2022年4月から、人工授精や体外受精など、不妊治療の保険適用が始まりました。不妊治療をしている人の多くが悩むと言われるのが、仕事との両立。これから治療を選択する人が身近でも増えるかもしれないからこそ、当事者以外も知っておきたい、不妊治療の実情を考えます。
お話を伺ったのは
タレント・女優 安田美沙子さん
“治療と仕事のスケジュール調整に悩んだこともありました”
1982年4月21日、京都府出身。バラエティ番組などで活躍。走ることがライフワークで、近著に『安田美沙子のRunから始まる笑顔な暮らし』(小学館)。
Instagram:yasuda_misako
Twitter:misako421
公式サイト:https://www.yasudamisako.com/
安田さんの不妊治療の流れ
20代前半 | ●子宮内膜症を治療 |
---|---|
2014年3月 | ●31歳で結婚 |
2015年4月 | ●妊活スタート 主治医でもある産婦人科で排卵誘発剤を。 その後、多嚢胞性卵巣症候群に マラソンで身についた精神力が、不妊治療中も支えに。 |
12月 | ●不妊専門クリニックを受診 |
2016年1月 | ●専門クリニックで、ひと通りの検査を行う |
2月 | ●卵管の詰まりがわかり、すぐに手術へ 手術をしても、癒着を完全に取り除けず。 タイミング法や人工授精では妊娠しづらいことが判明。 確率が高い体外受精を選択 卵管の癒着を取る手術を受けた直後。 |
5月 | ●1回目の体外受精を行うが妊娠せず |
8月 | ●2回目の体外受精を行う |
9月 | ●第1子の妊娠が判明
妊娠中も心配で、出産してやっと喜べた! |
2019年4月 | ●第2子妊娠のために、前回の体外受精で凍結していた受精卵を移植 1回目の体外受精で妊娠が判明 現在、5歳と2歳の男の子の育児に奮闘中 |
MISAKO YASUDA ︱ interview
不妊治療のことは、事務所のスタッフには伝えられず。
立ちっぱなしのロケで、体に負担がかかったかもと思うことも
麻酔なしでの採卵は激痛! 直後は貧血でフラフラに
’17年に第1子、’20年に第2子を出産した安田さん。どちらの妊娠も、不妊治療を行い、体外受精で授かったと言います。
「もともと、子宮内膜症で20代前半から婦人科に通院していました。妊活を始めたときもすぐに主治医に相談し、排卵誘発剤を使用。その後、たくさんの卵胞が卵巣内にとどまってしまう『多嚢胞性卵巣症候群』になり治療を。なかなかスムーズに進まなかったので、妊活を始めて約8カ月で不妊治療専門のクリニックを紹介してもらい、受診しました。
そこで不妊の基本的な検査をすべてしたのですが、卵管に液体を通して検査する『卵管造影検査』がものすごい激痛で! スムーズに通れば痛くないそうなのですが、卵管が詰まっていることがわかり、妊娠しづらい原因がわかりました」(安田美沙子さん)
子宮内膜症を患っていた影響で、おなかの中で炎症が起き、卵管や腸が癒着を起こしていたことが判明。癒着を取る手術をすすめられます。
「内膜症が不妊の原因になるとは聞いたことがあったけれど、その実状はわかっていなくて。こういうことなのかと初めて知りました。せっかちな性格もあり、手術することを即決。腹腔鏡手術を受けたのですが……予想以上に癒着がひどくて、卵管があまり通らなかったんですね。先生からは『このまま頑張ることもできるけれど、ステップアップしたほうが早いかもしれないですよ』と。ここでも、悩んでいる時間がもったいないと思い、すぐに体外受精にトライすることにしました」(安田美沙子さん)
体外受精が始まると、通院は平均して週2回になり慌ただしく。
「ホルモン注射を打つためだけに病院に行ったり、排卵のタイミングでチェックをしに行き『まだだから数日後に来て』なんてこともありました。体外受精の流れの中では、採卵がしんどくて、卵子の数が少ないと麻酔なしで採るんですね。画像を見ながら針のようなものを刺して1つずつ採取するのですが、これがまた激痛……! 人によって感じ方はそれぞれみたいですが、私は毎回刺さる感覚がわかってつらかった。
1回目の採卵の後に、たまたま友人たちと食事の予定を入れていたのですが、貧血ぎみで真っ青で、みんなに心配されました。また、2回目の採卵時は全身麻酔にしてもらったのですが、今度は麻酔の副作用で高熱や嘔吐があって。こんなに大変だとは思っていなくて、経験してみないとわからないものだなと痛感しました」(安田美沙子さん)
治療の影響で太ったりむくんだり映りが悪く、落ち込みました
その間もずっと仕事は続けていたという安田さん。当時は周囲のスタッフに、治療のことを伝えていなかったそう。
「男性が多く理解してもらえるか不安で。基本は午前中に病院に行ってから仕事に直行し、午後にどうしても通院したい日は『ここは予定があるから休みたい』と理由をはっきり言わずにお願いしていました。当時はバラエティ番組の仕事が多く、ロケで長時間立ちっぱなしで体に負担がかかることも。また、10年以上続けているランニングの仕事もあって、無理をするのは体によくないかなと思い、フルマラソンをハーフにしてもらったりと少しずつ調整をしました。
また、職業柄しんどかったのは、ホルモン注射などの影響で太ったり、むくんだりしてしまうこと。大事な撮影であまり映りがよくないと悲しいし、全力を出せていないようで悔しくて。でも、走っていたこともあり体脂肪率が低かったので、妊娠の可能性を高めるためには、少し太ったほうがいいのかなとも思ったり。妊活と仕事、どちらも頑張りたいけれど、逆行してしまう部分も多く、フラストレーションがたまりましたね」(安田美沙子さん)
期待すると、感情の起伏がつらいから心を無にして治療していました
体外受精は、1回目では妊娠が成立せず、2回目で妊娠が判明。1回目の結果がわかった後は、仕事中に気持ちをコントロールすることが難しかったと言います。
「1回目に受精卵を移植した後は、ずっと体に意識を向けていることもあって『体がポカポカしたから妊娠したかも』なんて期待をして。結果を聞いた後は落ち込んで『大丈夫、大丈夫』と自分に言い聞かせながら、テンションを上げて仕事をするのがつらかった……。その感情の起伏が負担になったので、途中からはできるだけ心を無にして治療にのぞみました。
寝起きでボーっとしたまま病院に行って治療を受け、お会計も何十万円とかかることがあるのですが淡々と支払って。当時は、そうしないと気持ちがもたなかったですね。2回目の体外受精で妊娠できたときも、心を無にしすぎて喜べなくて。先生に『できてますよ』と言われても『あ、はい。わかりました』と、すごく反応が悪かったと思います(笑)。
その後、妊娠中にも出血があったりと不安が多かったのですが、無事に第1子を出産。2年ほど空けて第2子を考えたときには、以前の凍結した受精卵を病院で残していたのでそれを解凍して移植。幸いなことに1回で妊娠が成立して、最小限の負担で済みました」(安田美沙子さん)
治療をしていることについて、まだまだ職場や周りに伝えることは難しいけれど「私が第1子を出産した約5年前よりは、少しずつ話しやすい雰囲気になっている気がします」と安田さん。
「それぞれの環境や状況によるので一概に言えませんが、不妊治療の経験がある人もない人も関係なく、経験者の治療の大変さを共有できるのはいいことかなと。『実は私も不妊治療していて』というケースも多いですよね。一方で、たまたま会話の中で『体外受精をした』と言ったら驚かれることも。みんなが同じぐらい不妊治療について知って、特別なことじゃなくなるといいなと思いますね」(安田美沙子さん)
安田美沙子さんの「仕事と両立、私の場合」
- フルマラソン→ハーフになど完全には休まず、仕事量を少しずつ調整した
- 仕事に感情を持ち込まないのは難しかったけど、できるだけ淡々と通院
詳しい内容は2022年LEE9月号(8/5発売)に掲載中です。
撮影/戸松 愛 ヘア&メイク/NANA スタイリスト/河野素子 取材・原文/野々山 幸(TAPE)
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