないから趣味なのであって、それを何かに役立ててやろうなんて、なかなか貧乏くさい発想ってやつかもしれないですよね」
ひとつのことに夢中になって、ブレずにどんどん突き進んでいって、それを仕事にまでするなんて、もはやおとぎ話なのかも。
「好きなものなんて、特に子どもの頃はころころ変わるのが当たり前だし、友達がいいと言ったものをまねしたり、流行りにものったりしていく中で、自分の中でちょっとずつたまっていくものだと思うんですね。ましてや向いているものなんて、頭で考えたってわからない。体で感じるしかないことなんです。だから、『これやるくらいならこっちだな』っていう、明らかに向いていないことを経験してみないことには……子ども自身が、木から落ちてみないことにはわからない。そういう痛みを知ることはやっぱり、必要なんじゃないかと思いますね。
ちょっと話は変わりますけど、すごくきらいな人を作っておくっていうのもありなんですよ。『あいつみたいにならなくてよかったなあ』とか『あいつみたいなことするくらいなら、俺はこっちを頑張るぞ』とか。好きなものって、流行り廃りもあるし、けっこうころころ変わるじゃないですか。でも、きらいなものってあんまり変わらないんですよね。“きらい”は意外に長くその人を律してくれるんです」
働けば、自由に生き方を決められる
「食ってくためだよ」だけじゃ、芸がない。“はたらく”と、好き勝手に生きられるよ
ヨシタケシンスケさん
結局のところヨシタケさん、“はたらく”ってなんでしょう。私たちは、どうして働かなくてはならないのでしょう。
「この本の中には書きませんでしたけれど、それこそ一般的には『食ってかなきゃいけないからだよ』なんですよね。子どもに対しては、『いつか私たちはいなくなって、お前はひとりで生きていかなきゃいけない。そのときのためだよ』と。でも、これまあ“脅迫”ですよね。ど真ん中の正解ではあるけれど、違う言い方もできるはずなんです。だって、それだけじゃあまりに芸がない。
今までは、親鳥がとってくるエサだけを食べていたヒナに、『エサとるのって楽しいよ、好きなものだけとっていいんだよ、自分でとってきたエサってめっちゃおいしいからやってみ』っていうね。お給料もらったら、好きなゲームソフト一度に10本買っても文句言われないよ。何を着たいか、どこに住むか、何を大事にするか、全部生き方を自分で選んで決められるんだよ、それよくない?っていう。きっとそういう答えもあるはずで、『食うためだよ』だけでなく、それも上手に伝えられたらいいな、と思いますよね」
新刊『おしごとそうだんセンター』では
“はたらく”の根源に迫ります
いつも持ち歩いている小さなメモ帳。思いついたことなどを描いておく。「これを描いているときは、仕事じゃないから楽しい(笑)」
おなじみのあの子もこの子も、こんにちは!
「ヨシタケシンスケ」展で販売されたオリジナルグラス。絵本でおなじみのあの子の姿も!
作品は、世界中で翻訳され、愛されている。みんなが思わずうなずく感覚は、万国共通!
小さくてかわいくてどことなくナゾ……なモノがあちこちに
イギリスの「プライス&ケンジントン」の足付きティーポットなどひとくせある小物が並ぶ。
作品はほぼペン一本で描く。愛用は「コピックマルチライナーブラック」の0.3㎜。色は自身ではつけず、デザイナーにまかせることも。
LEE100人隊親子の
激推し絵本 TOP 7
LEE読者もヨシタケさんの絵本が大好き!
1
『もうぬげない』(ブロンズ新社)
「引っかかるよー、と服を脱ごうとする息子。『またやってる』という顔で服をスポン!と脱がせる私。きっと絵本のお母さんと同じ顔をしています」(TB 季絵さん)
2
『ねぐせのしくみ』(ブロンズ新社)
「なぜねぐせができるの?と娘に聞かれ、この本を。出てくる寝相も、『わかるわかる!』とうなずくポーズだらけで読みながらクスッとします」(No.099 aimiさん)
3
『こねてのばして』(ブロンズ新社)
「出産祝いでいただいて。テンポがいいので読む私も楽しい」(No.097 バマさん)
「スキンシップしながら読めるので、子どもが大喜び!」(No.093 まいちさん)
4
『ふまんがあります』(PHP研究所)
「この本を通して、『大人が必ずしも正しいわけじゃない』『間違っていると思ったら言ってもいい』ということがわが子に浸透したと思う」(No.053 ブルーさん)
5
『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)
「読んだ後は、3歳の息子がもらしても笑い合えるように」(No.024 kanoさん)
「まさに息子がちょっともらしているときでクスッと笑えた」(No.018 キッキさん)
6
『あんなにあんなに』(ポプラ社)
「読み進む中で、“今”を感じることの大切さを教えてくれた」(No.071 わかさん)
「書店で立ち読みし、号泣。初めて自分に買った絵本です」(No.076 そのぴさん)
7
『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)
「目の前にあるものだけが正解でないことを教えてもらいました」(No.087 ととさん)
「息子の幼稚園の頃のお気に入りで何度も何度も読みました」(No.008 すずさん)
Staff Credit
撮影/砂原 文 取材・原文/福山雅美
こちらは2024年LEE4月号(3/7発売)「ヨシタケシンスケさんと考える「はたらく」ってなんでしょう?」に掲載の記事です。
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