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LIFE

高知は最先端の場所になる! 映画監督安藤桃子さんが「高知移住」「会社経営」「地域活動」を通じて得た気づき

  • LEE編集部

2021.12.30

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安藤桃子さん

引き続き、安藤桃子さんのインタビューをお届けします。2014年に高知へ移住した安藤さんのバッグの中には、いつも短パンとスポーツブラが入っています。移動中に15分あれば、海に飛び込んで3分間海に浮かんでリフレッシュしているそう。後半では、「魂のふるさと」だという高知で気づいたこと、コロナ禍での独自の経営論、安藤さんが考える理想の世界について話してくれました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む)

ここが最先端の場所になる。高知で導き出した答え

安藤さんが高知へ移住した6年後、新型コロナウイルスによって生活は大きく変わりました。マスクに消毒、外出控え、外食の自粛。閉ざされた生活を余儀なくされていた時、安藤さんはこんなことを考えていました。

「高知への移住を決めた時、一番強く感じたのは、これからの時代はここが最先端になるんじゃなかろうかということでした。理屈ではなく、感覚的にそう思った。コロナになった今、その答え合わせをしているような感じです。コロナは一つのきっかけでしかないと思っていて、今表に出てきた問題は、今までもあった問題に過ぎない。コロナをきっかけに世の中共通の課題として浮かび上がった。例えば映画だと、ミニシアターの運営が大変だとか、それでクラウドファンディングが大きく動き出したとか。コロナは、そんな転換期を迎えるきっかけだと感じました」

安藤桃子さん

問題をどう解決して進んでいくか、「答えは高知の生活、そして自分の中に隠されている」と言います。

「アスリートのインタビューに共感することがたくさんあるんです。アスリートは肉体と精神面から今自分がどういうコンディションか、日々チェックして生活されています。私も何が自分にとって心地いいか、心が動く瞬間はどこか、心の機微を敏感に汲み取れているかを大切にしています。そうしていれば、大きな決断の時にパッと動くことができます。

安藤桃子さん

アスリートにとってはオリンピックや大会だと思うんですけど、私たちにとっては、今何を食べたいか、水を飲みたいから飲む、日光を浴びたいからカーテンを開けるといった、何気ないことです。自分が感じたことを言葉にする、行動を起こしてみることで感じる嬉しさは、良い成功体験として刻まれます。コロナでどこにも行けない、何もできない、人とつながれない。止まったような時間の中で、外にあると思っていた答えが、実は自分の中にあるものだと気がつきました。コロナはそれを丁寧に教えてくれる環境だと捉えようと」

すべては必然。自然の中にある普遍的な世界から学ぶ

安藤さんの人生で、「もしかしたら」「別の道を選んだら」という選択肢はありません。両親ともに芸能の仕事をしていたため、自分の感性で動かすやり方しか見ていないため、起こったことはすべてが必然。すべてを全肯定して受け止めます。

また奥田家の旅行では、いつも旅先に仕事仲間や友人がいて、観光を目的とした家族旅行はしたことが無かったと言います。運ばれるがまま身を委ね、呼ばれた場所へ行く。そこに宝があるという発想です。高知へは、映画『0.5ミリ』のロケ地として訪れたのがきっかけでした。

安藤桃子さん

「高知に来てから、自然に触れる機会が多くなりました。畑をするようになり、植物を育てたりガーデニングをしている人も多いです。小さな自然の世界にも普遍的なものがあり、それは私たちとつながっています。自分と他人を分断して考えると、悪いのは全部自分だと思ってしまうのですが、つながっていると考えれば、私が感じている辛さはみんなの辛さで、喜びはみんなの喜びでもある。これからの時代、そんな絶対的な答えである『愛』を感じられる日常になっていくんじゃないかと思います」

逃げ腰だったPTA活動、やってみることで変化も

現在、小学1年生の娘さんを育てる安藤さん。卒園した幼稚園では、PTA会長を務め、卒園後も1年継続してPTA会長を務めています。始める前は、「ママ友もPTAも無理!」と逃げ腰だったそうですが、やってみることで変化もあったそうです。

「娘が年長になったタイミングで、ただ居てくれればいいので安藤さんに会長をお願いしてもいいですか? と園長先生から電話をもらいました。でも、やるなら適当にはできないし、どうせやるなら映画監督としてでしかできない。だから、超ハッピーな役員会というドラマを描こうと思いました。ちょうど、子どもの未来のためのプロジェクトをやっていたこともあり、その心臓部分になるPTAは避けて通れない。これがあなたの中心だ、今の社会を知るために必要だと言われたような気もしました。おかげで地元の人とのつながりも増えました」

安藤桃子さん

コロナ禍になる少し前、日本経済新聞で安藤さんの連載がスタートしました。ビジネス関連の情報を中心とする経済紙での連載に驚いたそうですが、時代が変わってきているのを実感した瞬間でもあったそうです。

「ずっと劣等生だった私が、PTA会長や学校のアドバイザーをしていると聞いた母が、ついにそんな時代が来たか! 逆転チャンスだ!  時代が転換したんだね! と笑いながら言ってくれました。リーマンショックの時に、豊かさは経済成長と比例しないことを世の中は知りました。コロナになり、それを一層感じ、人生って何だっけ?  経済って何だろう? と考えるようになったからこそ、私が日本経済新聞でエッセイを書くことになったんだと思います」



三度の残高ゼロから逆転。自然界の摂理から学ぶ経営論

その少し前、安藤さんが経営する高知の会社で、ある事件が起きました。通帳の残高が3000円になり、スタッフに給料が払えないかもしれないという危機的状況だったのです。

「実は、これまで残高がゼロに近くなったことが何回かあります。『カケラ』を撮った後と、ミニシアター(『キネマM』)を作った時、そして今回も。コロナで講演会などのイベントが一切なくなり、収入が激減しました。そうなると新しくやり直すしかない。キャンバスは白い、なんでもできる! と自由になれるんです。仕事がないなら書けばいい、自分の身一つでできることをしようと、家のことや自分のことだけを意識しました。同時にコロナになって初めて、過去を振り返る作業を自然に行いました。今まで前進しかなかった私が、一旦足を止めて、昔のことを深くさかのぼりました。大もと、根本を見つめる時期に来たんだと思います」

安藤桃子さん

経営が厳しい時、人件費を削減するのが普通ですが、安藤さんの考えはその逆です。今いるスタッフの給料を上げ、新たに新卒のスタッフを雇いました。スタッフは会社に必要不可欠なエネルギーであり、それを増やすことが新しい視野と風を呼び込むと判断したからです。

「今まで稼いできたものが無くなるからこそ、新しい視野と風が必要になります。社会的なビジネスの理屈とは違うかもしれませんが、自然界の摂理を見たら、繁栄のためにはそうするのが普通です。給料を上げて、新しいスタッフを入れて間も無く、ポン、ポン、と仕事が決まったんです。生き方講座や成功法、ビジネス哲学ではない、自然界の摂理にこそ学ぶことがあるんだと実感しました」

10億円を元手に、理想の世界を作りたい

日本経済新聞での連載を一冊にまとめた本『ぜんぶ 愛。』が、先月出版されました。幼少期のこと、家族のこと、映画のこと、高知のこと。コロナ禍で振り返った安藤さんの人生は、章ごとに1本の映画のような濃密さで、愛とユーモアが凝縮されています。

安藤桃子さん

現在ミニシアター『キネマM』はリニューアル中ですが、子どもたちが笑顔の未来を描く異業種チーム「わっしょい!」を2018年に立ち上げるなど、意欲的に活動を続けています。今後の目標を聞くと、壮大な構想を教えてくれました。

「やりたいことはいっぱいあるんです。例えば10億円を元手に3兆円くらいの渦を描いて、理想の世界を作り上げたい! とか。まずは映画を撮って、さらには街の中に映画館と映画文化の仕組みを作り、循環を生み出します。文化を心に置き換えるとすれば、心を中心とする社会は調和の社会で、そこに泣いている子はおらず、人間も生きものも全ての命が幸せです。そんな優しい世界になってほしいと思います。人の心が動けば、人同士がもっとつながっていく。それが私の大切にしている子育てやPTA、『わっしょい!』の活動の源です。

安藤桃子さん

10億って、夢のような話じゃないと思うんです。人の力って10億以上だし、映画もそうやって作られていきますから。お金は愛で感謝だと思うし、愛が広がっていくイメージです。ぜんぶ愛なんです。高知って、とってもいい意味でそれほど大きくないんです。ここで成功したひな型は、他でもできる。私の想像が広がった瞬間、みんなの想像も同じように広がる。全ての命に優しい未来。そんな世界の具現化へ向けて進みたいです」。

安藤桃子さんに聞きました

身体のウェルネスのためにしていること

体の声を聞く

「“○○が体に良い”からといって、頭でそれを習慣化しないよう意識しています。「今日はどんな感じ?今の気分は?」と、自分自身に聞いて、食事を摂ったり、心身が喜ぶことを選択するよう心掛けています」

心のウェルネスのためにしていること

朝晩のメディテーション(瞑想)

「アイディアはリラックスした時に「ふと」ひらめくのだと思います。スタートと終わりには肩の力を抜いて、安心感とあたたかな生命そのものの状態に立ち返るようにしています」

安藤桃子さん

安藤桃子さん


撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

おしゃれも暮らしも自分らしく!

LEE編集部 LEE Editors

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