【漫画家かなしろにゃんこ。さんインタビュー】ADHDのある息子との寄り添い方「好きを尊重すれば、将来につながる」
2023.02.26
発達凸凹がある子どもと家族のリアルな日常をルポ。また、周りに期待することや子どもの将来への不安など、親としての率直な思いも語ってもらいました。
凸凹をなくそうとするのではなく、わが子の趣味に寄り添い、好きを尊重すれば、将来につながる
漫画家
かなしろにゃんこ。さん
’09年発売の『漫画家ママのうちの子はADHD』(講談社)など、多数の著書でADHD(注意欠如・多動症)がある息子・リュウ太くんとの悪戦苦闘の日々を描く。リュウ太くんは、現在24歳に。
Instagram:kanashiro.nyanko
Twitter:nyankokanashiro
長年、発達凸凹にまつわる情報発信を続け、新著に『発達障害 「できないこと」には理由がある!』(講談社)など。
〈 十数年前のこと 〉
まさかわが子に発達凸凹があるとは思わなかった
現在24歳のかなしろさんの息子・リュウ太くんがADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けたのは10歳のとき。保育園時代から周りとの違いに気づいてはいたものの「うちの子はちょっと元気がよくてやんちゃなだけ」だと思い込んでいたと言います。
「保育園の先生に『一度、園での様子を見てほしい』と言われて見学に行くと、みんながお遊戯をやっていても息子だけ寝そべっておもちゃで遊んでいたり、遊びを邪魔する女の子をスコップで叩いてしまったり。協調性のなさに、これはまずいぞと思いました。
でもだからといって、すぐに発達凸凹だとは思わない。当時はわかりやすい書籍もなく情報も少なかったですし、うちの子に限ってまさか、という考えが根強かったんです。今思えば、園での様子を見るよう促されたのも先生からの遠回しのメッセージなのですが、当時は気がつきませんでした」(かなしろにゃんこ。さん)
10歳で発達凸凹がわかり、ホッとしたと同時に、親がわが子の凸凹を受け入れて、適切なサポートをする難しさを痛感したそう。
「特に当時の方向性として、凸凹がある子どもから凸凹を取ろう、フラットにしようという支援をしていたのですが、正直、これは間違いだったと思います。ADHDがある子に『教室でちゃんと座って勉強しよう』はやっぱり難しいんです。走りながらなら九九を覚えられるかもしれないのに、長所もダメにしてしまう。『学校で使うものを自分で準備しなさい』『片付けなさい』と当時の私はオニババのように怒っていたのですが、できないなら手伝って一緒にやればよかったんです。
息子は毎回お手本がないとできるようにならないので、何なら親がやってあげたほうが、長い目で見たら早く自分でできるようになったかもしれない。毎日のように叱って、きつい言い方をするのはよくなかったなと今は反省しています。その後、発達凸凹にまつわる講演会や自助会などに参加して、息子への接し方を学んでいきました」(かなしろにゃんこ。さん)
息子に合った、人付き合いのポイントを3つ選んで伝えました
リュウ太くんは現在、自動車の整備士として働き、少し前に結婚して充実した毎日を送っているのだとか。発達凸凹が大きくても、わが子が自分らしく生きるために親ができることとは?
「診断を受けた後に、親子関係をよくするためのペアレント・トレーニングを受けて、息子の趣味に寄り添うようにしました。好きなことを尊重されるとうれしく、親へのリスペクトが生まれて、思春期以降も親の言うことが受け入れられやすいそう。発達凸凹があると、人に興味がなく、他人のいいところをまねすることができないので、親が根気強く友達との関係の築き方や世渡り術を伝えていく必要があるなと。
そのためにも、いい親子関係を維持することは大切だと思いました。コミュニケーション能力の向上をテーマにした自助会では、たくさんのポイントがある中で、息子に刺さりそうなものだけを選んで伝えました。『友達の趣味にも合わせる』『自分以外の人の趣味はけなさない』『友達と話すときはマニアックな会話は避ける』の3つで、これだけでも人付き合いができるようになり、友達が増えた。わが子に合う情報を取捨選択することも必要だと感じます。
息子は子どもの頃から、自動車や機械が大好きで、高校から専修学校に進むことも、整備士になることも自分で決めました。合う環境で仕事ができていて、仕事でミスをして先輩に指摘されても『ちょうど知りたかったから教えてもらえてラッキー!』だと思うそう(笑)。やはり息子の好きを否定しなかったことが、今につながっているのかもしれません」(かなしろにゃんこ。さん)
【特集】本音で語る、発達凸凹(でこぼこ)な子どもとの暮らし
イラストレーション/かなしろにゃんこ。 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2023年LEE3月号(2/7発売)「本音で語る、発達凸凹(でこぼこ)な子どもとの暮らし」に掲載の記事です。
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