ついこの間まで、身を縮こまらせたくなるほど寒かったのに……。いつの間にか身を包む春らしい日差しと温かな風に、ついふわふわとした足取りになってしまうのは、私たち人間だけではないのでしょう。身の回りの生き物の仲間である、虫たちもチラホラその姿を現し始めました。
あんまり虫さんと仲良く暮らしたくない向きには、困っちゃう?
でも、実は私たち自身が虫たちを身の回りや住まいに誘き寄せてしまっている可能性があるんです。
「あの」甘い香りが誘ってしまう?!
バルコニーなどに洗濯物を干して、さて取り込もうというとき。みょうに「コバエ」が洗濯物に集ってしまっていたりすること、ありませんか?
子どもと公園に行く。なんだかすごく自分と子どもにばかり「蚊」や「蜂」が寄って来てしまう気がすること、ありませんか?
それ、もしかすると洗濯物から漂う甘い香りのせいかもしれません。
衣類の香りづけや静電気予防の目的で、洗濯のときに使う柔軟剤。ものによっては、とっても甘くフルーティーだったり、フローラルだったりするものですが、その甘い香りに引き寄せられて、招いてもいない虫が寄ってきてしまうことがあります。
洗濯物に蜂が付いてしまっているまま取り込んでしまうと、あわや刺されてしまうリスクも!
虫が苦手なら春先の外干しは避けるか、柔軟剤の香りの傾向を甘い香りではなく、ミントやラベンダーといった虫の嫌う香りのタイプに変更するのも、一つの方法です。
「あの」甘いお味が誘ってしまう?!
誰しも苦手な、あの黒くて平べったい住まいの害虫の代表格である「ゴキブリ」。
侵入予防のため、また間違っても家で殖やしてしまわないようにするため、生ゴミや湿った段ボールなどのいかにも「ゴキブリ」に好かれそうなゴミのこまめな処理に邁進しているご家庭も、きっと少なくないことでしょう。
けれども、このゴミにはもう一つ盲点がありました。
生ゴミのようには腐らない、缶、ビン、ペットボトルといったゴミがそれです。
特に、いかにも甘い清涼飲料水ではない「ビール」などのお酒の缶ゴミが、「ゴキブリ」の大好物であることは、あまり意識されていないかもしれません。
もともと熱帯・亜熱帯の森林に棲んでいた「ゴキブリ」は甘い果物の腐ったような匂いやエサを好む傾向があります。そして空き缶の底に残ったビールはまさにそんな匂いと味!
ゴミ収集日までの間、不用意な保管方法で置くことで「ゴキブリ」を広く住まいの周辺から呼び寄せてしまいかねません。
また、この残りビールは「ゴキブリ」以外にも、クモやナメクジといったいろいろな(不愉快な)虫を誘き寄せてしまう効果があります。できるだけ缶を捨てる前に、その中身を水道などで濯いでから捨てることをお勧めします。
「あの」甘い姿が誘ってしまう?!
だんだんと気温が高くなってくるに連れ、心持ち急かされるあの家事……「衣替え」。
そう、遠からずウールのコートや、ファーやダウン。いかにも冬物! という衣類から順にクリーニングに出して、仕舞って……。と、これからの段取りを立て出す頃合いではないでしょうか。
そんなふうに一生懸命収納した、せっかくの冬物衣類が虫に喰われてしまっては一大事ですよね。でも実は「衣類の虫喰い」の原因になる虫の一種である「ヒメカツオブシムシ」「ヒメマルカツオブシムシ」の成虫って、マーガレットなど、キク科の白い切り花が大好き。
春ですから、私たちのほうもウキウキと切り花などお部屋に飾りたくなりますが、そこにひっそり小さな甲虫(「ヒメカツオブシムシ」や「ヒメマルカツオブシムシ」)が紛れ込んでいたら、大ごとなんです。
いつの間にやらクローゼットや箪笥に入り込んでしまい産卵。そして夏じゅう、私たちの大切なシルクのブラウス、カシミアのニット、高級なものから先に(!)幼虫たちのおいしいエサになってしまいかねないのです。
絶対に虫喰いされたくない大切な衣類は、しっかりクリーニングして乾燥させたところで防虫剤と一緒に密閉して収納するようにしましょう。また、もし切り花を家に入れるようなときには、甲虫や小さな蛾(「イガ」「コイガ」という、これも衣類を食べる代表的な害虫の一種)がまとわりついていないか、しっかり確認するようにするのも大切です。
とはいえ一寸の虫にも五分の魂。無用な殺生を避けるためにも、虫の方から好かれないような暮らしのくふうを講じることも、ひとつ万物の霊長とまで言われる「生き物」としての矜持なのかも知れません。
LEE本誌や、LEEwebでも大活躍中の家事スペシャリスト、藤原千秋さん。早目に知っておくと安心な“おそうじ”の豆知識や実践テクを、季節先取りでお届けします。次回もお楽しみに!
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藤原千秋 Chiaki Fujiwara
住生活ジャーナリスト、ライター
掃除、暮らしまわりの記事を執筆。企業のアドバイザー、広告などにも携わる。3女の母。著監修書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など多数。LEEweb「暮らしのヒント」でも育児や趣味のコラムを公開。
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