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昨年だけで公開映画が8本にのぼる、人気沸騰中の磯村勇斗さん。硬軟併せ持ち、作品ごとにまるで違うイメージを放つが、昨年のカンヌ国際映画祭に出品された話題作『PLAN 75』に代表されるような鋭い問題提起を投げかける社会派作品への出演が多いのも印象的だ。この『渇水』も、現代日本が抱える根深い問題をテーマに据える。
こういう作品を作って届ける、それも一つの小さな革命
────磯村勇斗さん
「あえて選んでいるわけではなく、ステキだなと思う脚本に社会派の作品が多くて。本作も脚本を読んだ瞬間、参加したいと思いました。格差社会や貧困などをテーマにしつつ、水道局員を軸に物語が進んでいくのが新しいなと。最後に主人公が起こす、ある小さな革命こそが、今の日本に必要ではないかと感じました」
岩切役には生田斗真さん。磯村さんは、岩切とともに水道料金を滞納する家庭を回っては、停水執行をする水道局員・木田を演じた。
「木田はごく普通のどこにでもいそうな人物なので、職務を遂行するうえで、岩切とどう価値観の違いを出すかは考えました。少し楽観的で、自分が生きていくための仕事と割り切りつつ、子どもたちの前で栓を締めることに葛藤もしているんです」
精神を病む局員もいる中で、2人は一見、淡々と職務をこなしていく。そんな中、育児放棄された幼い姉妹と2人がやりとりをするシーンは、忘れ難く脳裏に刻まれたという。
「木田がアイスを買ってきて、4人で並んで食べるシーンが大好きなんです。それまでは姉妹になかなか歩み寄れなかったけれど、あの瞬間だけは時がゆっくり平和的に流れていて。岩切にとってもターニングポイントになった、非常に重要でいいシーンですよね。だからその後の行動は、本当に胸が苦しかったです」
本作がはらむ社会問題は今や誰もが知るところだが、原作が書かれたのは約30年も前というから驚く。
「今は格差社会や子どもの貧困についても社会問題として取り上げられるようになりましたが、昔から同じ問題を抱え、同じ過ちを繰り返してきたのではないか、と。本作の影響力はわからないけれど、こういう作品を作ること、届けることが必要。それも小さな革命だと思うんです」
さて、木田は“どうすればこの仕事を好きになれる!?”と訴えるが、好きなことを仕事にした磯村さんは、その気持ち、わかりますか!?
「わかります。もともと好きで始めた仕事なので嫌いにならない自信がありましたが、続ける中で一杯いっぱいになったり、見なくていいものを見てしまったときに、“あれ、好きじゃないかも!?”と。どんな仕事でも壁に当たるときはありますよね。今は俳優業が好きだし、“どうすればこのシーンをよくできる!?”“どうすれば成立させられる!?”と、“どうすればいい!?”を追いかけています」
最後に『渇水』に掛け、今、喉から手が出るほど渇望するものは!?
「広大な土地(笑)。自分の好きなアートやいろんな建造物を建て、その中にサウナが入った“好きなものランド”を作りたいです。そして作品を通してラブ&ピースを伝えていきたい。そのためにも、与えられた脚本を演じるだけでなく、企画や脚本からかかわれる“0から1を作り出せる俳優”になりたいですね」
すでに短編映画を監督した磯村さんの口調は熱を増し、さらに大人の色気をはらんだ眼差しに魅せられた!
いそむら・はやと●1992年9月11日、静岡県生まれ。’17年に連続テレビ小説『ひよっこ』の“ヒデ”役で注目を集める。’22年に公開された映画は『前科者』『ホリック xxxHOLiC』『サウネ』『PLAN 75』『ビリーバーズ』『異動辞令は音楽隊!』『さかなのこ』『カメの甲羅はあばら骨』の8作にのぼる。『波紋』が5月26日公開予定。
Instagram:hayato_isomura
Twitter:hayato_isomura
公式サイト:https://hayato-isomura.com
『渇水』
日照りが続く夏、市の水道局員・岩切(生田斗真)は後輩の木田(磯村勇斗)とともに、水道料金を滞納する家庭を回り、停水執行をしている。しかしある日、育児放棄されて家に取り残された幼い姉妹の目の前で水道を停めなければならなくなり……。1990年に芥川賞候補となった河林満の同名小説の映画化。共演に門脇麦、尾野真千子ほか。6月2日より全国ロードショー。
撮影/木村 敦 ヘア&メイク/佐藤友勝 スタイリスト/笠井時夢 取材・文/折田千鶴子
こちらは2023年LEE6月号(5/6発売)「カルチャーナビ」に掲載の記事です。
※商品価格は消費税込みの総額表示(掲載当時)です。
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