LIFE

CULTURE NAVI「今月の人」

加藤シゲアキさん「時間をかけた旅エッセイ。その熱量を感じてもらいたいです」

2020.04.17

この記事をクリップする

NEWSのメンバーとして精力的な活動を行う一方で、これまで何作もの小説を執筆し、世に送り出している加藤さん。アイドルであり作家でもある彼が、このたび発表したのはエッセイ。“旅”をテーマに、その土地で感じたこと、旅から戻り、心を巡った思いなどが綴られた一冊に。

加藤シゲアキさん
「時間をかけた旅エッセイ。その熱量を感じてもらいたいです」

「始まりはアメリカと国交が回復したキューバへの旅について、雑誌に寄稿したことでした。そこから連載のお話をいただき、3カ月に1度、4年かけて書きました」

小説は自宅で腰を据えて書くのが加藤さんのスタイル。エッセイの場合も同じく家で執筆を?

「そうですね。それでもエッセイを書いていて感じたのは、テーマ選びの難しさ。思いつけば、勢いで仕上げてしまえるんですけれども、“旅”というテーマをいろんな角度から捉えて書き分けるのは、小説とは違う大変さがありました。一冊の本にまとめる際は、気になる部分をさらに書き直して……。特に冒頭の部分は推敲を重ねたので、その熱量は、実際の旅をしたとき以上になっていると思います」

父方の故郷である岡山から、友人の旅に便乗して訪れたパリまで、エッセイには国内外を問わずさまざまな場所が登場。また、大の料理好きでもある加藤さん。スリランカでは、エッセイの中のエピソード以外にも、こんな新たな体験をして刺激を受けたそう!

「現地で食べたカレーがあまりにもおいしくて。料理好きの間では、一度足を踏み入れたら抜け出せない“沼”といわれる、カレー作りに、ついに手を出してしまいました(笑)。ガイドさんからレシピを学び、帰国してからは、せっせと作るように。コツは、スリランカ独自のカレー用スパイス、トゥナパハを使うことなんです。そこに自分流の味つけを研究して。今やお店で食べるよりおいしいかも!と自画自賛状態です(笑)」

なにごとにも「ハマったら凝るタイプ」と言う加藤さん。料理から発展し、器にもこだわりが。
「有名なものを持っていたいというよりは、自分の好きなデザインがあれば買い揃え、割れた食器は捨てずに、金継ぎという接着方法でつなぎ直してもらって使い続けてますね。愛着がこもった器を収めておくために、部屋にはちゃんと食器棚も置いてありますよ」

忙しい日々の中でも、生活を楽しんでいる加藤さん。何か“時短”のコツなどがあるのかと思って聞いてみると、「僕は時短よりも“無理をしない”ことに、重きをおいています」という答えが。

「忙しいときは食事もデリバリーでOKなんです。ただしTVを観たりラジオを聴きながら、1時間以上かけて料理を作る時間も大切にしています。と言いつつ、ただ単に一人で楽しむ趣味が多いだけかもしれないですけれども(笑)」

メリハリある生き方は、エッセイの行間からも伝わってきます。

「LEE世代の方だったら、それこそ寝る前に読んでいただいてもいいですし、通勤の合間の気分転換にも。日々のルーティーンの中で、僕が見てきた景色や、感じたことを読んでいただくことによって、読んだ方の繰り返す毎日が、また違う輝きを放ってくれるようになれたら……なんて。おこがましいですが。書き手としてはそうなればうれしいと思っています」

Profile

かとう・しげあき●’87年広島県生まれ。’03年NEWSのメンバーでデビュー。’12年『ピンクとグレー』で小説家デビュー。同作は映画化も。以来、次々と小説を発表中。NEWSの活動は(グループ名をモチーフにしたプロジェクト最終章となる)アルバム『STORY』が絶賛発売中。

BOOKS
『できることならスティードで』

文芸誌『小説トリッパー』で4年にわたって書かれた旅エッセイを一冊にまとめたもの。特にTrip0の「キューバの黎明」は、加藤さんいわく「単行本の最初らしいギラギラ感を出すために、時間をかけて何度も丁寧に書き直した」のだとか! 自身の祖父、父親についてなど、家族について綴られた章もあり、加藤さんの温かい人柄も伝わってくる。表題作を含む、書き下ろしの短編小説も収録。¥1300/朝日新聞出版


取材・文/石井絵里

この記事へのコメント( 0 )

※ コメントにはメンバー登録が必要です。

LEE公式SNSをフォローする

閉じる

閉じる