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円安・インフレで私たちのお金どうなるの?

インフレ・デフレとは?なぜ起こる?日本は物価が横ばい、諸外国に比べ特殊な状況

2022.08.22

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最近、円安に加えてニュースでよく耳にする言葉、「インフレ」。
確かに、物やサービスの値段が上がっているのは感じるけれど、実際、どういう状況なの?インフレとデフレの違いは?
今後の生活への影響も含めて、お金のプロにお話をうかがいました!

世界の歴史は「インフレ(経済発展)の歴史」
ゆるやかなインフレ(物価の上昇よりも賃金の上昇が大きい状態)は望ましいこと

教えてくれたのは・・・
インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん

インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん

1999年にFPの資格を取得後、2000年に独立。投資信託クリニック代表。完全オンラインで個別アドバイスを行うほか、講演などを通じて長期・積立・国際分散投資のメリットを広めている。著書に『積立て投資術』(明日香出版社)など。
Twitter:@4649kang

物価も賃金も両方上がるインフレは経済発展の証

ここ数カ月のさまざまな値上げで、思わずため息が出たり頭を悩ませたりしている人も多いと思います。

「物やサービスの値段が上がっていく『インフレ』は、私たちにとっては困るような気がしますが、そのマインドを変えるいいタイミングかも」とカンさん。

「インフレが起きることは、一般的には経済発展をしている証なんです。
みんながワクワクする気持ちを刺激してくれる物やサービスがあれば、お金を出しても手に入れたいですよね。商品が高い値段で売れれば、企業は従業員の賃金をアップできる。上がった賃金でみんながさらによいものを買える、という好循環が生まれます。
物価の上昇よりも、賃金の上昇が大きいインフレは『よいインフレ』と言えます」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)

日本はここ30年ほど物価が上がらない「デフレ」の状態でしたが、「むしろその状態のほうが特殊だったと考えましょう」とカンさん。経済発展とともにインフレが起きるとしても、私たちが気をつけたい点も。

「物やサービスの値段が上がると、以前は500円で買えたものが550円を出さないと買えなくなってしまうため、現在手元にある現金の価値が下がることには要注意です」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)

インフレとは物・サービスの値段が「上がり続ける」こと(その分、現金の価値は「下がる」)

インフレとは物・サービスの値段が「上がり続ける」こと

【インフレ】はなぜ起こるの?

1.[私たち] みんなが持っている好奇心、ワクワク感
2.[企業] そのワクワク感を満たす素敵な商品を提供
3.[私たち] 喜んで買う!
4.[企業] 値上げしても商品が売れる! 働く人の給料を上げられる!
5.[私たち] みんながお金を持っているので、より高い、素敵な商品が買える
・・・[4]に戻る

インフレとは、みんなの「欲しい」気持ちやワクワク感に対して、それらを満たしてくれる商品が生まれ、高く売れることで従業員の賃金も上がっていく状態のこと。

「消費者としては、物やサービスの値段が上がると大変だと感じますが、その値上げが巡り巡って私たちの賃金上昇につながることで、みんながハッピーでよい循環が生まれます。ただし、値段が上がっていく状況下では、手元の現金の価値が下がる点には注意です」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)



デフレとは物・サービスの値段が「下がり続ける」こと(その分、現金の価値は「上がる」)

デフレとは物・サービスの値段が「下がり続ける」こと

1.[私たち] みんなが持っている好奇心、ワクワク感
2.[企業] そのワクワク感を満たすいい商品を提供できない
3.[私たち] 欲しくない・・・
4.[企業] 値下げして売るしかない。その分、働く人の給料を下げる
5.[私たち] みんながお金を持っていないので、安い商品しか買えない
・・・[4]に戻る

デフレとは、みんなの「欲しい」気持ちやワクワク感を満たしてくれるような商品が生まれず、物やサービスの値段が下がり、賃金も下がっていくこと。

「値段が下がることはよいことだと思うかもしれませんが、それに伴って賃金も下がってしまうため、みんなが物やサービスにお金を使えなくなるという悪循環に」

この悪い連鎖が、いわゆるデフレスパイラル。

「必ずしも『安い=うれしい』ではない、むしろ逆のこともあると認識しましょう」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)

世界の歴史は「インフレ(経済発展)の歴史」
ゆるやかなインフレ(物価の上昇よりも賃金の上昇が大きい状態)は望ましいこと

実はこの約30年、世界の物価と賃金が上がる中、日本はデフレでした!

この約30年、世界の物価と賃金が上がる中、日本はデフレ

1991~2020年の消費者物価指数の推移(※1991年を100とした場合)

1991~2020年の消費者物価指数の推移

出典:OECD Inflation(CPI) 1991年が100になるように編集部で再計算

日本は長らく物価が横ばいの状態ですが、他の先進国は30年間で物価が1.5~2倍ほどに。

「日本が『特殊な状況』にあることがよくわかりますね」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)

国の経済力の目安となる「ビッグマック指数」(2022年)

1位 スイス 804円
2位 ノルウェー 737円
3位 アメリカ 669円
4位 スウェーデン 667円
5位 ウルグアイ 625円
29位 ホンジュラス 417円
30位 カタール 411円
31位 クロアチア 406円
32位 ポーランド 396円
33位 日本 390円

出典:The Economist – Big Mac index 1ドル=115.23円で計算

経済力のひとつの目安と言われる各国の「ビッグマック」の値段は、スイスは800円超えの一方、 日本は400円弱で33位。

世界の平均年収の比較(2021年)

世界の平均年収の比較(2021年)

出典:OECD Average wages

平均年収も、他の先進国と比べると日本は低くなっています(イタリアやスペインなどは同じくらい)。

「例えばアメリカでは、1997年頃からアマゾン、グーグル、フェイスブックなどの新しいサービスがどんどん生まれましたが、日本では新しい産業が出ておらず、それもデフレが続いた一因でしょう」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)

今起きているインフレは〝よくない〟!?
物価上昇でも賃金は上がらない?スタグフレーションに注意

ここまで学んで来ましたが、「じゃあインフレってうれしいこと?」ともいかないのが悩ましいところ。

「物価は上がるのに賃金が上がらない『よくないインフレ』もあるんですね。
需要の高まりによってではなく、今のように戦争が起きたり、原油価格が上がったりと、『供給側の問題』が原因でインフレになると、物価は上がるのに、賃金が下がり、景気が後退ということになりやすい。
それが『スタグフレーション』というよくないインフレです」(インデックス投資アドバイザー カン・チュンドさん)

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取材・原文/西山美紀 イラストレーション/船越谷 香

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