家事をとことん減らして本当にやりたいことをしよう!
前回までの3回にわたり、「4つのE」(※)は「子育ての基本セオリー」というお話をしてきました。今回は、ちょっと角度を変えて、家事をラクにするために、「4つのE」を使ってみましょう。家事をラクにするということは、子育てや自分のやりたいことに費やす時間が増えるということです。ですから、どんどん家事の負担を減らすための工夫を取り入れていきましょう!
(※)「4つのE」とは、① expectation (期待する)② education (教育する)③ encouragement (励ます)④ evaluation (評価する)
Q:10歳の息子と6歳の娘がいる共働きの家族です。シンシアさんの「子どもと一緒に過ごす時間を増やそう」というアドバイスを実行しようとしているのですが、なかなか時間を捻出することができません。家事は夫婦である程度分担していますが、やはり私の方が多く負担しています。家事負担を軽くして、もっと子どもとの時間をつくりたいのですが・・・(38歳 女性)
「家族だから言わなくてもわかるはず」というのは間違い
A:家事分担の問題は悩ましいですね。旦那さんにもっと手伝ってもらいたいと思っても、家族の中だけで解決できる問題ではないかもしれません。それでも、話し合うことは大切です。
そこでまず、私がおすすめしたいのが、月1回の家族会議です。親も子も一緒に同じテーブルについて、話し合うんです。大げさに構えることはありません。学校や会社のこと、今、何に興味があるのか、など。まずは些細なことでいいんです。
子どもや夫に聞いてみる。そして、自分の思っていることも伝える。雑談みたいな感じです。日々、忙しい時間を過ごしていると、そんな会話さえ、ままならないのではないでしょうか。そうした会話の中で、あなたが抱える日々のモヤモヤの解決のヒントが見えてくると思います。
家族だから、言わなくてもわかるはずというのは、間違いだと思います。家族といえど、きちんと場を設けて話し合うことが大切です。
そして、悩んでいる家事分担のことを切り出してみるのです。そのときにも「4つのE」が役立ちます。
まず、「4つのE」を復習しておきましょう。
① Expectation (期待する)② Education (教育する)③ Encouragement(励ます)④Evaluation (評価する)です。
これを家事分担に当てはめて考えてみると、家族それぞれの、①家事に期待すること(ニーズ)を把握する ②その家事の内容を明確にしてそのやり方を共有する(=教える) ③やってもらった家事への感謝の気持ちを伝える ④家事がうまく回っているかの定期的な確認 ということになるでしょうか。
目的は、あなたの家事時間とストレスを減らすことですから、そこに焦点を絞ってまず、①〜③の「3つのE」を話し合ってみましょう。
家族が望んでいないかもしれない、そのごはん
ますは、①です。家事への「期待」とは何でしょうか? 料理を例に考えてみましょう。料理は、毎日のこと。朝食に夕食、おまけにお弁当まで。料理を任された人は、美味しくヘルシーなものをとか、家族一緒にとか、なるべく節約しようとか、いろんなことを考えながら手間ひまかけて作りますね。
でも、考えてみてください。家族の「ごはんの期待値」ってどこにあるんでしょうか? 私のケースをお話ししましょう。私は、これくらいはやらなくちゃと思って、1ヶ月間は同じ料理を出さないように献立を考え、一品一品の作り方も常にアップデートしてすごい料理を作っていたんです。でも、これだけやっているのに、夫から感謝されていないのがとても不満だったんですね。
ところが、ある日、娘に言われたんです。「それって、パパに頼まれて作っているわけじゃなくて、ママが作りたくて作ってるんでしょ。パパは毎日カレー食べさせても文句は言わないよ」と。正直、ショックでした。そうか、そんなものなのかと。でも、なるほどね、とも思いました。以来、私は料理に対する考え方を変えました。
あなたが、手間暇かけて作ったそのごはん、例えば手作りコロッケに餃子、グラタン……。家族はそこまで期待していますか? お互いの、ごはんの「期待値」を話し合ってみてください。
その他の家事についても、それぞれ望むところは違うでしょう。あなたは、洗い物はお皿の裏まできっちり汚れを残さないで欲しいとか、洗濯物はきちんと畳んで欲しいと思っているかもしれません。でも、それもひょっとしたら、やりすぎているのかもしれない。
期待値を確認するのは、やりすぎの歯止めをかけるためです。そして、ざっくりと共有できる期待値を設定したら、その後は、担当者に任せましょう。あれれ?と思っても、口を出さないほうがいいですね。慣れてくれば、どんな家事でも徐々に上達していくのだから、焦らずに。
「名もなき家事」を書き出す
次に② の家事の具体的な内容です。実態を知るところから始めましょう。それを明確にしないと、実行に移すための「教育」=Educationをすることもできません。
家事とは、掃除、洗濯、料理、買い物、その他数々の手続きなどですが、ざっくりと分けたその中にも、数え切れないほどの細かいタスクがあります。
私が専業主婦をしていた頃に、その日1日こなした家事を時間を追って細かく書き出してみたことがあります。新聞の結束や公共料金の振り込みなど、細かいものまで書き上げていくと、なんと50を下らない項目が並びました。それほど、家事はマルチタスクなのですね。
時間はかかるかもしれないけれど、家族でテーブルを囲み(問題を共有するためにも、あなたが一人でやるよりも、家族全員参加のほうがベターだと思います)、家族共用のノートを作って(家事タスク専用のアプリも登場していますよ!)、1日、1週間、1ヶ月単位で家事(育児も含め)の項目を洗い出してみましょう。
朝起きてから寝るまでに行うタスクは、朝食作り、洗濯機を回す、干す、ゴミ出し、子どもに服を着せる……。1週間単位では、買い物、振込、掃除……。最近は、「名もなき家事」という言葉もありますが、こうして細かく書き出していくと、家事がはっきりと「見える化」できます。もし、あなたがワンオペで苦労しているとしたら、どれほどの負荷があなた一人にかかっていたか、夫も理解してくれるかもしれませんね。
その次は、一つひとつの家事の担当を割り振ります。そして、具体的にするべきことや基本的なやり方を確認します。
完璧にできなくても「ありがとう」の言葉を
3つ目のE、すなわち、③家事の成果に対する感謝は、いつも「ありがとう」と言葉に出して伝えることです。家事分担が習慣化して、当たり前のことになっていっても、「ありがとう」の一言は効きます。励みになります。
最後の4つ目のE=④家事がうまく回せているかの定期的な確認は、折にふれて必要だと思います。子どもは成長しますし、親の仕事や環境も変化します。どこかスムーズじゃないなと思ったら、また家族会議を開けばいいのです。家族それぞれの状況や気持ちを確認しながら進めていってみてくださいね。
さて、この連載も今回が最終回になりました。これまでご愛読ありがとうございました。初回でもお伝えしたように、子育ては期間限定。人生でも限られたこの輝かしい時間が楽しく、満足いくものになるように、ここでお伝えしたアイデアを取り入れながら過ごしていってくださいね。もっと詳しくお知りになりたい方には、私の子育て法について紹介したこちらの本もぜひご参考に。
またどこかでお会いできるのを楽しみにしています。
構成/鵜養葉子
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薄井シンシア Cynthia Usui
17年間の専業主婦生活の後、「給食のおばちゃん」からラグジュアリーホテル勤務を経て、現在は大手外資系企業で働きながら、講演活動や出版活動も行う。著書に『ハーバード、イエール、プリンストン大学に合格した娘は、どう育てられたかママ・シンシアの自力のつく子育て術33』(KADOKAWA)、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)がある。
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