23歳で芥川賞を受賞したLEE世代の小説家、青山七恵さんの新刊『私の家』。ありきたりな家族の話だから読み手の心に届くものがある!
2019.12.25
登場人物の人生に思いを馳せたくなる、シブい家族小説
『私の家』青山七恵 ¥1750/集英社
かつて同じ家で時間を過ごしていた人たちが、家族に対して今も同じ気持ちを抱いているとは限らない。今作は、そんな当たり前だけれども忘れがちなことを丁寧に描いた連作短編集。作者の青山七恵さんは1983年生まれ。23歳で芥川賞を受賞したLEE世代の小説家だ。
物語に登場するのは日本のどこにでもいそうな人たちだ。恋人との別れを機に突然実家へ戻ってきた、娘の梓あずさ。仕事も辞めて東京の家を引き払ってきたのだという。そんな彼女へ「ここに住むなら、自分のことは自分でやってよね!」というような、少々荒っぽい言葉をかけながら日々、家事に勤しむ母親の祥子。娘の帰省を少し喜びつつも、家事は妻任せな父親の滋彦。この3人を中心に、結婚して娘も産んでいる梓の姉や、店を営みながら暮らしている祥子の叔母など、彼女たちの親族の日々も淡々と描かれていく。
梓、祥子、滋彦は同じ家に住んでいるけれども、その日常はさまざま。元・体育教師で自他ともに「パワフルで、よくも悪くも雑」と思われている母親の祥子が、結んでいく人間関係と、心の中に押し込めた幼少期の記憶は「人って見かけからは分からないものを秘めている生き物なんだな!」と、小さな驚きを読み手に与えてくれる。そんな彼女と30年以上連れ添う滋彦も、マイペースそうでいて小さな秘密を持っていたりもして――。
家族って、子どもを中心に回っている頃は「みんな一緒」と思いがちだけれども、年月を経ていけばそれぞれの人生を、静かに助け合いながら生きていくものなのだと思わせてくれるこの一冊。物語後半、一族が集った祖母の法事の場で起こる出来事は、本当に小さくて、どこの家族でも一つや二つはあるのかもしれない。でもその“小さなエピソード”をきめ細かに描いているのが、この小説の魅力。
LEE読者ぐらいの年齢ともなると、誰もが一度は、自分が育った家・作っている家庭についてちょっぴり考えたくなるもの。そんなときに不思議な安らぎと優しさを与えてくれる大人の家族小説だ。
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取材・原文/石井絵里
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