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理想の家庭像や夫婦像に縛られていませんか? 上昇志向で息切れしそうな日常に、幸せのポイントを考えさせてくれる1冊を

2019.05.03

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自分たちなりの幸せを作り出す夫婦にワークライフバランスを学ぶ

『趣味で腹いっぱい』山崎ナオコーラ ¥1550/河出書房新社

共働き世帯が急増し、夫も妻も、家庭と職場の両方でそれなりの役割を果たすのが当然となりつつある時代。そんな今どきの「あるべき夫婦像」や「理想の家庭像」をいい意味で裏切ってくれるのが、山崎ナオコーラさんの新刊『趣味で腹いっぱい』。

主人公の小太郎&鞠子という夫婦の幸せのあり方はとてもユニークだ。「働かざるもの、食うべからず」がモットーの家庭で育った小太郎は、高校卒業後、銀行に就職。社内で昇進する機会が限られている身に不満がないわけではないが、安定したサラリーマン生活に満足していた。そんな小太郎が29歳で出会ったのが、2つ年下の鞠子だ。彼女は大学院を卒業後、基本的にはアルバイト生活を続けており、一度も会社勤めをしたことがないという。「将来の生き方を決めずに、毎日をわくわく過ごす」のがポリシーの鞠子と小太郎は結婚する。結婚後、世帯収入を上げよう、今は共働きで頑張るのが普通なのではと提案する小太郎に、鞠子はどこ吹く風。絵手紙、俳句、畑仕事に小説と、趣味を極める生活に入る。しかも、そのどれに対しても「プロにはならない」のがモットー。そんな鞠子の生き方に触発された小太郎は、自分でも小説を書いてみたところ、なんとこの作品が新人賞を受賞し、小太郎は銀行員兼プロ小説家としてデビュー。まさかの趣味が仕事になり、悩む小太郎。そんな彼を、鞠子はありのまま受け入れるのだ。

その気になればSNSやネットで趣味をビジネス化させるのも可能な世の中で、今よりも上を求めない、趣味は趣味のままで楽しむ鞠子の生き方は「焦らずに、自分らしくいればいい」と、どこかホッとさせてくれる。自立を目指して生きてきた小太郎が、鞠子の上手な「他立」の仕方を見て、「~せねば」という焦りから解放されていく過程も心地よい。一組の夫婦が時間をかけて、オリジナルの幸せな関係を作っていく姿を読むうちに、自分の家庭なりのワークライフバランスや、幸せのポイントについてあらためて考えさせてくれそう!

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取材・原文/石井絵里

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