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ファッション界のパワーカップル、親子海外旅のイチオシは意外なあの国⁉

【子連れで世界一周】夫妻に聞く“旅の本音”「ロンドン・サマースクールで感じた6歳娘の変化」

  • 城リユア

2024.02.25

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サマースクールを組み込んだ短期の親子旅なら挑戦しやすい

写真左からJOEさん、6歳の娘さん、HARUMIさん

仕事一筋だった人気スタイリストのJOE(城正博)さんは昨年1月、当時5歳(現在6歳)の娘さんを連れて世界一周の旅に出発しました。記事Vol.2では、一緒に旅するファッションデザイナーの奥様・HARUMIさんにもお話を伺います!

JOEさんお久しぶりです! HARUMIさんはじめまして。今回は“妻目線”の本音もぜひ伺いたいです。

HARUMI&JOEさん:よろしくお願いします!

HARUMIさんは日本で約13年間アパレルブランドを運営してきました。仕事や子育てでお忙しいなかJOEさんから突然、世界一周したいと告げられた時はどう思いましたか?

HARUMIさん (以下、Hさん)正直、めちゃくちゃびっくりしましたね(笑)。私もずっと旅への憧れがあり、以前1、2ヶ月ほど海外へ行く提案をしたことがあったのですが、長期間はやはり難しいと言っていたし……まさか1年間もとは……。夫はこの20年いつ休んだか思い出せないほどの仕事人間だったので、真逆の生活になるのも不安でした。

スペイン・サンセバスチャンのビーチにて

ご自身の仕事を中断する不安も?

Hさん:ありましたね。仕事ですから大変なことも多いですが、私にとって大好きな時間でもあります。娘の出産のタイミングでも年2回の展示会は続けてきましたし、1年もの中断を想像したことはありませんでした。ただ、同時にめちゃくちゃいいアイディアだなと感じて。

パリのルーブル美術館

Hさん:制限の多かったコロナ禍の反動からチャンスがあればどんどん行動したいと思うようになっていたし、娘は小学生になるとだんだん親から離れていくでしょう。小学校入学前の1年間でとことん世界を一緒に楽しむという経験は、あらゆる不安に勝るだろうという直感もありました。勢いだけでないことを確認するためにも数週間後にもう一度夫婦で話し合って、旅立つ決意を固めました。

 ※vol.1はコチラ【子連れで世界一周】仕事しかしてこなかった人気スタイリストJOEさんが「すべてを捨てる覚悟」で、妻&5歳の娘と旅に出た理由とは?

ロンドンのサマースクールで感じた娘の成長

ロンドンのサマースクール

前回の記事では、ロンドンに3ヶ月滞在する間、娘さんをサマースクールに通わせる予定だとおっしゃっていましたよね。いかがでした?

Hさん:娘の成長が最も目に見えて感じられた日々でした。英語の上達は少しですが、コミュニケーション能力がアップして、初対面の子にも積極的に話しかけられるように。旅の最初の頃は公園で仲良くなりたい子がいても「ママ、一緒に付いてきて」とモジモジしていたけど、最近は「大丈夫、私、1人で行ける!」と。なんとなく単語を聞き取って意味を理解しながら、覚えた英語を使って返答し自然と輪に溶け込んでいる姿を見ると感慨深いです。

きっと「相手からは来てくれないし」「自分から行動を起こさないと何も始まらない」ことを彼女が身をもって学んだからこその変化なんだと思います。サマースクール中は特に、日に日に自信に満ちた表情に変わっていきました。

俄然サマースクールが気になります! 長期の世界一周旅はさすがに難しくても、英語圏の国のサマースクールに合わせて、夏休みに子連れ海外旅(短期〜中期)に出るのもよさそうですね!

ロンドンのサマースクール

Hさん:そちらの方が実現性は高そうですよね。夏休みのタイミングで1週間〜2ヶ月ほど滞在するだけでも収穫はあるし、親子そろってきっとよい経験になるんじゃないかな。

イギリスのサマースクールに参加する日本人って結構いるのでしょうか?

イギリスのロンドンブリッジ

Hさん:想像していたより多い印象ですね。ただ、コロナ禍の影響もあって日本のエージェントを介して通うスクールはまだ学校を選べるほど数が出そろっていないのが現状のよう。(2023年夏季の時点では)私たちはエージェントを通さずローカルの学校を検討し、カリキュラムなどが娘に合っていてすごくよさそうだったので決めました。

意外と簡単に通える?

Hさん:娘が通ったスクールはWEBサイトで内容やスケジュール等を確認して参加を決定後、オンラインでブッキング、クレジット決済して、Webアンケートで連絡先や体調などを回答したら、あとは「当日来てください」という流れでした。当日は子供を預けたらすぐにスタート。朝8時半〜16時半まで預けられて、ランチとおやつのスナックを持たせていました。

ロンドンのサマースクールはさまざまな種類があるんでしょうか?

音楽系のサマースクールにも参加

Hさん:そのようですよ。うちは6歳なので座学よりダンスや歌やボールゲームなどのアクティブ系をセレクト。アートの時間には手を動かして創作を楽しみました。音楽系のサマースクールにも数日通いまして、触れられる楽器の数が多くてびっくり! 楽器も人数分あるし、とにかく体験教育に熱いのが印象的でした。イギリス人以外のキッズもちらほらいていろんな国の子どもたちと交流できたのもよかったです。

娘さんにとっては素晴らしい体験でしたね!

Hさん:それは間違いありませんね。ただ実はサマースクール期間中に(サマースクール以外の場所で)娘が右肘を骨折し、現地の病院で手術するというトラブルが起きてしまいました……。このまま親として旅を続けていいものか、かなり迷ったんです。

Jさん:幼い子に海外でつらい経験をさせてしまい、これって本当に正解なのかなと心が揺らぎました。現地の医師とも相談し治療の経過を見ながら今後どうするか決めることになりました。運良くすぐに回復し、子供の治癒力の早さに驚きつつ「ここまで治ったなら大丈夫だね」と、結果的に旅を続けることにしました。

旅の続行、娘さんの反応はいかがでしたか?

Jさん:ロンドンのサマースクールで友だちが何人かできたようで、イギリスから帰りたくないと言うほどだったので嬉しかったみたいです。僕たちが夏にロンドンに3ヶ月滞在したのは、たまたまシェンゲン協定の事情があったからだし、骨折で痛い思いをさせてしまったけれど、娘が楽しんでいる様子や成長を見ると結果的にはサマースクールに通わせることができてよかったと感じています。

Hさん:怪我後はサマースクールはお休みし、宿泊中のairbnbの部屋にシッターさんをお招きして引き続き娘が英語に触れられる環境を用意しました。

世界一周、夫婦円満の秘訣って?

部屋で料理中のJOEさん

話題はガラっと変わりますが、どんなに仲のいい夫婦でも24時間一緒にいると喧嘩になりそうです。 夫婦円満の秘訣はありますか?

Jさん:お互いが「言いたいことを言わせてもらいます!」モードだと悪口の応酬になっちゃうから、イラッとしたら“とにかく黙る”。夜なら子どもと一緒にもう寝ちゃう! これに限るかと(笑)

Hさん:そうだね(笑)。役割分担も大切ですよね。日本では料理はずっと私の担当だったけど、旅では夫も料理をするようになりました。

Jさん:旅を機に、YouTubeのレシピを見よう見真似で作りはじめたんです。だいたい朝ごはん担当は妻、その間に僕は娘の歯磨きの仕上げ。昼ごはん担当は挙手制で、晩ごはん担当は僕といった感じで、いまのところうまく分担できています。

旅で出会った仲間と料理&食事

Hさん:娘はパパお手製のパスタやチキンなど毎日いろんな料理を楽しめるようになり、こうした記憶ってきっとずっと残るんです。すごくいいことだなって。

Jさん:ちなみに食器洗いは「料理をしていない方がやる」がルール。そのほか細かいことは気付いた方が動くようにしています。

「気付ける人」って、いつの間にか偏ってきません(笑)?

Hさん:そうですね(笑)。そこは、お互いの特性や得意不得意を理解しつつ、フォローし合うよう心がけています。



「海外にはこんなにカッコいいお婆ちゃんがいるんだ!」

参考になります! ところで、HARUMIさんも長年ファッション業界で働いてこられましたが、世界を旅して仕事への好影響はありました?

Hさん:私たちがこれまで訪れた国、特にヨーロッパのみなさんは「年齢に関係なく、好きな服を自由に着ている」と再確認できたことですね。言葉にすると意外と普通ですけど、実際この目でみた海外と日本の差は大きかった。

イギリスのリサイクルショップ

Hさん:特に日本の女性はある程度年齢を重ねると格好も大人しくなりがちですよね……でもヨーロッパでは年配女性の多くが好きな服に身を包んでいるんです。「こんなにカッコいいお婆ちゃんがいるんだ……!」と驚かされることが多かったですね。

Jさん:年を取るのが楽しみになったよね!

Hさん:うん、この違いを肌で感じられたのは、デザイナーとしてすごくよい経験でした。

特にどの国の方々が印象的でした?

Hさん:やっぱりフランスやイタリアのお婆ちゃんたちは素敵でしたね。洋服の色、柄、組み合わせを頭からつまさきまで自分スタイルでとことん楽しんでいるんです。細いヒールを履いているご年配の女性も決して珍しくなくて、見ているこちら側も背筋がピンと伸びました。

それからロンドンには、リサイクルショップやチャリティショップがすごく多いんですよ。日本だと古着屋さんの客層は若者が中心だけど、こちらは若い人からお年寄りまで幅広い年齢層が掘り出し物を探しに来るし、ファミリーもよく見かけます。みんなが古着を当たり前に楽しんでいて、サスティナブルな観点からもすごくいいなと感じています。

JOE夫妻的「子連れで旅しやすい国NO.1」は?

スペイン・サンセバスチャンのビーチ

巡ったなかで「子連れ旅に一番オススメな国」はどこでしょう?

Jさん:どこも素敵だったから絞るのが難しい(笑)。でもあえて一つに絞るならおそらく多くの人が子連れ旅のイメージがない、スペインの「サンセバスチャン」かな! 一番良かったというより一番印象に残ってる。まさに“食を楽しむためにある街”で、食べること以外、観光はほとんどしませんでした。でも大満足!

スペイン・サンセバスチャンのピンチョスバー

Hさん:私もサンセバスチャンですね! ピンチョスバーがいっぱいあって、食べるのが大好きな私たちには最高の街でしたね。ビーチもあるので夏であれば、“海で遊んでお腹が空いたらバーに行く”流れも最高です。

Jさん:フォアグラのような高級食材がひとくちサイズ数百円単位でパンにのってカジュアルに登場します。しかしクオリティはフレンチ料理と遜色なく、普通にフレンチレストランで食べたら3,000円はするよね……?というレベルなんです!

スペイン・サンセバスチャンの街並み

Hさん:バルホッピングは“大人向け”のイメージだけど、子連れで訪れてもウェルカム・ムードですごくありがたかったです。ひとくちサイズのピンチョスは子どもが食べやすく、バルのショーケースに実物がズラーっと並んでるから、娘を抱っこして見せながら一緒に選ぶのも楽しい時間でしたね。

もし“子連れ移住”するならどこがオススメですか?

Jさん:断然オーストラリアですね。僕たちが巡ったなかではメルボルンがすごく住みやすくて、特に公園はアスレチック感のある大きめの遊具や敷地全体のデザイン性など他国とはレベルが全然違い、めちゃくちゃ子育しやすいなと感じました。

オーストラリア・メルボルン
メルボルンの公園に感動!

Jさん:アフリカ大陸にあるモロッコは子どもにやさしい国だという噂は聞いていましたけど、実際、宿のスタッフから地元のおじさんまで本当に子供にやさしくて。ご当地グルメはもちろん、イタリアンとかハンバーガーも意外と充実しているから食べ物にも困りません。ちょうど僕たちが出国した2週間後にモロッコで大地震があり、お世話になったみなさんの身がとても心配です。

モロッコ・マラケシュのリアドにて

それは心から気がかりですね……。

旅の幸福度と、帰国後の働き方について

旅で出会った仲間たちと

今後は東欧や北欧3国などを経てアメリカ大陸へと渡るとのこと。ルートはどのように決めていますか?

Jさん:旅先で出会った方々のアドバイスも重視しています。「せっかくならこの国も行きなよ」とか、逆に「素敵な国だけど、観光するには夏の方がいい」とか大いに参考にさせてもらいました。

旅人や地元の方とつないでくれる友人や仕事仲間がいるって本当に素敵なこと。そして、すべては“自分たちから行動しなければ何も生まれなかった”。行動力という点に関して成長したのは娘だけではなく、僕たち夫婦も同じなんです。

JOEさんには前回伺いましたが、HARUMIさんは世界一周で幸福度は正直上がりましたか? 子連れの世界一周を迷っている友人がいたらどんなアドバイスをします?

Hさん:幸福度は上がりましたね。だって何気ないことを含めて日常的にやっぱりすごく楽しいんです。もしそんな友人がいたら「長期間でなくともぜひ子連れ海外旅を体験してみてほしい」と伝えたいですね!

娘さんも多くの友だちができた

Hさん:例えばロンドンはずっと移民を受け入れてきて、さまざまな国籍・人種の方々が住んでいます。そんな環境のなかで、娘が「グリーンの目をした子もいるし、茶色い目をした子もいる」、電車の駅名を見て「英語には漢字みたいなのはないの?」など……色んなことに気づき、「これが世界なのか」と理解していく様子をすぐ隣で見守ることができる言葉の壁を超えて現地の子供たちと遊ぶ逞しい姿を見られる。これって親としてすごく幸せな時間ですから。

帰国後の娘さんの進路は、どんな風に考えていますか?

Hさん:地元の小学校のほかに、英語教育に強いアフタースクールに通わせることも一つのアイディアです。英語環境の放課後を送ることで、旅で習得した英語力をキープしていきたいですね。言葉はあくまで一つのツールですが、そこから広がる世界の広さや楽しさは娘もこの旅を通して体感していましたので、できる限りの環境づくりはフォローしたいと思っています。

娘さんに英語を教えてくれたシッターさんと、ロンドンのairbnbにて

帰国後の働き方については、いかがでしょう? お二人なら、仕事仲間からオファーがたくさんありそうです。

Jさん:これまでお世話になってきたみなさんからの依頼には、もちろんできるだけ応えていきたい気持ちがあります。けれど前回お話したように、旅を通じて「幸せとはなにか?」という問いへの解像度があがったいま、仕事を最優先するかつての生き方・働き方はできればしたくない。家族のためにどんな働き方にシフトしていくべきか、旅のなかで考えを深めていけたらなと思っています。

Hさん:私も同感ですね!

◯HARUMI ファッションデザイナー/1978年スペイン生まれ 。フリーランスデザイナーとして活躍し、自身のアパレルブランド「DOMENICO+SAVIO」も日本で約13年運営してきた。Instagram    

城 正博(JOE) スタイリスト/1976年和歌山県出身。メンズ誌を中心に活躍し、広告やタレントのスタイリングも数多く手掛ける。2023年1月31日から妻と当時5歳の娘とともに世界一周。YouTubeチャンネル「SOLA旅」で旅の記録を発信している。Instagram

取材・文=城リユア 写真提供/JOEさん&HARUMIさん

城リユア Riyua Joe

編集者・ライター

大分県生まれ。情報誌編集部を経て独立。旅、エンタメ系インタビュー、ビジネスなど幅広く執筆。ニュースメディアでのノンフィクション取材や旅メディアでの動画制作も。

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