大会参加を通じて広がる旅の醍醐味
前投稿ではオーストラリアのプラントベース食事情についてお伝えしましたが、渡航の目的は夫婦でトレイルランニングの大会に出場することでした。
タスマニア島の大自然、山中を駆け巡るレースです。
夫は67km、私は25kmの部をそれぞれ選択しました。
本投稿では大会レポート、そして皆さんにもぜひ海外で大会に出てみることをお勧めしたく
- 大会に出ることのススメとその理由
- その時の注意点(ルール等)
- 異文化交流のお楽しみ
についてご紹介します。
「海外でレースだなんて、ハードルが高すぎる」という声が早くも聞こえてきそうですが、私も30代半ばまで競技として走ったことがなかったので、レースに出る、ましてや海外で大会でなんて想像だにしませんでした。
そんな私のレースデビューは、日本ではなく海外(アメリカ)でした。
レースそのものが特別なことですが、異国の地を走ることは更に非日常なこと。
でも一歩踏み出した結果、人生をより一層豊かなものにしてくれました。
その土地(国)の素晴らしい場所をぎゅっと凝縮して知ることができますし、
体力も精神力もどん底の気分から、ゴール後は涙が出るほど最高潮の興奮まで味わうことができます。
たった数時間のイベントで、旅の思い出が何重にも濃くなるのです。
いつもの旅行に新たな刺激を!大会に出てみるという選択肢
旅は人生の縮図と言いますが、レースもまた人生の縮図だと私は思います。
自分が主役に成らざるを得ない、心身ともに激動の時間。
他の誰でもない、己との戦い。
辛い、嬉しい、苦しい、楽しい、もう止めたい、絶対に諦めない……ネガティブとポジティブの感情が幾度となく繰り返され、この気持ちの揺れ幅はどんなに超スペクタブルな大作映画をもってしても、比較にはなりません。
また、他の選手がいることによって体力の最後の一滴まで絞り出されるあの経験は、練習ではとても味わえないレースならではの醍醐味。
「海外レースに出る」ことは何もプロアスリートだけの特権でありません。
日本でも市民ランナーが楽しむレースがあるように、海外にも多くのプロ選手と一般選手が並んで出場できるレースが存在します。
「海外でレース」それだけで、ドキドキワクワク。
いつもと違うことへのチャレンジが、大いに脳を刺激することでしょう(若返り効果も期待)。
それぞれの楽しみ方がありました
また、大会に出ることは必然的に土地の文化に触れたり、歴史を知ることにも繋がります。
今回は、タスマニア島はホバートという街に神々しく佇むクナニという山がレースの舞台。
このクナニマウンテンは、オーストラリアの先住民族“アボリジニ”にとって神聖で大切な山でもあります。
レース前にはアボリジニの方々による選手の安全を祈願したスモーキング・セレモニーが開かれました。
参加者もまた煙を浴びながら「山を走らせていただく」という気持ちで、伝承されてきたこの土地の文化に敬意を払います。
レース主催者もこの山を走ることで皆がアボリジニの文化を忘れないように、そしてリスペクトすることを主催の目的の一つとしていました。
そして、レースコースは主催者が考えた最もこの山を楽しめる極上のルートを設定しています。
いわば、観光ルートを効率的に回れるということでもあります。
制限時間を目一杯使って、半ばハイキングのように景色の写真を撮りながら進む選手も大勢いました。
それぞれのペース、それぞれの楽しみ方でいいのです(もちろん、安全を考慮しながら)。
走る方必見!レースに出るならランニング系がおすすめです
レースといっても一般の選手が出場できる種目はある程度限られていて、夫のように自転車系も人気がありますが、最もメジャーなスポーツはランニング系。
街の舗装路を走るロードランニングか、今回のようなトレイルランニングです。
ランニング系は機材スポーツではないので、装備が少なく、荷造りという点でもハードルが低くなるかと思います。
海外レースにでる!と覚悟が決まったら、オンライン上でレースに申し込みます。決算も、オンライン上で完結。
人気のレースは募集開始から数分で定員一杯になってしまうことがあったり、中には一定のポイント(過去に出たポイント対象レースの結果に応じてもらえる)がないとエントリーできなかったりするものもあるので、注意が必要です。
レース毎に異なるルールも!事前に注意しておくべきこと
気をつける点は、事前にレースの注意事項をよく読むこと。
日本とは勝手が違うレースまでの手順や、コロナ禍を経て新設されたルールが設けられている場合があります。中でも大会が定める必要装備品は、絶対に見逃してはいけません。
舗装路のランニングレースではそこまで持つものはありませんが、山の中を走るトレイルランは安全の為にも必要装備品が定められていることが普通です。
今回のレースでは、事前に必要携帯装備品のチェックが街のスポーツ用品店で行われ、レース前日の受付時にも最終チェックがありました。
私がこれまで出たことのあるレースの中で最も装備品の数が多かったのですが、雨具(防水かどうかの厳しい素材チェックもあります)や携帯電話などはもちろん、500kcal以上の補給食、1L以上の水分、ホイッスル、地図アプリのダウンロード、紙の地図、蛇に噛まれた時の包帯、防寒シートなど。
67kmの部に出場した夫の携帯必須の品目は更に多く、総重量は3kg程になっていました。
しかし、距離に関係なく山は山。大自然では急な天候の変化や怪我など、いつ何が起こるかわかりません。
そのため、トレーニングで体を作っておくという準備と同じくらい装備は真剣に向き合わなければいけません。
レースでは、人との触れ合い(競り合い?)もまた楽しいものです。
だんだん同じレベルの選手がわかってきて、道を譲り合ったり時に励ましあったりするのですが、心の中ではバチバチに戦っています。
でもそのおかげで最後まで気力が持ち、ゴール後はお互いを称え合い、「あの道がやばかったよね」「景色がすごかったね」なんて振り返ったりします。
ついさっきまで赤の他人だったのが信じられないくらい、いつまでも話題が尽きない時間を過ごせるのもレースの醍醐味です。
色々な文化に触れる、という意味ではレース会場でのフードトラックも楽しいです。
本格的な釜焼きピザや、地ビールなどもありました。私はレース後、プラントベースのベジカレーをチョイス。
疲れた胃腸には少々刺激が強かったかもしれませんが、完食。とても美味しかったです。
レースの結果としては、私は年代別で3位でした。純粋に、嬉しい!
夫は総合4位。ナショナルチャンピオンシップにも認定されたハイレベルな戦いの中で、中々良い結果だったのではないでしょうか。
今大会の、公式ハイライト動画が先日公開となりました。
圧巻の景色や大会の盛り上がりが伝わってくる、迫力ある動画です。よろしければぜひご覧ください。
食を通じた異文化交流
この体験は特別なものかもしれませんが、今回はホテルに泊まらず、友人宅にお世話になりました。
プロのマウンテンバイク選手で管理栄養士の資格も持っているので、一緒に買い物に行ったり料理を作る時も色々と参考になったり、オーストラリアならではの調味料を教えてもらったりしました。
私はお礼に稲荷寿司や蕎麦などの日本食を作って、異文化交流。有意義な時間となりました。
いつもと違う環境こそ、楽しんで
海外でレースに出ることは、汗をかいた分だけ深く心に刻まれる体験となります。
もちろん気をつける点などもありますが、いつもと違うこと・違う環境をプラスに捉えると更に世界が広がる、と身をもって感じてきました。
空港からレース会場へは専用バスが出ていることもありますし、レンタカーなどを使って自力で行かなくてはいけないことも。でもその一つ一つが、思い出になります。あまり起こってほしくはありませんが、ちょっとしたハプニングも、後から思い返すときにはいいスパイスになっていることも。
短い期間でも、かなり凝縮した時間が過ごせます。
ひょっとしたら、地元の人が入ったことのないエリアもエンジョイしているかもしれません。
帰りの飛行機ではクッタクタになっていても、それもまた、グッジョブ自分!です。
もし機会があれば、海外でレースに出ることも、目を向けてみてはいかがでしょうか。
MINI COLUMN
今大会の前に滞在していたダービーという町で(車で4時間位離れている場所)、とても素敵なサウナに行きました。
目の前に湖が広がる、絶景サウナです。熱くなったら、湖に入ることができます。
人気のスポットで予約必須ですが、大自然を感じられるもう一つの機会でもありました。サウナ好きの方に、おススメです!
池田清子 Sayako IKEDA
アスリートフード研究家
ビオトープ株式会社代表。夫は7年連続日本代表マウンテンバイクプロライダー、池田祐樹。菜食・プラントベースを主とした「細胞から健康的に強く美しくなる」食事の研究と発信を行う。2014年より自身もサイクリング・ランニング・筋トレを中心とした運動をスタートし、国内外での大会出場経験も多数。著書に『EAT GOOD for LIFE』至上最高の私をつくる「食」×「ながらトレーニング」』『野菜のおいしい食べ方』https://biotope-inc.co.jp https://biotope-inc.co.jp