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CULTURE NAVI「BOOKS」

【書評】ノーベル文学賞も受賞しているカズオ・イシグロの最新作『クララとお日さま』、他3編

2021.05.27

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『クララとお日さま』
【著】カズオ・イシグロ 【訳】土屋政雄 ¥2750/早川書房

AIから見た人間の「心」を描く長編。人らしく生きるとは?

『クララとお日さま』【著】カズオ・イシグロ 【訳】土屋政雄 ¥2750/早川書房
ドラマや映画化もされた長編『わたしを離さないで』をはじめ、数々のベストセラー作品を書き、ノーベル文学賞も受賞している作家の、最新作。

主人公はなんと、クララという人工知能を持つロボットだ。ロボットの専門店で売りに出されているクララの夢は、自分たちよりも素晴らしい“人間”に買われて、彼らが生きている世界を、一緒に体験すること。そしてある日クララは、ジョジーという病弱な少女に見初められ、彼女の遊び相手として人間の家庭に入ることに。

ロボットの中でもずば抜けた学習能力と観察眼を持つクララは、その人工知能を駆使してジョジーを支えていく。ところが病弱なジョジーの背後には、彼女の母親が抱えている心の傷と、子どもに対するゆがんだ感情が横たわっていた。そしてジョジーの唯一の親友・リックと彼の母親もまた、複雑な環境に置かれていることをクララは知ってしまう。過去と感情に囚われ、そのことによって周りの誰かを振り回したり、憎んだり、時には相手を支配しようとする大人たち。その様子は、クララが想像もしていなかった、もうひとつの人間の姿だった――。

本当の知性とは? そして「心」とは何を指すのか? 
ロボットのクララの目を通じて登場人物たちの姿を追っていくと、読み手は「人らしく生きるとは一体どういうことだろうか」という問いかけをされているような気分に。そんな真剣な場面や強いメッセージ性がありつつも、ジョジーやリックなど、成長していく少女&少年たちの伸びやかさに感動を覚える部分もたくさん。加えてクララの繊細かつ優しい言動に、やすらぎを覚えるシーンも多いはず。

シリアスだとイメージされがちな筆者の小説の中では、ストーリー展開やキャラクターの書き分けが明確で、読みやすい本作。カズオ・イシグロ作品の入門の一冊としてもおすすめ。そしてラストまで読み切ったときに、ロボットであるクララの真の魅力と、タイトルの“お日さま”の持つ意味が、じわじわと心に響いてくること間違いなし!

『ないようである、かもしれない
発酵ラブな精神科医の妄言』

星野概念 ¥1870/ミシマ社

『ないようである、かもしれない発酵ラブな精神科医の妄言』星野概念 ¥1870/ミシマ社
精神科医であり音楽や執筆活動も行う著者の連載が単行本化。
はっきりと簡潔にわかることがよしとされがちな昨今。人間関係や日常生活などに潜む「ないようである」かもしれない曖昧で見逃してしまいそうな小さなことを思うことで、そのものへの理解がより深まることもあると教えてくれる一冊。

『コットリコトコ』
おくやまゆか ¥1180/小学館

『コットリコトコ』おくやまゆか ¥1180/小学館
とある街に住む、4人家族の町野家。中でも5歳児のコトコの毎日は発見でいっぱい。彼女自身の小さなこだわり、親や友達、近所の人との交流など、小さい子から見た世界の、ほっこりするエピソードが凝縮されたショートコメディ漫画。
また、コトコの母親・ユッコさんの子育て模様もほほえましい。少し懐かしい感じのする絵柄にも心癒されそう。



『ありえない!』
【著】エリック・カール 【訳】アーサー・ビナード ¥1760/偕成社

『ありえない!』【著】エリック・カール 【訳】アーサー・ビナード ¥1760/偕成社
『はらぺこあおむし』で有名な絵本作家の最新刊。
人間の生活の中で、動物が暮らす自然界の中で「そんなことあるの?」と思うような展開が次々と起こる――! 華やかなイラストとカール氏の斬新なアイデアに、親子で興奮できる一冊。
「ありえない!」の連続体験で柔軟な思考力を培って。


取材・原文/石井絵里


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