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上紙夏花

【田村淳さんインタビュー】母を見送って思うこと「母ちゃんともっとハグしときゃよかったな……」【母ちゃんのフラフープ】

  • 上紙夏花

2021.05.31

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タブー視される〝死〟について考えてほしい

前回の記事で、『田村淳の大人の小学校』についてご紹介『田村淳の大人の小学校』についてご紹介しました。バラエティ番組以上にも活動の分野を広げている田村淳さん。5月31日にブックマン社より『母ちゃんのフラフープ』という本を出版されました。淳さんの幼少期から、上京、結婚……そして、お母様とのお別れの様子が綴られています。インタビューの様子をお届けします!淳さんの死との向き合い方は、生き方を正すような意味合いがあるようです。死をタブー視する日本で、訴えかけたいこととはどんなことなのでしょうか?

 

オンラインにてインタビュー!この直前も出版社の方と打ち合わせだったそうで、書店のみなさんから熱い応援があると聞いて、感激していた淳さんです。

 

―――まず、プロローグから涙が止まりませんでした。この本を読んだ人は淳さんのイメージが変わるんじゃないでしょうか。本の中では淳さんが方言で話していますよね。それが本当に新鮮で!

「いい本に仕上がったと思います!田村淳も〝人の子〟でしょ?(笑)  方言は、地元の(山口県)彦島のメンバーと話すと色濃く出るかな。母ちゃんが話すのは下関弁だったし、つられてしまう。標準語で書こうかとも思ったんだけど、この方が読む人に伝わるんじゃないかと思って」

 

―――本のお話を伺う前に、『田村淳の大人の小学校』をつくったきっかけを教えてください。

「元々はTwitterで人を集めて大人の運動会というイベントをやっていて。そのときに日常にはないようなコミュニティが出来上がったので、これがネットで作り上げるコミュニティか!と成功体験ができたんです。これがもっと日常的に毎日交流ができるようなコミュニティをネットで作りたいなと思ったのがきっかけです。

 

いまはどうしても実際に会って行うイベントは難しいけれど、僕が得意とするのは〝オンラインとオフラインのハイブリッドなコミュニティを作る〟ことなんです。いまはどうしてもオンラインに振り切らざるを得ないから、まだ消化不良。ここから大きく跳ねるために、参加者のみんなにしゃがんでもらってるような感じですね」

 

―――将来、たとえばお子さんが成人するころには、このオンラインサロンはどうなってると思いますか?

「実はすごく先のことまで考えていて。うちの娘が校長を引き継いでくれるのがいいなと思ってるけど、でも、押し売りするのもどうなの?とも思って。うちのオンラインサロンには実際、魅力的な人たちがたくさんいるので、将来的には僕の代わりに校長ができるような人をみんなで選んでやってもらうのもいいかなと。僕がこの世を去ったあとも、このオンラインサロンを残していきたいと思ってくれるような、そういうコミュニティ作りを目指してます」

 

いつかは訪れる「親との別れ」

インタビューの中でも本の内容からも、淳さんは、物事をすごく長い目で見て考えて行動していることがよくわかります。だからこそ、親との別れについても早くから考えていたのでしょう。それでも、本の帯に〝親が死ぬのはずっと先のことだと思っていた〟とあるように、お母様とのお別れは予想以上に早くやってきてしまったのです……。

 

淳さんのお母様は看護師経験があったからなのか、若くて元気なときからずっと、自分の誕生日になると決まって「延命治療はしないで」と家族に伝えていたそうです。それだけではなく、お通夜や告別式などの自分が亡くなったあとのことをすべて一人で決めて、段取りしてあったというから驚きです。私も自分が死んだあとに家族が困らないように、いろいろと準備しておきたいと、素直に思いました。遺書を残すことなんて、もっともっと先のことと思っていたので。みなさんはどうですか?

 

―――遺書動画サービス『ITAKOTO』を作ったきっかけは、ある番組のロケで青森のイタコの人に出会ったことだったんですよね?

「そうですね。イタコの人を信じる信じないということは別として、残された人がとても前向きになった姿を見ました。このこと記憶に残ってて。でも、それだけじゃないんです。自分の身の回りで起きたことが少しずつ影響しています。母ちゃんのがんが発覚して、娘が産まれて……いろんなことがリンクして、人は死ぬんだということを意識しました。自分が死ぬときに、娘に何か遺したいと思ったことから、ITAKOTOのようなことがやりたいと固まった感じなんです」

 

―――これまでにないサービスだし、無料版もあるから、利用者が多いのでは?

「……でもね、大学院でこのITAKOTOというサービスを軸に研究して修士論文を書いたんですけど、やっぱり〝遺書〟というものに対して、ハードルがめちゃめちゃ高いんですよ。遺書に対してのイメージが払拭できた人には、このサービスを使ってもらえるんじゃないかと。次はこのネガティブなイメージを取り払う研究をしていきたいと思ってます」

 

―――死に対してのネガティブイメージは日本人特有のことですか?
「そうですね。日本人の国民性として、死に対して家族に話す機会が比較的少ないようです。死=怖いというイメージがあって。イェール大学の教授の『Death』という本には〝死は怖くない〟と書かれています。いままでの得た知識だけだと、どうしても死は怖い方向にいっちゃうんだけど。実は死ぬ本人はそれほど怖くはないんです。お別れが辛いとかそういうのはあると思うけれど。怖いものではないというイメージが定着しないと、この遺書動画サービスはなかなか広まらないかな?と感じます」

 

遺書履歴に生き方が現れる

―――ご自身はお子さん宛てには、もう遺書動画を撮ってるんですか?

「もう何度も撮っていて、今のパパはこう思っています。また遺書を書きます。という終わり方にしていて、その履歴ごと残しているんです。そのときに思ったことを言ってるから日記にも近いような……。だけど、死ぬ覚悟で言ってるんで。そこが日記とは違う。もしかしたらそのメッセージが最後かもしれないと決意をして話すと違いますよね。

 

本の最後に修士論文の抜粋を載せているのですが、僕が今回研究したのは、動画を撮る側の心情が大きく変わるということ。
残された人のために撮っていたつもりでも、自分はこういう生き方をしたいんだよなとか、自分自身が死ぬ前にやらなければいけないことはこれだと明確にわかるようになるんですよ。

 

しかも、アップデートされた最新の遺書だけ見るよりも、遺書履歴ごと残すという方が、その人の考えの移り変わりとか、考えに一貫性があるとか、より遺された人はわかる。多くの人にそういうことに気づいてほしいんです」

 

―――娘さんが生まれる前と後とで、お母様に対する気持ちの変化はありましたか?

「(娘が生まれて)母ちゃんは、ようやく淳の反抗期が終わったって言っていましたね。母ちゃんから見て、僕が明らかに母ちゃんへの接し方が変わったということだと思う。それは母ちゃんのがんがわかったっていうのもあるんだけど。娘が生まれたことで、大きな変化があったんだと思います。これまでは、自分はこうしたい!とやってきたけれど、周りの人が嫌な思いをしないように、自分の思いを伝えるにはどうしたらいいかな?と考えるようになりましたね」

 



「もうちょっとハグとかしとけばよかったな……」

―――お母様に対して反抗しているという自覚はあったんですか?

「反抗というか、いちばん甘えられる存在なので。母ちゃんが東京に遊びに来ても、喧嘩してました。おにぎりを作るのに、塩をうま味調味料を間違ったとかそんなことで、大人になって親子喧嘩でこんなに罵声が飛び交うものかというくらい(笑)。お互い引かずにどんどん言いたいことを言うので。似てるんですよね。性格は母ちゃん譲りです。」

 

―――本のプロローグに、お母様を抱きしめるシーンがありましたが、大人になってからそういう機会はほかにもありましたか?

「ないですね。ほんと、もうちょっとハグとかしとけばよかったなって思いますね。恥ずかしがらずに。結婚式のときに田村家みんなでハグみたいなのはあったけど、1対1でハグはなかったので。死んじゃったらできないから。火葬場に行ったときに、ああ、もうハグできないんだなって強く思ったんですよね。だからもっとみんな、精神と肉体があるうちに、ハグしておいてほしいなと。このハグしたときの感覚というのは動画にはのこせないですから」

 

―――LEE世代の人にいちばん伝えたいことは?

「改めて〝家族っていつか終わりが来るんだ〟ということを認識してもらいたいですね。でも、終わりが来ることをネガティブにとらえないでほしい。母ちゃんががんになったことは残念だったけれど、がんがわかってからの家族とのコミュニケーションは宝になっているんですよね。(病気など)何もなくても、その宝に早く気がついてほしい。この本を読むことが、当たり前にある家族のなかに、かけがえのない日常があるということを深く考えるきっかけになればいいなと思っています」

 

この本を読んで、親との別れというものから目を背けている自分に気がつきました。筆者は母と二人家族で過ごした時期が長く、ときには姉妹のような関係でとても結びつきが強いと感じています。離れて暮らす母は、いまはとても健康で元気に仕事に出かけていますが、いつかは訪れる別れの時、母はどうしてほしいのか、自分はどうしたいのか……。しっかりと話し合うべきだと思いました。生まれてくるときにも、ひとそれぞれのストーリーがありますが、人生を締めくくるときのストーリーの方がもしかすると自分の理想を描ける可能性が高いのかもしれないとも感じました。さっそく、母と一緒に『ITAKOTO』の遺書動画を試してみようと思います。

 

田村淳さんのオンラインサロンって実際どうだった?

前回の記事でも書きましたが、筆者はオンラインサロン『田村淳の大人の小学校』の4期生で入学しました。次の5期生募集はまだ開始されていませんが、淳さんのTwitterなどで告知されると思いますので、興味がある人はチェックしてみてくださいね。ここで少し、個人的な感想をお伝えしたいと思います。お世辞抜きで、「毎日、大人の小学校のアプリを覗くのが楽しい!」です。田村淳校長と森本英樹教頭(ニブンノゴ!/ロンドンブーツ3号)が中心となって、児童たち(会員のことをこう呼んでいます)がいろいろなことを企画しています。さまざまな分野で活躍している、スペシャルゲスト講師の講義のほか、海外に住む児童がオンライン修学旅行をしてくれたりととてもバラエティに富んでいて充実しています。

 

ほかにも、参加型で校歌や校章を考えたり、校旗を作るためにコットンから栽培したり!コットンの栽培はそれぞれみんなが自宅などで種を植えるところからスタートしました。ほかの人の観察日記を見るのも楽しいし、わからないことを投稿すると、植物の栽培に詳しい人がすぐにアドバイスをくれたりして。同じ場所にいるわけではないのに、〝コットンを育てる〟ということを通して大勢の人と一体となれるということに正直驚きました。会ったこともない人たちとですよ!これってすごいことだと思います。オンラインサロンが世の中にもっと浸透すると、これも普通が普通の感覚になる日も近いかもしれませんね。

 

本来社会はそうあるべきですが、サロン内では誰にでも発言権が平等にあります。ホームルームと呼ばれる、オンライン交流でも淳校長がどんどんいろんな人を当てて、話す機会を与えてくれるんです。人数が多くても、チャット機能を使えるから不公平感が少ないんです。これがもしもリアルな場だと、ハードルが高すぎると思いませんか? 想像してみてください。何百人という人たちがほとんど初対面という状態で、みんなの注目を浴びながら淳さんに話しかけるなんて……。これはオンラインだからできることなんだなと感じます。オンライン上で一度でも話しておくと、きっとリアルで会ったときに打ち解けるのが早いんじゃないかなとも思ったり。リアルな場で実際にサロンメンバーに会えることをとても楽しみにしています!

 

 

『母ちゃんのフラフープ』田村淳(著)・ブックマン社(5月31日発売)

 

上紙夏花 Natsuka Uegami

ライター/ビューティープランナー

1977年、大阪府生まれ。吉本新喜劇の女優を経て、ライターに。現在は化粧品の商品開発やPRを手掛けるほか、ベビーマッサージ講師としても活動している。夫・息子9歳、3歳

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