“発達に凸凹がある”とはどういう状態を指すのでしょうか? 凸凹がある子どもの傾向、障害との違いなどを、専門家に詳しくレクチャーしてもらいます。
教えてくれたのは
横須賀市療育相談センター・小児精神科医
広瀬宏之さん
発達障害の支援を専門とし、横須賀市療育相談センターにて数多くの親子の相談、支援を行う。『「ウチの子、発達障害かも?」と思ったら最初に読む本』(永岡書店)など著書、共著も多数。
「発達凸凹」と「発達障害」とは?
グレーゾーン:はっきりと発達障害と診断されなくても困っていれば支援が必要な状態
発達の凸凹があり、本人が困っていて支援が必要なら障害に
子どもの発達には個人差があるものの「できること・できないことの偏りが大きい場合に『発達に凸凹がある』と表現される」と広瀬さんは言います。
「発達の凸凹が大きいと発達障害なのではなく、凸凹があり、それにより環境とのミスマッチが起きることを発達障害ととらえる考え方が広まっています。誰にでも凸凹はあり、それを個性だと認めるケースも増えていますが、障害と認められる凸凹というのは、人と話せない、コミュニケーションが取れないなど、社会生活を送るうえでの苦手がある場合。さらに、本人がその凸凹によって困っているならば、支援が必要になります。
また、子どもにこのような凸凹があると、一般的な育児書に書いてあるような子育てをしてもうまくいかないことが多いんです。例えば、偏食が多い子に、栄養バランスが大事だからと無理に食べさせると吐いてしまったり、成長して拒食症などの二次障害を引き起こしたりする恐れも。
その子の凸凹に合わせた対処法やライフスタイルは、知っておくと育児がしやすくなります。そういう意味では、私は気になることがあれば、早めに専門家の意見を聞くのはいいことだと思います。わが子の凸凹が将来、発達障害につながるかどうかは専門家でもはっきりとはわかりませんが、判断の助けになるのでは」(広瀬宏之さん)
発達の凸凹にはASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)など大きく分けて4つの傾向が(下記参照)。
「発達障害の診断では、その子の凸凹を一緒に考え、苦手なことを列挙してどこに当てはまるかを判断しますが、他の病気のように原因に対応した診断名が出せるわけではない。分類しているという表現が最も近く、あいまいな部分も多いんです。
発達凸凹がある子どもの大部分は、いろいろな傾向をあわせ持っていてその配分が人によって違うだけで、私はよく“ミックスジュースのような状態”だとお伝えしています。実はASDの子どもは、ADHDの特性を持っていることも多い。まずは、この生きづらさの正体について本人も周りも知ること、理解することで、今後の対策も考えやすくなると思います」(広瀬宏之さん)
ASD(自閉スペクトラム症)
- コミュニケーションが苦手
- こだわりが強い
- 感覚過敏
会話やコミュニケーションが苦手で、社会性の発達に偏りがあるASD(自閉スペクトラム症)。興味の偏り、強いこだわり、味覚や聴覚の感覚過敏などの特性も。もともと「言葉の発達が遅くマイペースな自閉症」「こだわりが強かったり人間関係に難しさがあるアスペルガー症候群」「社会性に難しさがあり同じ行動を好む広汎性発達障害」の3つだったものがまとまり、自閉スペクトラム症に。一見凸凹が見えにくいこともあり、ひそかに生きづらさを抱える人も。
ADHD(注意欠如・多動症)
- 落ち着きがない
- じっと座っていられない
- ブレーキがきかない
- 忘れ物が多い
- 整理整頓できない
- 優先順位をつけて物事を進められない
特性は注意不足、落ち着きのなさ、衝動的な行動をコントロールできないなど。大きく3つに分かれ、例えば混んだ遊具などで並べば遊べるという報酬が得られるのに、我慢がきかず割り込んでしまうような「報酬系の障害」、片付けられない、忘れ物が多いなど段取りが苦手な「実行機能の障害」、優先順位をつけて物事を進められない「時間処理の障害」の3種類が。さまざまな要素がありますが、授業中に机に座っていられないのはわかりやすい傾向です。
DCD(発達性協調運動症)
- 体の使い方が不器用
- 異なる動作を同時にするのが苦手
- 動きがぎこちない
DCD(発達性協調運動症)は、体の使い方がぎこちなく、異なる動作を同時に行うのが苦手で、生活にいろいろな支障がある状態。中枢神経系の障害であり、単なる不器用とは異なります。保育園でお遊戯をしても周りの子に比べて動きがスムーズでなかったり、運動会や体育の授業で走ることが遅かったり、字を書くことがゆっくりで苦手なケースも。親が気づかないうちに子ども自身が深く悩んでいることもあり、適切なサポートが望まれます。
SLD(限局性学習症)
- 読み、書き、計算などが苦手
知的能力は標準かそれ以上であるものの、読み・書き・計算するなどの学校での勉強に必要な能力の一部に不具合があること。少し前までLD(学習障害)と呼ばれていました。ポイントは、学習すべてではなく一部に問題があることで、たとえるならパソコン全体ではなくソフトやアプリケーションに不備がある状態。計算が苦手なら電卓、書くことが苦手ならタブレットを活用するなど、学習全体への意欲が失われないような適切なサポートで子どもはラクに。
凸凹がある子の親は、ママ友の後方支援が助かるはず
友達やご近所さんなど、当事者ではない周りの人たちが気をつけることはありますか?
「騒がしい、あいさつができない、親の言うことを聞かないといった子どもには理由があるので、『しつけが悪い』『親の愛情が足りない』といった言葉がけ、考えはしないでほしいですね。『かわいそう』という言葉も、凸凹がある子どもを持つ親御さんは抵抗があるとよく言っています。あとは、軽い気持ちでアドバイスをしないこと。中には、小学校に行けないと話すと『叩き起こして連れていきなさいよ』などと、事情も知らず思いつきで言う人も……。
子どもの発達凸凹について打ち明けられたら、ぜひ話を聞いて受け止めてあげてください。特にママ友という関係性であれば、話し手も少しグチをこぼしたくなったとか、ただ聞いてほしいという気持ちが強いと思います。あとは、療育に行っている間にきょうだいを預かる、療育で帰りが遅いなら差し入れをしてみるなど、後方支援がとてもありがたい。『何か力になれることがあったら言ってね』と一声かけてもらうだけでうれしいはずです」(広瀬宏之さん)
「お兄ちゃんが療育に行く間、○○ちゃん(妹)うちに遊びに来る? 預かるよ」など、ママ友だからこそできるサポートや声かけをぜひ。
まとめ
- 発達の凸凹とは、できること・できないことの偏りが大きいこと
- 凸凹と環境とのミスマッチが起こると発達障害に
- 凸凹がある子の育児は、育児書どおりにいかない。適切な対処法を
- 凸凹にはいくつもの傾向が。ミックスジュースのような状態
- 凸凹がある子を持つ親の話をまず聞くことと、後方支援を
【特集】本音で語る、発達凸凹(でこぼこ)な子どもとの暮らし
イラストレーション/二階堂ちはる 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
こちらは2023年LEE3月号(2/7発売)「本音で語る、発達凸凹(でこぼこ)な子どもとの暮らし」に掲載の記事です。
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