6月のフローリング掃除の回は、おかげさまで大反響をいただきました。
どんな家にも必ずある「床」。
床掃除のための掃除機やフローリングワイパー、粘着テープなどなど、その掃除道具も身のまわりにいろいろあるものです。
でも、本当に困っている「ベタつき」や「におい」に対しては、いつもの道具では、どうにもならない。どうしたらいいか、わからない。
そんな声も多く聞こえてきました。
そこで今回は、フローリングと同じくらい身近な、でも掃除の仕方がよくわからない「ラグ」や「カーペット」「絨毯(じゅうたん)」。
そんないわゆるファブリック系の床の掃除方法について、お話ししていきたいと思います。
敷き物は気温が低くなってからのもの、秋になってから出すという人もいそうなのに、なぜ真夏にこのテーマを取り上げたかというと、
猛暑時、その強い日差しと高い気温下にラグやカーペットを天日干しすることは、無料のダニ・カビ発生予防対策になり、おすすめだからです。
(ただしゲリラ豪雨に要注意。干すならば天候変化に対応、すぐに撤収可能な在宅日に!)
特に、これからもしばらくしまっておきたい敷き物は、これから説明する方法で掃除した後、猛暑日などに完全に乾燥させてからしまうようにしてくださいね。
湿度の高い日本では、敷き物はダニの温床になりがち
さて、話を戻しますが、そもそも「ラグ」「カーペット」「絨毯(じゅうたん)」とは同じもの? どこがどう違うのでしょう。
まず「ラグ」ですが、これはJIS(日本工業規格)で「置き敷きの敷物」かつ、「主に部屋の中敷き、部分敷きとして用いる床敷物」と定義されています。
「カーペット」というのは、部分敷きではなく床一面に「敷き詰める」タイプの敷物。
そして「絨毯(じゅうたん)」は、「ラグ」や「カーペット」を日本語訳したものの「総称」です。「ラグ=絨毯」というのはちょっと意外なのですが、確かに「魔法のじゅうたん」も「ラグ」ではありますね……。
この手の敷き物は、もともとカラリとした気候の地域での防寒目的として発達・使用されてきました。
日本の住宅では戦後、容易に「和室の洋室化」ができるとあって、畳の上に安価なアクリル絨毯を敷き込むことが流行りましたが、高湿度な気候下ではダニの巣窟・温床となり、アレルギー問題のもとに。
それとは別に、キリム(中近東の織物)などの流行などもありつつ、近年のインテリア的なトレンドでは、おおむね通年使用されがちであるようです。
かく、1年を通して暮らしに密着しているがゆえに、ラグやカーペットの汚れ・ベタつきが気になるのも、自然の理なのです。
ラグやカーペットに付く汚れとは? 落とすには?
基本的に、フローリングが汚れる原因はラグやカーペットが汚れる原因と同じで、足裏などからの汗や皮脂のほか、髪の毛や綿ぼこり(繊維クズ)、食べこぼし、ペットの毛。調理に伴う油煙、水周りなどからのカビ胞子、細菌。
また窓や玄関、人について屋外から持ち込まれる泥砂、花粉、煤煙(排気ガス)なども付着しますし、その織りの奥深くに入り込みます。そこで増えたダニの糞や死骸なども汚れの一部と言えるでしょう。
そんなラグやカーペットの汚れを落とすには、どうしたらよいのでしょう?
まず、さらさらしたホコリや毛といった類の汚れであれば、掃除機でしっかり吸引することでも減らすことができます。
大きな毛や繊維クズだけなら粘着シートでも、目立つものはさらえます。
ただベタついた皮脂や油煙、煤煙などによる汚れは、やはり掃除機や粘着シートでは落とせません。
皮脂や油煙汚れに一番効果的なのは「洗濯」です。
敷き込んでも部分的に外して洗濯ができる「ジョイントカーペット」含め、洗濯機で洗えるタイプやサイズのラグならば、洗濯することで、おおむね汚れを落とすことができます。
洗濯できない敷き物は、どう掃除すればいい?
洗えないものならば「拭き洗い」をする手があります。
市販のおしゃれ着用中性洗剤をぬるま湯に溶き(洗濯物の手洗い推奨の濃度が目安)、白い薄手のタオルなどを浸して硬く絞ったもので、ラグやカーペットの表面を、毛足を逆立てるように拭いていく方法です。
白いタオルが真っ茶色になるくらい汚れがついていることが多く、この「拭き洗い」を初めて試してみた人は、たいていびっくりします。
ウールのトライバルラグなどでも、中性洗剤であれば拭き洗いが可能です(色落ちに注意)。ただしぬるま湯で仕上げの「すすぎ拭き」を行い、洗剤成分はなるべく残さないようにしてください。
調理油などの多く飛んでいるキッチン近くのアクリルカーペットなどでは、アルカリ剤の「重曹」や「セスキ炭酸ソーダ」を5%濃度程度の水溶液にし、そこに浸して絞ったタオルを、さらに電子レンジで2分程度温めたもの(レンチンぞうきん)で拭く方法もおすすめです。
おしゃれ着用中性洗剤より強力に油汚れが落ちるので、サッパリします。ただしこのとき火傷や手荒れの懸念があるため、必ずゴム手袋を装着するようにしてください。
敷き物への、ペットや幼い子どもの粗相の応急処置法
ラグやカーペット、なかでも特に毛足の長いタイプのものは、家族に幼い子どもやペットのいる家庭には、あまりおすすめできません。
まず長い毛足に抜け毛が絡みやすく、通常の掃除機掃除では取りにくいほか、はっきり言ってしまうと、幼い子どもやペットがコントロールできないことのある粗相、「うんち」や「嘔吐したもの」の始末が、きわめて難しいからです。
初めて粗相の始末に対面すると、多くの人はパニックを起こしてしまうようですので、基本の処理方法を覚えておくといいでしょう。
まずペーパー類で表面の汚れを早急に取り去り(トイレットペーパーは水分でボロボロになってしまうことがあるので、できればティッシュやキッチンペーパーなど溶けない紙の方が扱いやすいです)、捨ててもいい濡れ雑巾などで目立つ汚れを摘みとるように拭きます。
ラグやカーペットの布には水分が染み込み、さらに臭いが残りやすいので、胃酸や便に含まれる酸を、重曹ないしセスキ炭酸ソーダなどのアルカリで中和し(重曹そのものを振りかけるか、水溶液スプレーを噴霧し)て、拭き取り、できれば同時に強力に吸引(バキューム)するのを繰り返します(通常の掃除機では水分を吸い取れません。壊れます)。
この「濡らしてからのバキューム」が容易にかなう乾湿両用掃除機や、洗剤入りの水を吹き付け即吸引する掃除道具(リンサークリーナー)が近年、注目を浴びています。
ただリンサーも、洗濯できないものに対しての副次的な対応なので、本来であればやはり洗濯してしまった方がベターなのです。
ラグやカーペットの手入れで、市販の除菌消臭剤をひたすらスプレーする方もいるのですが、ちょっと想像してみてください。こぼしたカレーで汚れた床に除菌消臭剤を吹き付けてもカレーは消えませんよね。
皮脂や油煙汚れなどは、一見みえていなくてもそこに汚れが「あります」。とにかくこの汚れを物理的に「減らす」ことを意識しながら、掃除をしていきましょう。
……と、ご説明すると、床に何かこぼしたり大きな汚れをつけてしまったときの掃除の「ラクさ」は、フローリングにまさるものなし。
ですが、ラグやカーペットといった敷き物の「あたたかさ」が、私たちの身体や心に効く度合いは、それとは単純に比較できないもの。
来たる秋冬へ向けて、ぜひ無理のない範囲で敷き物ケア、先取りしてみてください。
先取りで安心! おそうじ歳時記
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
フローリングの水拭きはOK? NG? 裸足でベタつく床の掃除法の正解教えます!【無垢材もきれいで長持ち】ーー2023年上半期BEST20
この連載コラムの新着記事
藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。