常につきまとう悩みにもかかわらず、人に相談しにくいし、病院を受診するにも勇気がいる"下半身"のトラブル。
10年、20年後も元気でキレイでいるために、下半身のケア、始めましょう!
この記事は2017年11月7日発売LEE12月号の再掲載です。
出産女性の3人に1人が尿トラブルを抱えている!?
ふとした拍子にもれてしまったり、急激な尿意に襲われたり……生活のうえで不便をきたす尿のお悩み。「ひょっとしてわたしだけ・・・?」と不安に感じている人も多いのでは?
実は、決して珍しいことではなく、出産を経験した女性の3人に1人は、何らかの尿トラブルを抱えているといわれます。
思わず同意! 読者の尿トラブル体験談
くしゃみをしたときや大きな荷物を持ったりしたときもちょこちょこ尿もれをする私。
それと同じ感じでおなかに力が入るのか、子どもと一緒に縄跳びをしていたときにジュワッ!
そのほか、子どもを追いかけて走るときにも、パンツぬらしてます…。
(ハロ・35歳・主婦)
一緒に公衆トイレに入ったとき、子どもが私のぬれたパンツを発見!「お母さーん、ぬれてるよ~」と大きな声で…。
「あ、そんなとこ、触らない、触らない!」
トイレの床がぬれているふうに装い、なんとか周囲の目をごまかしました。
(とっこさんのママ・40歳・会社員)
数年ぶりに第3子を出産。それまでは普通だったのにやたらとトイレが近くなってしまいました。
仕事しても家事をしても尿意が頭をよぎる…。この状態がいつまで続くのか…本当にうっとうしいです。
(よんちゃん・38歳・販売員)
「尿もれ」に悩む人が増えている! 尿もれのタイプとは?
不便なことが多く、「これさえなければ!」と思わずにはいられない、尿トラブル。
「その中でもLEE世代に多いのは尿失禁、いわゆる尿もれです」と教えてくださったのは、医学博士、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長の奥井識仁先生。
「尿もれは大きく分けて『腹圧性尿失禁』『切迫性尿失禁』の2タイプがあります。これらの尿もれは、いずれも出産時に赤ちゃんが産道を通って出てくる際に、その頭によって骨盤底筋を傷つけてしまうことが原因です」
「傷つき方によって『腹圧性尿失禁』か、『切迫性尿失禁』かに症状が分かれます。筋肉は自分で再生する性質を持っていますが、損傷が重いと自分で治すことはできず、適切な手術と必要最低限の投薬で治すことになります」
種類1 腹圧性尿失禁
せきをしたときや重いものを持ち上げたときなど、おなかに力が入ると尿がもれてしまう症状。
妊娠中におなかの赤ちゃんで膀胱が圧迫されたり、出産時に赤ちゃんの頭で尿道の筋肉を傷つけてしまい尿道を締めることができなくなることで起こります。
出産後しばらくしたら改善する人が多いものの、出産後ではなくもっと年齢が上がってから発症したり、出産経験がなくても加齢によって発症する人も。
治療法
症状が軽い場合は骨盤底筋を鍛えるのが第一。
重症の場合は、これに加えてErYAGレーザーでの治療が効果的。ErYAGレーザーは細かい血管を再生させることができ、骨盤底にメッシュを入れる治療法よりQOLを維持しやすい。
種類2 切迫性尿失禁
急に我慢できないほどの尿意を感じたり、頻繁にトイレに行かずにはいられないのが特徴。腹圧性尿失禁と同様に、出産が要因の場合が多い。
出産時に骨盤底筋の中の膀胱周辺の筋肉を傷つけ、それによって膀胱が下に落ちてしまい、膀胱内の尿を感知するセンサーが過敏になりすぎていると、さらに症状が強い。
50代の更年期以降になると、膀胱がむくんで切迫性尿失禁になるケースも。
治療法
症状が軽い場合は骨盤底筋のトレーニングが効果的。
重い場合は、過活動膀胱の薬や、副作用の少ない漢方薬という選択肢も。閉経後の女性の場合は、ホルモン補修療法やErYAGレーザーによる治療という方法も。
尿もれを防ぐには骨盤底筋を鍛えよう!
「LEE世代ではそこまで重症の人は多くないでしょうから、骨盤底筋を鍛え直すことで、症状を緩和させることができるはずです。程度の軽い人はもちろん、これから出産を控えている人の場合は、今のうちから骨盤底筋を鍛えておくと損傷が少なくて済むので、ぜひ鍛えましょう。
また、肥満は骨盤底筋に過剰な負担をかけるので、体重管理には気をつけて」(奥井先生)
【 骨盤底筋のイメージ 】
『腹圧性尿失禁』と『切迫性尿失禁』。どちらの尿もれも、キーポイントは骨盤底筋。ダメージを多少受けていても残りの筋肉を鍛えることで症状を軽くすることができます。
鍛える方法は、体の外側の筋肉である大殿筋や腹直筋、内側の筋肉である骨盤底筋(斜線部分)を一度に鍛えられるスクワットがおすすめ。場所をとらず、器具も必要ありません。
肩幅よりやや広めに両足を開き、ひざを曲げ伸ばし。
15回×2セットを目安に。深く曲げるほど効果が高いが、つま先よりもひざが前に出ると効果がないので、要注意。
注意!尿もれで やってはいけないこと!
もれそうなときに尿の出口を足で押さえない |
不意に強い尿意がやってきたとき、しゃがみ込んでかかとを押し当て、尿道の出口を圧迫するのは、できるだけ避けて。膀胱の内圧が上がり、内側の細胞にダメージを与えてしまう恐れが。
とはいえ、どうしようもない場合はあるので、あまり強く押しつけすぎないようにして。
もれたときに生理用ナプキンで代用するのはダメ |
通常、尿もれの量は経血よりも多い場合が多く、性質も違うため、生理用ナプキンだと吸収しきれない恐れも。
表面に水分が逆戻りしてしまって、雑菌が繁殖してかぶれたり、水虫のような症状が出る場合もあるので×。尿もれ専用のパッドを使うべし。
もれるおしっこの量を減らそうとして水分制限をする必要なし |
もれる尿の量は、骨盤底筋の切れ方と神経のダメージ具合が関係。水分摂取量はトイレの回数には関係あっても、尿の量とは関係ないので、尿もれを警戒して無理な水分制限はしないで。
健康に生活するには1日1200~1500㎖の水分は必要なので、それ以下にならないように注意!
「行っとこ排尿」の人はエスカレートしないように気をつけて!
家を出る前、電車に乗る前など「とりあえず行っておこう」と、トイレに行かずにはいられない・・・これは、ストレスで交感神経が優位になっているため尿意を感じ、それがクセになっている心因性の頻尿です。
腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁のような器質的な病気ではないので、自己判断で頻尿の薬を飲んだりするのは避けて。
「エスカレートすると生活がしづらくなるので、自分が心因性頻尿だと自覚し、意識しすぎないように気をつけましょう」(奥井先生)
将来の骨盤臓器脱の予防にも、今から骨盤底筋ケアを!
「年齢を重ねていくと、自然な加齢現象として骨盤底筋や性器周辺の血流は悪くなっていきます。そうなると、出産経験の有無にかかわらず尿もれはしやすくなるので、今からしっかり骨盤底筋を鍛えておくことが重要です」と奥井先生。
「骨盤底筋が弱くなっていると、将来的には子宮や膀胱、直腸などが骨盤の下から飛び出してしまう『骨盤臓器脱』になるリスクが高まります。尿もれや頻尿の程度も重くなり、異物感があって非常に不快で、生活に支障をきたすようになります。
今現在、骨盤臓器脱の手術は、骨盤底筋の代わりに人工のメッシュを入れる方法が一般的。ですが、メッシュは痛みや違和感があったり、体の中で腐食してしまう場合もあり、海外では問題視されています。
手術を考えている人は、信頼できる主治医を見つけ、コミュニケーションをしっかりとって、最善な手術や投薬などの方法を選択してほしいと思います」
撮影/フルフォード 海 イラストレーション/藤井昌子 取材・原文/遊佐信子
この記事は2017年11月7日発売LEE12月号『人には言えない下半身の3大悩み「痔」「尿もれ」「膣のケア」』の再掲載です。
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