今週も産婦人科医の宋美玄さんのポッドキャスト連載「宋美玄さんの聴く婦人科診察室」の時間がやってきました！「2021年1月の出生数が激減！」というニューストピックスについて、宋さんが深掘りします。お仕事や家事の合間にぜひお聴きください。

日本の出生数が5年連続減少、過去最少に

2021年1月の出生数が前年比14.6％減の6万3742人、という衝撃的なニュースが飛び込んできました。さらに2021年6月4日に厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2020年の出生数は前年より2万4407人減って、84万832人だったそう。1899年の統計開始以来、過去最少です。1人の女性が一生に産む子どものである合計特殊出生率は1.34で前年より0.02ポイント下回り、5年連続で低下とのことです。

つまり2020年4月以降に授かり、5月以降に妊娠届が提出された数が激減しているということ。2020年4月といえば、第1回の緊急事態宣言発令のタイミング。テレワークに踏み切る職場が増え、夫婦一緒に過ごす時間が増えた家庭も多かったのではないでしょうか。このような状況から、男性を中心に「こんなに家にいたら、10カ月後には赤ちゃんが増えちゃうんじゃないの？」という予想がされていました。

1回目の緊急事態宣言が出生数激減に影響？

しかし一方で、2020年2月の終わり頃から学校が一斉休校になり、家庭は大混乱していた時期でもありました。不安をと負担を覚える育児の当事者の方が多かったのではないでしょうか。二児の母でもある宋さんも「一斉休校については今でも許していないし、恨んでいる。あのときは本当に振り回されて大変だった」と当時を振り返ります。

LEEが緊急事態宣言発令後に実施した読者アンケートの「夫と過ごす時間が増えましたが、それを楽しめていますか？」という質問に対し、「楽しめていない」という回答が52％という結果に。宋さんも患者さんから「夫婦二人ともテレワークなのに、なぜか暗黙の了解で私だけが毎回昼食を作っているんですよね。ほんとストレス溜まります……」といった話を度々聞いたそう。

コロナの影響でDV増加、不妊治療控える動きも

ステイホーム期間が長くなるにつれて、DV相談件数も増加。一つ屋根の下に夫がいてDV相談ダイヤル等にSOSの電話をかけることは困難な状況だったこともあり、チャットでの相談件数がこれまでにないほど増えたといいます。

コロナウィルス感染防止の観点から2020年前半は不妊治療を控える方が増えたことも出生数減少の一因。「ただ、2020年秋頃以降は不妊治療を再開する方が増え、病院は再び激混み、赤ちゃんも増えてきたので、今後の出生数は少しずつ盛り返すんじゃないかと予想しています。やはり1回目の緊急事態宣言が、今回の出生数激減に影響しているのではないでしょうか」と宋さん。

「経済的な理由」で出産に踏み切れない

LEEweb編集長の畑江は、今回のニュースを耳にした瞬間に「1.57ショック」を思い出したそう。「1.57ショック」とは、1989年の人口動態統計において、合計特殊出生率が過去最低の1.57に低下した事態のこと。とはいえ1989年の出生数は124万6800人。かたや2021年1月発表の出生数は84万832人……。

2021年現在、30代後半〜40代後半である団塊ジュニア世代の出生数が減っていることも影響しているのではないか、と宋さんは分析します。第2次ベビーブームの頃に生まれたものの、就職氷河期のあおりをモロに受けた団塊ジュニア世代にとって結婚や出産は、上の世代に比べ経済的なハードルが非常に高くなってしまい、第3次ベビーブームは幻となってしまいました。

宋さんが評議員を務める公益財団法人「1 more Baby 応援団」では毎年「2人目の壁」の実態を調査しています。2人目の出産に踏み切れない理由のダントツ1位は「経済的な理由」とのこと。雇用の安定や男性育休の定着が、結果的に日本の出世数の回復に繋がるのではないでしょうか。

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イラスト／鹿又きょうこ