LIFE

今だから振り返られる私の子育て

先輩ママインタビュー/後藤由紀子さん「『3歳までの子供のかわいさがお母さんの貯金になる』 は本当でした」

  • LEE編集部

2017.07.16

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生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて母になった日。
永遠に続くように感じた子育ての毎日。
そんな日々を歩いてきた先輩ママたちが振り返ります。

今だから言えること、今だから見えてきたこと。アンケートで募った、読者のお悩みにも答えていただきました。
子育て渦中のママにも、いつかこんな日がきっとくる!あなたの心に響いた部分を、ぜひ、子育ての参考にしてください。

撮影/木下 優(ロッセット) ヘア&メイク/諏訪部留美 取材・原文/石川敦子
この記事は2017年5月7日発売LEE6月号の再掲載です。


Interview 03 雑貨店「hal」オーナー 後藤由紀子さん

PROFILE
ごとう・ゆきこ●2003年、静岡県にて生活雑貨や書籍を扱う「hal」オープン。
その暮らし方、物選びのセンス、ファッションが共感を集める。
近著に『毎日のことだから。7分目くらいがちょうどいい』『狭くても、料理が楽しい 台所のつくり方』『毎日続くお母さん仕事』『後藤由紀子の家族のお弁当帖』。最新刊は『ほどほど収納が心地いい』。最新刊は「家族が居心地のいい暮らし」。

ライフ&ワークヒストリー

  • 1968年 静岡県沼津市に生まれる
  • 18歳 メーカーに就職し、上京。アフターファイブで服飾の専門学校に通う
  • 21歳 会社を退職し、雑貨店に勤める
  • 24歳 沼津市にUターン、地元のカフェなどで働く
  • 26歳 結婚
  • 28歳 第1子の男の子を出産
  • 30歳 第₂子の女の子を出産
  • 34歳 沼津市に雑貨店「hal」をオープン
  • 現在 「hal」は15年目を迎える
  • 息子20歳 娘18歳

ふたりの子供の世話に明け暮れた“鎖国時代”

若い頃から“お母さん”になりたかったという後藤さん。娘が生まれたら、名前はさくら。高校生の頃からそんなことも考えていました。ひとり暮らしを始めたときも、いつか子供を産むときに備えて、きちんと自炊で体を整えることを心がけていたほど。そして念願のお母さんになれた
のは、28歳のときでした。

「そのとき義理の母に『子供は3歳までのかわいさがお母さんの貯金になるから、できればしばらくは育児に専念すると、後でいいわよ』と言われたんです。確かに、24時間一緒にいられるのも3歳まで。子供が中学生に上がる頃までは、家にいよう。40歳になったら食堂を開きたい。そのためには学校の期間が短くすむほうがいいので、2人目は2学年くらいあけて……と考えました」

初めての子育てですが、1年目は余裕があったそう。

「やることなすこと楽しくてしかたなかったです。息子が寝ていると『暇だな』って、わざわざ起こして遊んだりしてました。

ところが、予定どおり2人目を妊娠して娘が生まれたのが、息子が1歳8カ月のとき。それからはもう、ほとんど双子状態。こっちが泣いてあっちも泣いて私も泣く、みたいな。出かける場所も両方の実家と姉の家と、地元の友達と、児童館。半径何キロの世界で暮らしていたあの頃を“鎖国時代”と呼んでるんですけど(笑)」

てんてこまいの毎日の中で、お気に入りのカップでお茶を飲むのが唯一の楽しみでした。そのひとつが、20歳の頃にお金を貯めて買った、小野哲平さんの湯飲み。ところが息子さんが2歳の頃……。

「サッシに、ボールみたいに投げつけて割ってしまったんです。すごく思い入れのある湯飲みだったんですよ。その瞬間は、はあーーって腰が砕ける感じでした。でもそのとき、物を割った分は叱らなくちゃいけない、でも思い出の分を怒ってはダメだと思ったんです。『粉々になっちゃったね。こんなことしたらダメだね』と、冷静に話ができました」

 

自分と娘の病気をきっかけに、雑貨店スタートを決意

3月生まれの息子さんを、周りの子と比べて焦ったことも。

「いろんなことが全部遅いんです。トイレトレーニングにも悩みました。ほかのお子さんたちは2歳くらいでおむつが取れているのに、息子は年中までできなかった。ところがあるとき、桐島かれんさんのインタビューでこんな一文を読んだんです。『うちの子は5歳過ぎまでおむつをしてた。でも大人になってもおむつをしている人はいない、のんびりかまえてれば大丈夫』と。すごく救われました。たくさん心配した分、逆にお遊戯会などで息子がみんなと同じことをやっているのを見るだけで、ボロボロ涙が出てきましたね」

32歳のとき、後藤さんは髄膜炎を患います。1週間分の食材を冷蔵庫におさめたとたん、激しい頭痛が。診察を受けた病院で即入院に。「いったん帰って、ごはんの仕込みをしてきていいですか?」と聞いて怒られます。生死にかかわる事態でした。

「そのとき『明日がくるとは限らない』と思ったんです。40歳で食堂を開こうと思っていたけど、40歳まで生きているかわからない。少し予定を早めよう、と」

そして34歳、娘さんが肺炎を患ったときのこと。

「添い寝しながら考えました。『店を開いてもこういうとき、この子を置いてはいけない。そうしたらお肉や野菜が腐ってしまう。あ、でもお茶碗だったら傷まない』。そのたった2~3時間の間に、計画が食堂から雑貨屋に変わりました。娘が寝てすぐ不動産屋さんに電話して『娘の具合がよくなったら見に行きます』。それがhalのスタートでした」

一番大事にしてきたことが息子に伝わっていた!

それからは、さらにてんてこまいの日々。子供を寝かしつけてから仕事をすることもしばしばでしたが、優先順位はあくまで家族、と決めていました。「子供の急な発熱により、臨時休業いたします」というラミネート板をあらかじめ大家さんに渡してあり、臨時休業することもありました。
中でも大事にし続けたのは、必ず家族4人でごはんを食べること。

「実家もみんなでごはんを食べる家だったし、私は18歳でその家を出ました。18歳なんてあっという間。4人で暮らしている間ぐらい一緒に食卓を囲みたい。それだけは鉄板で守りたかったので、子供の成長に合わせて3時閉店や、4時閉店にしていたことも」

そして2年前、大学生になった息子さんを、東京でのひとり暮らしに送り出しました。

「これからは共働きだから、男もひととおりの家事ができないと困る。『洗濯機の回し方もわからないんじゃ結婚できないよ』と。それからしばらくして息子が帰省していたときに、高校から帰った娘が食卓を見て『え、今日これしかないの?』と言ったんです。そうしたら息子が『こら、さくら。座ったらごはんが出てくると思ったら大間違いなんだぞ』と。そういうのがわかるようになったんだ、とうれしかったですね。

今は20歳で、自宅から大学に通っています。家事は一応できるようになったみたいですけど、戻ってきた理由が『ちゃんとしたごはんを食べたい』。それもうれしかったです。おなかいっぱいになれば何でもいい、じゃなくて、そういうの大事に思ってたんだ、と」

一度過ぎたら戻れない子育ては最高に贅沢な時間

「今、振り返ると義母が教えてくれた“かわいい貯金”って本当だったなと思います。

座る暇もないくらいバタバタしていた頃、台所で立って食べていたら、息子が小さな体で子供用の椅子を持ってきてくれたこと。私が泣いていたら、娘がわざわざお風呂からタオルを持ってきて、『お母さん』ってふいてくれたこと。

延々と子供と過ごした時間も……例えば子供がおもちゃを落として、私が拾って『はい、どうぞ』。このプレーを息子30セット、娘30セット、毎日繰り返しとか(笑)。今思うと、あの時間はすごい贅沢だったなと思います。そういうのも、もうないと思うと、いとおしいですね。

育児過程って戻れませんよね。有効期限がある。おむつでもごはんでもお着替えでも、ある日、ひとりでできるようになったら、もう終わり。ひらがなの“す”を左右逆向きに書いていたのが、一度書けるようになったら、もう一生書けてしまう。あのときの“できないかわいさ”には、もう戻れない。だから今を楽しんでほしい……って、今は言えるんですけどね。渦中のときは『そんなのすぐ終わっちゃうよ』と言われても、『いやいや、私は毎日これ延々とやってるんです』と思ってました(笑)」

いつになったら、そんなふうにゆとりを持って振り返ることができるようになるのでしょうか。

「私は、娘が高校に上がった頃からかな。中学はまだ部活の送迎とかありましたけど、高校に上がったらもう、親の出番がなくなってくる。やることはお金を出すくらい。そうしたらポンと時間があいて、ああ、外に出たい、と思ったんです。自分が作ったものじゃない、おいしいものも食べたい。あとは、お母さんを楽しもう。旅に出たり自分の時間も楽しもう、と」

そこで後藤さん、ひとりで軽やかに出かける旅を始めました……と言っても、その著書『お母さん、旅はじめました』を見ると、出かける前の、家族のためのごはんの作り置きがすごい! すごすぎます。

「今の時代、たくさん店もあるし、放っておいても別に困らないんでしょうけど。性分なんでしょうね。夜ごはんより、朝ごはんとお弁当のことが気になってしまう。それに、『これだけやったからお母さん行きます!』と、自分がせいせいと楽しめるんです(笑)」

著書には、成長した娘のさくらさんとのふたり旅も収録。

「息子とも、一緒にコンサートやフェスに行ってます。娘がひとり立ちする数年後には、夫婦旅行も行けるといいな。習い事もしたいんです。着付け、ペン習字、栄養学。今、自分にインプットしたい!という欲求が、ふつふつとわいてきています」

本音で読者のお悩みQ&A

 

Under 12
自我がぐんぐん育ち始める小学校高学年。きょうだい関係にも手こずる時期

 「子供が失敗すると、母としての自分の失敗のように感じてしまいます。これから受験の年齢を迎えるので、自分のメンタルの保ち方が知りたい」(まっかーとにーさん・43歳・東京都・アルバイト)

 失敗は悪いことではないと思います。人生そんなに順風満帆にはいかないから、若いうちに失敗してもいいんじゃないですか。浪人して希望の学校に行く人もたくさんいますし、一度も壁にぶつかったことがない人より、いろいろ学べる。いつか「あそこで転んでおいてよかった」と思うときがくると思います。うちはそれほど優秀でもないので、将来、近所で評判のいいお父さん、お母さんになってくれればいいかなと思ってます。子供が小さい頃から私の落としどころは「健康」。勉強ができなくても、親子ゲンカしても、「まあ健康だからよかったよね」で、たいていのことは大丈夫だったりします。

 

 「こちらは同じようにしているつもりなのですが、子供は『誰々ばっかりずるい!』などほかのきょうだいと比べては不満があるようです。皆さんはどのようにされていますか?」(みきさん・36歳・茨城県・パート)

 古くさい考え方かもしれませんが、娘に「女の子なんだから」というのはわりとよく言いました。「お兄ちゃんには言わないじゃん」と反発されましたけど、女の子は身の安全のこともあるし、男の子とまったく同じにはさせられないですね。

 

Under 18
やきもきの思春期を経て、自立に向けて子育てのラストスパート!

 「進路の選択について、親が率先して考え決めてよいのか、子供の考えを最大限に尊重するべきか、皆さんの考えを教えてほしいです」(はまなすさん・40歳・東京都・主婦)
 「子供に将来の目的を持ってもらいたいのですが、進学のアドバイスや、なぜ大学に行くのかなどを説明できません」(えつこさん・48歳・山口県・アルバイト)

 あんまりレールを敷くのは賛成じゃないし、過大な期待もしていません。私自身、そんな立派な人間じゃないので、「私に言われたくないでしょ」ぐらいの気持ちがベースにあります(笑)。中学の部活を決めるあたりから、「結局やるのはさくらだから、お友達と相談して決めなさい」と自分で決めるようにさせました。親としてできる応援はします。例えば受験の時期に風邪をひかない食生活をさせるとか、きれいなシーツでよく眠れるように洗濯をするとか、生活のベースを整えてあげること。受験に限らず、快適に日々を過ごせるように母がやることはたくさんあると思っています。
4年間、子供が京都に住んだら楽しいな、と思ったことはあります(笑)。娘にも「京都4年間どうよ」と言ってみましたが「大丈夫です」と断られました(笑)。もうちょっと自分の引き出しになるようなものを、小さい頃からやらせてあげればよかったのかな、と思うこともあります。例えば英語とか。でも「英語どうよ」と言ったことはありませんね。

 

 「成長するにつれて娘の恋愛関係が難しい」(ちゃまさん・46歳・石川県・主婦)
 「子供の交友関係や恋愛関係など、どのくらい親がかかわっていいのでしょうか」(kuro1818さん・40歳・東京都・主婦)

 以前は、子供が「夏祭り行ってくる」なんてとき気になって、「誰と行くの?」とか根ほり葉ほり聞いてました。そうしたら男友達から「『まだ彼女できないの?』って親に聞かれるのも嫌だし、彼女ができて喜ばれるのも嫌なもんだよ」と諭されて。今は改心して、「気をつけていってらっしゃい」 と言うだけにしています(笑)。

 

 「慣れない子育てに疲れて早く成長してほしいと思っていましたが、気づけば長女と一緒に暮らせる期間もあと4年。高校を卒業したら家を出るだろうと思うと、今から寂しくてたまりません。子供の成長を喜ぶより、寂しく感じる感情ってありましたか?」(よしよしさん・45歳・京都府・主婦)

 息子が東京でひとり暮らしを始めるときは「毎日泣くんじゃない?」と友達に言われました。でも私は「もうやりきった」感があって、全然寂しくなかったです。 仕事で都内に出る機会もけっこうあったので、ときどき「おいしいフレンチ連れてってあげるよ」とか呼び出すと、ほいほい出てきました(笑)。

 

 「家族がいつも温かな雰囲気でいられるために、後藤さんはどのような心がけをしていましたか?」(ひなママさん・40歳・静岡県・パート)

 いつも温かじゃないです、ときに殺伐としてますよ(笑)。鬼の形相で怒りますし。怒るとおっかないですよ、私。でも必ず「おやすみ」「おはよう」の挨拶はします。 ケンカしてても、怒りながら「おやすみっ!」と叫びます。あとはごはんかな。どんなにケンカしててもごはんは一緒に食べますから。

 

本誌未公開Q&A
 「夫と意見があわずに喧嘩することが多いです。子育ての間に、夫婦の仲をうまくやっていく方法はありますか?」(ティファニーさん・50歳・神奈川県・主婦・息子 14歳)

 「夫の、子供への叱り方など気になることがたくさんあります。子育てについて考え方が違うことはわかりますが、みなさんはそのような悩みがないでしょうか」(くま子さん・愛知県・34歳・主婦・息子1歳)

 ありますね。旦那さんがあまりにも子供を野放しで「え、それで大丈夫?」と不安になったこともあります。娘が反抗期のときは、よく夫婦ゲンカになりました。反抗期、娘はお父さんには甘えた猫なで声で話すくせに私には「あ゛?」みたいな返事でその使い分けにも頭にきたものでした。

「母さんだって人間なんだから、傷つくんだからね」と泣いてる私に、夫は「そういう時期だからしょうがない」と冷静。「自分の身に降りかかってないから、そんなこと言えるんだよー!」と。もう、この人に言っても分かち合えないと思って、女友達に聞いてもらいました。友達が何かしら解決方法を教えてくれることが多いです。

もともと夫は温厚で、全然敵がいない人なんです。私が愚痴を言っても、人のよ過ぎる返事しか返ってこない。だから家庭内で発散できないときは、友達ですね。気分がすっきりするような毒舌を吐いてくれる友達とは「口が悪くてほんとにありがとう、一生仲良くしようね」って同盟を組んでます(笑)。

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LEE編集部 LEE Editors

1983年の創刊以来、「心地よいおしゃれと暮らし」を提案してきたLEE。
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