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雑貨店hal店主後藤由紀子さん「久しぶりの夫婦二人暮らし」「推し活」「引き際」を語る

  • LEE編集部

2023.04.29

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後藤由紀子さん

引き続き、雑貨店『hal』 店主・後藤由紀子さんのインタビューをお届けします。

取材は、桜が咲き始めた3月末に行われました。撮影中、お店に1人のお客さんがやって来ます。「子どもが進学で家を離れるので、後藤さんが本で紹介していた、息子さんに持たせた器と同じものが欲しくて買いにきました」。後藤さんの暮らしや考え方に賛同する地元の方やファンの方も多く、『hal』は沼津を代表するショップの一つになりました。

後半では、後藤さんの人生を変えた言葉、健やかな笑顔のもとになっている暮らしのポイント、子どもが巣立った後の夫婦の暮らしについて聞きます。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む

「私なんか」と言うのをやめたら世界が広がった

お店を始めて数年経った頃、後藤さんへの取材や企画の依頼が増えてきました。しかし「私なんかを取材をして誰が見るんだろう」「育児もPTAもあるしお店には週6立たないといけない。余裕がないから」と断っていたそう。その考え方を変える、ある出来事がありました。

後藤由紀子さん

「YMOの元マネージャーの日笠雅水さんが手相を見る方なんですが、友人が誕生日プレゼントに日笠さんに見ていただける券をプレゼントしてくれたんです。そこで“あなたは〈私なんか〉っていうのをやめなさい。いろいろやってみると、もっと良くなるわよ”と言われたんです」

それを機に来た依頼はありがたく受けるようになりました。最初に表紙を飾ったのが雑誌『ナチュリラ』、書籍1冊目も『ナチュリラ』別冊でした。それを見て、全国から『hal』にたくさんのお客さんが訪れるようになりました。

「日笠さんに最初に見ていただいた時に“あなた、物を作るようになるわよ”と言われたんです。選ぶのは好きだけど作るのはちょっと……と思っていたんですけど、その後、コラボして服とかバッグとかを作るようになるんです。言われた通りになるから、本当に不思議ですよね!」

本を作るとき「編集者にお任せ」する理由

“私なんかをやめる”“何でもやってみる”ことで、後藤さんの人生は変わりました。ふだん本を出版する時も、企画については編者者にお任せ。「こんなことを紹介してどうするんだろう」「私なんかの当たり前が記事になるとは思えない」と思っても、編集者がうまく切り取り、読者に届くように仕上げてくれるからだと言います。

雑貨と私

後藤さんの最新刊にして20冊目の著書『雑貨と私』(mille books)

「『毎日続くお母さん仕事 おおまか、おおらか、だいたいでやってます』(SBクリエイティブ)で紹介している『きんぴらごぼう』のレシピは、ごぼうをささがきせず、縦半分に切った後、斜め薄切りにしてるんです。それは私が不器用で、上手にささがきができないだけなのですが(笑)読者さんからは“丁寧に紹介してくれてよかった”“参考になった”と感想をいただきました。これも編集者さんのおかげ。プロが一番よく分かっているので、基本はお任せしているんです」

唯一気をつけているのは、良く書かれ過ぎている時。その時は、しっかり赤字を入れ修正して、等身大の自分が伝わるように気をつけているそうです

「素敵って言われるほど、素敵じゃないんですよ。赤字を入れて戻すと、編集者の一田(憲子)さんは“そう書くと喜んでくれる人が多いのに。後藤さんは変わってるよね”なんて言ってくれるんですけど、嘘をついてしまうと実際にお会いした時に“違ってるな”と思われ後始末するのは私なので、後々面倒臭くならないようありのままをお伝えしています。

後藤由紀子さん

後藤さんはhalの近隣でスナックも不定期開店中!

『hal』が私のお店だし、私が一番くつろげる場所だから大切にしたいのもあります。ふだんスーパーでは、2割引のシールがついた豚肉も買いますよ(笑)。スーパーでうっかりお客さんに会って、“今日の晩ごはんは何ですか?”と、かごの中を覗き込まれても大丈夫。“まだ2、3パック売ってましたよ”って、教えてあげちゃいます(笑)」



子ども二人は独立し、現在は夫と二人暮らし

後藤さんの愛らしいしゃべり方と穏やかな人柄。飾らない性格や等身大の暮らしぶりに惹かれる人は多いと思います。そんな後藤さんのウェルネスのポイントは、基本の生活。きちんと食べて寝ること、休むこと。1日の仕事が終わり、家に着いたらお風呂に入って、お酒を飲んで緩めます。特に、撮影やイベントがある時は心も体もフル稼働で力が入りすぎているので、翌日はしっかり休んでクールダウンさせるそう。自分を労い、しっかり甘やかすこと。それは夫に対しても同じです。

後藤由紀子さん

「夫は庭師をやっているので、“今日も暑かったよね、お疲れ様”“寒かったでしょ、大変だったね”と労いの言葉をかけます。人を甘やかしてあげると、自分も甘やかしてもらえる。“自分のやることが鏡になる、返って来る”と気づいたんです」

長男と長女は、それぞれ一人暮らしを始め、現在は夫と二人暮らし。夫婦だけの暮らしになった今こそ、相手を思いやり、労うようになったと言います。

夫婦二人きり、逃げ場がないからお互いを甘やかす

「お弁当作りはもう卒業し、昼は自由に食べてもらっていますが、朝と夜は一緒にごはんを食べます。好きな物を作ってあげたり、もちろん外食しちゃうこともありますよ。お互いを甘やかしながら、“ありがとう”“お疲れ様”をちゃんと伝える。そうすると明日もお互いに頑張れるんです。

以前にタレントのヒロミさんが、奥さんの松本伊代さんについて“これからこの人と離婚することがあるのかなと考えたら、その可能性はない。とすると、あとは関係性を良くするしかないと思った”と話していて、確かにそうだなと思って。二人きり、逃げ場がないじゃないですか。これから5年10年と一緒に暮らすなら、いがみ合うよりも仲が良い方が居心地がいい。それが何よりもウェルネスだなと思って」

後藤由紀子さん

夫にお願いしたことをやってくれなかったり、意思疎通がうまくいかなかったりすることもあります。そんな時もじっくり根気よく接することが大事、と後藤さん。

「カチンとくる時もありますよ。でも27年も経つと諦めもつくし、良いところも悪いところもあるのを知っています。それは向こうも同じだと思うんですけどね。1回ではできないと思ったら、3日続けて言うとか、1日おきに言うとか(笑)。そういう根気強さも備わってきました。あとは、何かしてもらったら“ありがとう!”“すごいね”と言って褒めて伸ばす(笑)。これも大事ですよね」

出張hal、Voicy配信、スナック…やっぱり人とコミュニケーションを取るのが好き

後藤さんにとって、推し活も大切な時間。大好きなバンド・真心ブラザーズに10年前にハマってからは、ファンクラブに加入し、ライブに行くことが一番の楽しみになっているそう。最新著書『雑貨と私』でも音楽好きということに触れていますが、自宅には500枚以上のレコードをコレクションするほど。先日東京で行われた真心ブラザーズのライブに行った時は、レコードショップを周り、「ヒップホップのお気に入りのアーティストのレコードが出ていたので買ってきました」と、嬉しそうに話します。

CLASH LONDON CALLING

最後に、『hal』のこれからと後藤さんのこれから。開店当初から今もずっと変わらず「来年の今頃はどうなっているかはわからないんです」と本音を語ります。

「最近は子育てが一段落したので、友人に会いに行きがてら積極的に出張『hal』を行っています。Voicyで配信をしたり、スナックをやったり。やっぱり接客、人とコミュニケーションを取るのが好きなんですよね。育児から手が離れたせいか、道端で見かける赤ちゃんに“ああ! かわいい!”とお世話したくてたまらなくなっています。『東京かあさん』(家事と育児をサポートするサービス)が静岡でも始まったら、ぜひ登録したいくらいです。

お店については、直近でイベントなどは決まっていますが、いつも引き際を考えながら続けています。SNSでよく“今度行きます!”とか“いつか行きたいです!”とメッセージを頂きますが、万が一私に何かあれば、明日お店があるとは限らないんです。できればすぐに遊びに来ていただけたら嬉しいです」

後藤由紀子さんに聞きました

身体のウェルネスのためにしていること

きちんと食べること、寝ること

「栄養のバランスは、好きな物をバランスよく、あまりこだわりすぎず、3日間くらいで栄養バランスが取れるようにしています。手を抜いて、コンビニやマクドナルドで買うこともありますよ。気をつけているのは、朝ごはんを食べてトイレを済ませておくこと。お店をやっているので、お客さんをお待たせできないですからね」

心のウェルネスのためにしていること

自分へのご褒美、甘やかし

「仕事を頑張った時には自分へのご褒美に、お気に入りのピアスを買ったり、美味しいパンを買ったり。家事も楽できるようにロボット掃除機や食洗機などを積極的に使っています。自分を甘やかすことで、まわりにも優しくなれて、甘やかしてあげられます」

インタビュー前編はこちら!

後藤由紀子さんが沼津にUターンして雑貨店hal店主となり20周年を迎えた「偶然みたいな必然」

後藤由紀子さん


撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

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LEE編集部 LEE Editors

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